夜10時後に業務指示したら不利益
事務所を消灯し“クイック退社”促す
まだ外国の話と思っている人が多い
金融会社に勤めるキムさんのスマートフォンには、退社後もカカオトークのお知らせメッセージがひっきりなしに届く。本部長と部長が作ったメッセンジャーグループのチャットルームからだ。本部長が息をつく間もなく業務メッセージを上げてくると、その度に「了解しました」といった数十人の返事がすだれのように続く。しばらくすると部長とチームメンバーが集まるチャットルームには、さらに詳しい業務指示が出されている。キムさんは「業務の指示がなくても上司があげたメッセージを確認し、返事をしなければならないのが負担だ」と話した。
昼夜を問わず届く上司のメッセンジャーは夜勤を強いることになり、仕事はスマートフォンをはじめとするデジタル機器回線に乗って自宅や私的な約束場所にも伝達される。メッセンジャーを通じた勤務時間外の業務指示が“社会問題”になると、最近、「退社後に文字メールやカカオトークで業務指示を出してはならない」という内容を盛り込んだ労働基準法改正案が国会で発議された。企業も人件費削減と社員福祉のため、部署長に退社後に不要な業務指示を出さないようクギを刺し、オフィスの照明を消す苦肉の策に乗り出している。
“延長勤務との戦争”を続ける企業の中で特に注目されるのは「LGU+」。同社のクォン・ヨンス副会長は先月、社員に「楽しい職場および健康な組織文化作り」の指針を下し、「夜10時以降と休日にスマートフォンのメッセンジャーでの業務指示禁止」を指示した。クォン副会長は「違反した部署の責任者は人事上の不利益がある」とまで訴えた。同社関係者は「クォン副会長は夜10時と言っているけど、その趣旨は、退社後にスマートフォンのメッセンジャーと関連したメールのやり取りをさせないことにある」と話した。
ロッテグループも1月から柔軟勤務制を導入し、人事担当者が「定時退社」を強調している。Aタイプ(午前8時~午後5時)、Bタイプ(午前9時~午後6時)、Cタイプ(午前10時~午後7時)に勤務体制を分けた後、それぞれの事務所の机に貼り出すようにした。ロッテグループの関係者は「ロッテフードなど系列会社では、制度導入初期に人事チームが退社時間に見回りをして定時退社を促した。今はチームリーダーが毎月社員の退社時間を記録して提出する」と話した。
退社時間になると無条件に社員を追い出す「シャットダウン(Shut down)」制度を運営する企業も多数ある。食品会社「オトゥギ」はかなり前から、予め延長勤務を申請した社員を除き、午後7時に事務所の照明をすべて消している。「SKC&C」も午後6時になると社内放送で音楽が流され退社を促す。夜8時過ぎになると事務所の照明がすべて自動的に消される。同社関係者は「仕事は勤務時間に集中し、退社後は仕事から完全に離れて休息を取るという文化が定着した。退社後のメッセンジャーに仕事の話をするケースはほとんどない」と話した。CJグループも毎週水曜日を「ファミリーデー」に決め、午後5時30分に事務所を消灯して社員の退社を促す。
しかし、延長勤務防止策にも死角地帯がある。ロッテショッピングは退社時間が過ぎて20分後、パソコンが自動的に消される「PCオフ制」を運営している。その後もパソコンを使うためには、延長勤務を申請しなければならないが、それに負担を感じる商社のためにコンピューターの時間設定を変えて働く場合もあるという。
しかし、こうした指針を設けている企業はまだ一部にすぎない。主要な大手企業は「業務時間内に日課を完了する定時退社を生活化せよ」という指針を随時下すものの、上司による業務時間外の指示を規制することは稀だ。ある大企業の課長は「会社は昼食時間を守れと何度も確認してくるけど、そのつもりなら退社時間だって確認できるはずだ」と話した。
韓国語原文入力:2016-06-23 20:24