北朝鮮は、トランプ大統領が制裁の解除に乗り出せる名分を提供しなければならない。最近、米国は、来春に予定されていた韓米合同軍事演習「トクスリ」演習の猶予を決定した。朝米対話の意志を示す望ましい決定だ。ジョン・ボルトン大統領補佐官は「非核化に成果があれば、対北朝鮮経済制裁の解除を検討できる」と発言した。これは、完全な非核化が行われない限り、制裁を解除できないという従来の立場とは確かに異なるものだ。北朝鮮の追加的な非核化措置の決断を引き出すために、米国が先に柔軟性を示したという点で、意味が大きい。
朝鮮半島の非核化局面の展開に伴い、今秋、南北行事に出席するため、11年ぶりに数回北朝鮮を訪問する機会があった。久しぶりに北朝鮮関係者に会ったが、顔見知りの人もかなりいた。彼らは、相手の機先を制するため、高圧的な態度で体制宣伝に没頭していた過去に比べ、柔軟になっており、実用主義的な態度を示した。
統一部長官出身の朝鮮半島専門家という履歴のためか、行事に同行した北朝鮮関係者らは時折、現情勢に対する私の判断を聞きたがっていた。おかげで、彼らと様々なことについて話し合うことができた。その対話から、国連の対北朝鮮経済制裁の解除に対する彼らの熱望がにじみ出ていた。4月に北朝鮮の国家発展路線が「核・経済並進」から「経済発展総力集中」に切り替わってから、外部との経済協力がさらに切実になったようだった。そのため、自然に制裁解除のカギを握る朝米間の非核化対話に関心と質問が集中した。
彼らの質問の要点は、北朝鮮が先に非核化を進めた場合、「本当に米国が彼ら(北朝鮮)を生かしておくだろうか」ということだった。今年10月の平壌(ピョンヤン)訪問の時も、北朝鮮関係者が私に投げかけた最初の質問は、「我々がリビアのようにならないという保証があるか」だった。米国から体制保証の約束を取り付け、核兵器を放棄したリビアのカダフィ政権が、市民軍との内戦過程で米国が主導するNATOの攻撃を受け、没落したことに関する質問だった。米国がカダフィ大佐の没落に関与したことが、少なくとも北朝鮮にとっては「合意による核放棄の危険性」を知らせる赤信号になったのだ。実際、北朝鮮はカダフィ大佐の死亡(2011年10月)直後の2012年4月、憲法に核保有を明記した。私は、北朝鮮が非核化した場合、いかなる場合であれ、韓国が米国の対北朝鮮攻撃を必死で阻止し、中国も座視しないはずであり、北朝鮮とリビアの状況は根本的に異なると力説したが、彼らが私の話をどれほど信頼したかは自信がない。
このような脈絡からすると、北朝鮮が非核化と朝米間の信頼形成の連動を求めるのは合理的だ。すなわち、完全な非核化を制裁解除の前提として掲げる米国の主張よりも、「ギブ・アンド・テイク式の段階的同時行動」を通じた信頼構築が必要だという北朝鮮の主張の方が、より説得力がある。すでに核・長距離ミサイルの実験・発射を中止し、地下核試験場まで爆破した北朝鮮に対し、米国がすぐに相応の措置を取ると言ってもおかしくない状況だ。
しかし、非核化の膠着局面を突破するための解決策を問う北朝鮮関係者らに、私は、悔しくても北朝鮮がもう一度先に進展した措置を出すことで、米国の柔軟性を引き出さねばならないと答えた。世界唯一の超大国であり、覇権国家の米国が、同時行動を拒否する状況で、それを矯正するのは極めて難しく、北朝鮮の国益を増進させる道は先制的な折衷だけだと助言した。
朝米間の膠着局面の打開が切実な今、再び私の答えを振り返ってみる。トランプ大統領は、金正恩(キム・ジョンウン)委員長が「経済富国」という未来を選択するため、核兵器を放棄しようとしている事実を知っている。だからこそ彼は、金委員長の選択を鼓舞するためにも、できれば制裁を解除したいと思っている。しかし、北朝鮮に対する不信感が蔓延している米国の政界は、全くそのような気配がない。トランプ大統領も、新しい名分なしにこの状況を突破するのは難しい。
何をすべきなのか。北朝鮮は、トランプ大統領が制裁の解除に乗り出せる名分を提供しなければならない。最近、米国は、来春に予定されていた韓米合同軍事演習「トクスリ」演習の猶予を決定した。朝米対話の意志を示す望ましい決定だ。さらに、ジョン・ボルトン大統領補佐官は「非核化に成果があれば、対北経済制裁の解除を検討できる」と発言した。これは、確かに完全な非核化が行われない限り、制裁を解除できないという従来の立場と異なるもので、今年6月の朝米首脳会談直後、トランプ大統領が「非核化が20%に達すれば、不可逆的になる」と述べ、制裁解除の基準を示唆したのと同じ脈絡だ。北朝鮮の追加的な非核化措置の決断を引き出すために、米国がまず柔軟性を示したという点で、意味が大きい。
これからは、北朝鮮が動かなければならない。北朝鮮は、トランプ大統領が「金正恩委員長の非核化への意志が明確であり、北朝鮮の非核化は不可逆的に進んでいる」と主張し、米国政界の悲観論を克服して、対北朝鮮制裁の緩和に乗り出す名分を提供する必要がある。そのためにも、創意的な追加非核化措置が求められる。そして、その答えを模索するために仲裁者の役割を果たしてきた韓国政府とも、膝を突き合わせなければならない。