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[寄稿]非核化プロセス8カ月、北朝鮮も利益を得た

登録:2018-11-11 21:49 修正:2018-11-13 11:48
6月12日、朝米首脳会談を開始する前に、北朝鮮の金正恩国務委員長(左)とドナルド・トランプ米大統領が歓談しながら笑っている/聯合ニュース

 今回は北朝鮮がさらに大胆な柔軟性を見せる必要があると見る。世界の超強大国である米国は、最近通商問題で見せているように「自分の名分が明確ならば」対外関係で国益貫徹のためにしばしば非合理的な主張も押しつける。その場合、強大国でさえも米国と折衷点を求めて妥協を試みる。それが冷厳な国際力学の中で、各国が国益を増進していく現実的な道だ。

 平昌(ピョンチャン)五輪を契機に、朝米が非核化の道程に出てから8カ月、朝鮮半島の安保環境はすでに桑田碧海というに値する。その変化を実感するには、私たちが昨年まで体験した4つの場面を頭の中に描いてみれば良い。朝鮮半島の危機を限りなく高めた北朝鮮発の核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)級長距離ミサイル試験発射、毎年何回も北朝鮮の強力な反発を伴って行われた大規模韓米連合軍事訓練、休戦ラインと北方境界線(NLL)での一触即発の南北間対立局面。2018年、これらの場面はただの一度も再演されなかった。そして、永久削除作業に突入している。確信したことだが、私たちが非核化プロセスを成功裏に終えれば、平和と経済的共同繁栄が約束された朝鮮半島をむかえることになるだろう。

 こうした劇的な変化にもかかわらず、非核化をめぐる朝米間交渉の膠着が長引くと、すぐにあちこちで懐疑論が頭をすでにもたげている。だが、懐疑論が勢力を伸ばすには短い非核化プロセスで、米国も北朝鮮もすでにかなり利を得ている。

 米国の場合、官民で懐疑論に土台を置いてトランプ大統領の北朝鮮核アプローチを非難しているが、米国が今のように北朝鮮の核問題で具体的な成果を見たことは事実上なかった。トランプ以前のどの米国大統領も、北朝鮮の核実験とミサイル発射実験を中断させることはできなかった。しかし今、米国は北朝鮮に一銭のドルも支払わずに、これを勝ち取ったし、豊渓里(プンゲリ)地下核実験場の廃棄も実現した。1998年、北朝鮮の金倉里(クムチャンリ)にあった「核施設の疑いがあるトンネル」一つを見るために、小麦粉50万トンを北朝鮮に提供した米国だ。

 北朝鮮も非核化プロセスで米国の主張する“先核放棄”の立場に強く反発し不満を示しているものの、実際、相当なものを得た。何よりも、韓米連合軍事訓練の中断で経済発展に総力を挙げる安保的、社会的基盤を用意した。我々にとって韓米連合軍事訓練は単純に防御訓練だが、北朝鮮にとっては北侵略のための訓練と認識している。したがって、この訓練が始まれば北朝鮮はこれに対応して戦争対備体系に突入し、社会全体が動員される。こうした状況で経済に専念することは不可能だ。北朝鮮は今年4月から国家発展総路線を「経済建設総力集中」と設定し、「その実現のために朝鮮半島とその周辺の平和的環境が必要だ」という点を公開的に明らかにした。北朝鮮自らが、核・ミサイル挑発を中断した状況で、この平和的環境のために韓米に願ったのは韓米連合軍事訓練の中断だった。

 金正恩(キム・ジョンウン)委員長は最近8カ月間の非核化プロセスで、韓国、米国、中国などの指導者と頻繁に首脳会談を行い、対外的に自身と北朝鮮のイメージを向上させ、対内的には外交力量を備えた完成された国家指導者像を構築した。特に、朝米首脳会談を通じて住民たちを「百年宿敵」である米国の恐怖から解放し、経済制裁の解除に対する希望を吹き込んだ。

 このように非核化プロセスは、朝鮮半島の安保環境を劇的に改善し、出だしから米国と北朝鮮の両方に相当な利益を与えている。これは、米国と北朝鮮が非核化に向けて前進し続けなければならない明らかなインセンティブを有しているという意味だ。しかし、朝米双方は現在の非核化手順など方法論をめぐってなかなか意見の食い違いを狭められずにいる。

 今回は北朝鮮がさらに大胆な柔軟性を見せる必要があると考える。現在、朝米両側の主張を純粋に論理だけで評価すれば、極限の不信で綴られた既存の朝米関係を考慮する時、「信頼造成を先行させて」朝米共同声明の条項を均衡的、同時・段階的に履行していこうという北朝鮮の主張が合理的だ。「北朝鮮の非核化後に制裁解除」を主張する米国の立場はあまりに一方的だ。

イ・ジョンソク元統一部長官・世宗研究所首席研究委員//ハンギョレ新聞社

 しかし、世界の超強大国である米国は、最近通商問題で見せているように「自分の名分が明確ならば」対外関係で国益貫徹のためにしばしば非合理的な主張も押しつける。その場合、強大国でさえも米国との折衷点を求めて妥協を試みる。それが、冷厳な国際力学の中で各国が国益を増進していく現実的な道だ。さらに非核化プロセスで現れる米国の一方主義は、相当部分「歴史の中の朝米関係で」米国が経験して積み重ねた「北朝鮮不信」に起因している。北朝鮮が自ら招来した側面があるということだ。

 結局、北朝鮮は米国の柔軟性を引き出すために、さらに進展した追加提案を出す必要がある。そうした譲歩措置は、米国の北朝鮮に対する信頼を作り、その後の非核化プロセスで同時履行と均衡的な朝米関係形成はもちろん、非核化が開けておく北朝鮮の新たな未来にもきわめて肯定的な影響を及ぼすだろう。

イ・ジョンソク元統一部長官・世宗研究所首席研究委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/869794.html韓国語原文入力:2018-11-11 19:05
訳J.S

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