12年ぶりの大統領対北朝鮮特使が、対決の桎梏にはまった朝鮮半島の歴史を平和の道に戻す希望のプレゼントを作って持ち帰ってきた。特使団は、北朝鮮核状況の悪化で一寸先も予測しがたい朝鮮半島の危機状況を、南と北が協力して機会の局面に転換させる重大な成果を収めた。戦雲が漂う情勢により、興行さえ難しくみえた平昌冬季五輪を、むしろ朝鮮半島の平和実現の呼び水にした文在寅(ムン・ジェイン)大統領の意志と戦略に惜しみない拍手を送る。暗黒と希望の岐路で、平和と共栄の未来により関心を見せた金正恩(キム・ジョンウン)委員長の選択についても、評価が否定的になる理由はない。就任後、核問題を外交の1順位に据えて北朝鮮と荒々しい攻防を繰り広げてきたトランプ米大統領の特使団活動に対する高い評価は、今回の成果が情勢変化をもたらしうるという希望を持たせる。
対北朝鮮特使団の最大の成果は、朝米対話の条件の実現と4月末の南北首脳会談開催の合意であろう。まず特使団は、これまで軍事的衝突以外には出口が見えなかった北朝鮮核問題において、生産的な朝米対話を導く重要な手がかりを金正恩委員長から引き出した。金正恩委員長は、少なくとも4つの点で進展した立場を見せた。
1.北朝鮮に対する軍事的脅威が解消され体制の安全が保障されれば、核を保有する理由はないという条件付きの非核化の用意
2.非核化のための虚心坦懐な朝米対話の用意
3.対話中に追加の核実験とミサイル発射など戦略的挑発の中断
4.4月予定の韓米合同軍事演習に対する理解表示。
この程度の立場の変化なら、米国が北朝鮮との対話に応じない理由がないとみられる。条件付きの非核化の用意に拒否感を持つ人がいるかもしれないが、北朝鮮が核を放棄するならば、米国を中心とする国際社会もそれに相応する補償をしなければならないということは、昔も今も公理であるため、それは検討可能な内容だ。そして、金正恩が韓米合同軍事演習と関連して「例年レベルで進行することを理解する」と明らかにした点は、北朝鮮が朝米対話の最大のネックとして認識してきた障害物を自ら取り除いたものとして、彼らの対話の意志を示している。
誰も予測できなかった4月末の早期首脳会談開催合意も重大な成果だ。文大統領が北側の早期首脳会談の提案を受け入れたのは、今度の特使団が北朝鮮の核問題と南北関係の進展に向けて造成した一連の環境を早い時期に確実に定着させ、平和の局面を開拓していくという戦略的判断のためだろう。文大統領は普段から首脳会談実現のためには環境づくりが必要とし、性急に推進しないという考えを明らかにしてきた。一部ではこの点をあげ、4月の首脳会談について問題を指摘する場合もあろうが、すでに特使が作ってきた成果が3、4月中に朝米対話を実現させる可能性が高く、韓米合同軍事演習の波もたやすく越えるものと見て、文大統領の公言と矛盾する状況は発生しそうにない。
特に、板門店の南側区域である平和の家で首脳会談をするという点が目を引く。北朝鮮の指導者が韓国側区域の平和の家に来て首脳会談をするというのは、第1回、第2回目の首脳会談が平壌(ピョンヤン)で開催された点を考慮したという意味だ。そして、場所として板門店(パンムンジョム)を選択したのは、警護の問題や会談日程が差し迫っている点などを考慮した決定でもありうる。しかし、板門店での首脳会談の真の意味は、南北首脳が緊迫した情勢を打開するために、煩雑な形式をなげうって内容で談判するという意志を示したことにある。4月末、我々は南北の首脳が儀仗兵も、大袈裟な歓送行列もなしに、書類かばんだけ持って参謀たちを引き連れて平和の家で会い、懸案と民族の未来をめぐり真剣に膝を突き合わせて話し合う実務的な姿を見ることができそうだ。
文大統領が皆の予想を超えて早期首脳会談を受け入れたのは、会談の成果にある程度自信があるという意味だ。彼は対北朝鮮特使派遣を通じて、すでに環境づくりの土台を設けた。ここに金正恩との間接対話を通じて、彼と北朝鮮核問題をめぐり合理的な談判が可能だと判断したものとみられる。事実、これまで金正恩と会った外国首脳は誰もいない。金正恩は2011年12月に執権して以来、6年余りの間首脳会談も一度も開かなかった。事情がそうであるだけに、4月末の南北首脳会談の意味は非常に大きい。
