セウォル号惨事から11年を迎え、全羅南道木浦(モクポ)新港のセウォル号保管場など、全国各地の追悼場所を訪れる人の行列が続いている。市民たちは犠牲者と惨事の教訓を忘れないことを心に誓っている。韓国社会が利潤を優先するあまり安全が後回しになる旧態から抜け出すことを切に願う。しかし、最近、慶尚南道一帯を焦土化させた大規模な山火事、ソウル都心の真ん中で発生したシンクホールのような事故で、市民たちは依然として不安を抱えている。
東亜大学緊急対応技術政策研究センターなどが最近実施したアンケート調査で、市民の10人のうち4人が韓国社会が大規模災害に脆弱だと認識していることが分かった。大規模災害や事故から「安全ではない」と回答した割合は44%で、「安全だ」(17.6%)という回答の2倍以上だった。安全だという回答は2021年43.1%から今年17.6%へと半分以上減少した。セウォル号惨事以降も、2022年10月の梨泰院(イテウォン)雑踏惨事で159人が亡くなり、昨年6月の京畿道華城(ファソン)のアリセル工場爆発惨事で移住労働者など23人が犠牲になった。年末には済州航空惨事で市民179人が命を失った。最近はソウルなど首都圏でシンクホール事故まで頻発している。このような大規模災害・事故が相次いでいるのに、安全だと感じる市民がどれほどいるだろうか。一様に安全より利潤を優先したことで発生した惨事だ。
3月下旬、慶尚道一帯に広がった大規模な山火事も「人災」によって被害がさらに大きくなった。共に民主党のソン・オクチュ議員によると、今回の慶尚北道地域の山火事に投入された鎮火ヘリコプターの数が、2022年の蔚珍(ウルチン)・三陟(サムチョク)の山火事当時に動員されたヘリコプターの数よりも少なかったという。慶尚北道の山火事の人命・山林被害は蔚珍・三陟の約3倍だ。以前に発生した山火事できちんと備えを整えていれば、被害を減らすことができたはずだ。ところが、山林庁が保有している消火ヘリ50機のうち、ロシア製のヘリなど10機は部品調達と整備問題で今回の山火事現場に出動できなかった。にもかかわらず、今年の山林庁ヘリ関連予算は昨年より削減された。安全を優先するなら、ありえないことだ。
今回の山火事は、春の農繁期を迎え農作業の準備の真っただ中だった農業関係者からすべてを奪った。1〜2年以内には被害の復旧が不可能なほどだ。住民たちは史上最悪の山火事で生活の基盤をすべて失った。政府は補正予算の規模を12兆ウォン(約1億2千万円)に増やし、災害・災難対応分野に3兆ウォン以上を投資するという。お金をつぎ込むことより重要なのは、市民の安全を重視する姿勢だ。