14日に行われた内乱罪の初の刑事裁判の公判で、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領は自身の検事の経歴を誇示しつつ、検事はもちろん裁判所に対する注意もためらわなかった。裁判所による便宜の供与に便乗して司法府を無視する態度にまで及んでいる、との批判の声があがっている。
ソウル中央地裁刑事25部(チ・グィヨン裁判長)の審理ではじまった初公判で、尹前大統領の発言時間は93分に及んだ。79分の冒頭陳述以外にも、途中で口を挟み続けた結果だ。裁判長のチ・グィヨン部長判事は「検察側が発言に使った時間と同じ分だけ時間を与えられるので、(時間調節を)念頭に置いてほしい」とか「休廷後に発言してほしい」と述べたが、尹前大統領は「今、短く言う」と言って発言をやめなかった。
尹前大統領は「26年間、本当に多くの人を拘束し起訴した私としても、(検察の起訴状が)一体どんな内容なのか、何を主張しているのか、それがどんなロジック(論理)によって内乱罪になるというのか、とうてい分からなかった」と検察を戒めるような態度を取った。裁判長にも注意をおこなった。「有罪立証責任が検察にあるのは当然の話だが、それでも裁判はきちんとしなければならないのではないか」、「起訴状がこのように難解で、証拠もある程度まともなものを選んで投げかけてこそ認否が争える。こんなもので裁判になるのか。整理してほしい」といった具合だ。
尹前大統領の傍若無人な態度と地裁の消極的な訴訟指揮に対しては、批判の声があがっている。西江大学法学専門大学院のイム・ジボン教授は、「弾劾審判の信憑性をおとしめるために、(司法府を)根本から揺さぶろうとしている様子」だとし、「司法府を無視して裁判手続きで騒ぎを起こし、支持者に訴えるという政治的目的があると読み取れるが、裁判所の決定にむしろ悪影響を及ぼしうるだろう」と述べた。ノ・ヒボム弁護士は「刑事裁判でも被告人に80分、90分の時間を与えるなんて話にならない。いくら前職の大統領の裁判であることを考慮しても度を越している」とし、「法廷でも話にならない詭弁(きべん)を並べ立てているのに、地裁は振り回される姿を見せてはならない」と述べた。
裁判所が尹前大統領に特恵と疑われるほどの便宜を提供したことが、尹前大統領の高圧的態度につながったという解釈も示されている。裁判所は尹前大統領に地下駐車場を通した出入りを許すとともに、被告人席に座る尹錫悦前大統領の撮影を不許可とした。公判当日は、尹前大統領が弁護人に囲まれて被告人席の第2列に座るという、異例のかたちとなった。元判事でもあるハン・ドンス元最高検察庁監察部長は15日、ユーチューブチャンネル「キム・オジュンの謙遜はつらい ニュース工場」に出演し、「被告人を前列に座らせるのは態度を見るためだ。表情や動作などの非言語的陳述態度を見るもので、事実認定の一つの要素だ」として、「後列の見えないところに行ったということで、私なら『被告人は前列に来てください』と訴訟指揮しただろう」と語った。
裁判所は、このような特恵批判を意識したかのように、初公判で「報道機関の法廷撮影申請が遅れたため、被告人の意見を問う手続きの問題で棄却された」とし、「今後あらためて申請すれば、許可するかどうかを判断する」と述べた。法曹映像記者団は15日、21日の公判での撮影許可を求める申請書を裁判所に提出した。