一方、「南と北が軍事的緊張緩和と緊密な協議のために、首脳間ホットラインを設置し、第3回南北首脳会談前に初の通話を行うことにした点」も、南北関係の転換的変化の可能性を込めた重要な合意だ。この合意で、大統領府の文大統領の執務室と朝鮮労働党舎の金正恩委員長の執務室の間で直通電話が開設される。これは、もし南北の間に偶発的な衝突が発生した場合、首脳間の直接対話を通じて問題を解決することができ、必要ならば文大統領がトランプ大統領と通話した後、仲裁のために金委員長にすぐに電話できるという意味だ。ここで我々は、金委員長が追求する南北関係が、先代とは異なり、対決局面が終息した国際標準に準ずる正常な関係だという点を読み取ることができる。彼が南北間の軍事的緊張緩和に積極的な関心を持っているという意味だ。したがって、政府は首脳間ホットラインを積極的に活用し、現在の南北軍事的対決状態を南北間の善隣関係に変えていく必要がある。
それならば今後、北朝鮮核問題を進展させ南北首脳会談を実現する道で何を留意しなければならないのか。まず、南北首脳会談が4月末に開かれることを考慮して、遅くとも4月中旬までは朝米対話を実現させる必要がある。すでに米国が特使団を通じて北朝鮮の立場の変化を確認したため、対話に困難はないものと予想される。さらに、4月実施予定の韓米合同軍事演習に対して、金委員長が理解を表明したため、事実上3、4月の朝米対話の進行の障害が取り除かれた状況だ。しかし、朝米対話の再開にとどまってはならない。
朝米対話が実現すればすぐに、6カ国協議の再開を急がなければならない。朝米対話は核問題解決の核心軸だが、両者間の不信が大きすぎるため外部協力のない朝米対話は安定的に稼動されにくく、両者間の妥結の可能性も低い。さらに、合意しても履行が不透明だ。このため、周辺で持続的に両方を仲裁し、朝米対話を生産的に牽引するもっと大きな枠組みが必要だ。朝米対話を補完する6カ国協議の再開が必要だということだ。この過程で政府は、米国など周辺国との緊密な協力を通じて、北朝鮮核問題の進展と首脳会談実現に向けた肯定的な外部環境を造成しなければならない。これと関連して、過去6カ国協議で発揮した中国の仲裁者としての役割の回復を要請し、これを助ける必要がある。また、朝米対話に否定的な日本を説得し、肯定的な方向に牽引しなければならない。その一環として今回を機会に政府が日本政府に日朝関係の進展に向けた交渉を勧め、必要ならば日朝間交渉を仲裁しなければならない。
4月末の首脳会談の円滑な実現に向けた第一条件は朝米対話だ。だが、この他にも政府は早期首脳会談に対する一部の憂慮を解消するための国民向けの説明の努力も怠ってはならない。北側がある程度同意した韓米合同軍事演習に対しても、米国と協議して同演習を延期したり縮小することができれば、首脳会談で文大統領の金正恩説得はそれだけ力を持つようになるだろう。
朝鮮半島の平和の局面をしっかり固めていくという文大統領の意志からみて、4月末の首脳会談で彼は南北関係と北朝鮮核問題の進展の一大転機を用意しようとするだろう。特に、南北関係と北朝鮮核問題の進展の好循環構造を作るために、国連が対北朝鮮制裁を再検討しなければならないレベルの重大な合意を引き出そうとするものとみられる。そうしてこそ平和が到来し、南北共同繁栄を目指す朝鮮半島の新経済地図の時代を本格的に開いていけるからだ。しかし、4月末の南北首脳会談が、果たしてこのような画期的な成果を得るかどうかは誰も断言はできない。それでも政府は政府として徹底的に首脳会談を準備し、専門家らは知恵を集めて政府に提案し、市民が応援すれば不可能なことはないと考える。結局、政府と国民が力を集めるならば朝鮮半島で葛藤の歴史を終わらせることができる絶好の機会が、今、私たちの前に迫っているのだ。