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防弾少年団のMVでセウォル号惨事知ったイタリアARMY「連帯の思い届けたい」

登録:2020-04-16 09:45 修正:2020-04-17 01:19
プルビレンティさん、防弾少年団の「春の日」分析映像を作り 
セウォル号の隠喩と社会的影響を説明して人気を集める 
 
韓国BTSのイベントに招待され、遺族にも会う 
「痛みを抱いて安全な世界のために闘っている方々」
昨年9月、安山市の檀園高校4・16記憶教室などでセウォル号の遺族と会ったイタリアARMYのアンジェラ・プルビレンティさん=アンジェラ・プルビレンティさん提供//ハンギョレ新聞社

 「会いたい」という歌詞と共に歌が始まると、画面には海辺に座っているジミンの後ろ姿が映る。彼は持ち主のいないスニーカーを両手の上に乗せ、静かに海を見つめる。続いて現れるメリーゴーランドには「あなたは決して一人ではない」(You Never Walk Alone)という文字が書かれており、誰も乗らないまま黄色いリボンだけが風に翻る。画面はしばし暗くなり、山のように積みあげられた洋服の上に座ったSugaが出てラップを始める。「君は去ったけれど一日も君を忘れたことはなかったよ、僕は」

 2017年2月に公開された防弾少年団(BTS)の「春の日」(Spring Day)のミュージックビデオは、セウォル号惨事を連想させるシーンで話題になった。韓国の「ARMY」(BTSファンクラブ)はミュージックビデオに込められたセウォル号への追悼メッセージを分析し、映像制作に乗り出し、これを通じて多くの国外のARMYたちがセウォル号惨事とは何かを知った。イタリアのローマに住むアンジェラ・プルビレンティさん(31)もその一人だ。彼女は惨事を知ることにとどまらず、自らイタリア語と英語の「春の日」ミュージックビデオの分析映像を作り、韓国に来てセウォル号遺族に直接会った。セウォル号惨事6周忌を2日後に控えた14日、テレビ電話で「ローマの平凡な会社員のARMY」というプルビレンティさんと話を交わした。

 韓国の政治状況について全く知らなかったプルビレンティさんに、「春の日」のミュージックビデオを通じて知ったセウォル号惨事は大きなショックを与えた。彼女が見たセウォル号惨事は「強者を護るために弱者を犠牲にした悲劇」だった。特に「じっとしていなさい」という船長の指示により、多くの生徒たちが犠牲になったという事実に心を痛めた。「政府と海運業界、マスコミの腐敗と怠慢が悲劇を招いたと思います。これは韓国だけに起こり得ることではないと感じました」

 より多くのARMYがこれについて知るべきだと考えたのもそのためだ。そこでプルビレンティさんは分析映像を作り、全世界にセウォル号惨事を伝える活動に参加しようと決心した。外信記事と韓国の探査報道の映像を一つ一つ探して読み、英語翻訳が提供されていない記事や映像は、再びインターネットで類似資料を検索して理解する過程を繰り返した。それまで映像を作ったり編集したりした経験がなく、ゆっくりと作っていくしかなかった。それからちょうど2カ月近く経った2017年5月1日、彼女は「あなたが『春の日』についてまだ知らないこと」というタイトルの分析映像を作り上げた。映像には「春の日」のミュージックビデオの装置がどのようにセウォル号の惨事を隠喩しているのか、そして惨事が韓国社会にどのような影響を及ぼしたのかについての説明が収録されている。この映像は2万3千回以上の照会数を記録し、400余りのコメントが付けられた。

 人々の反応は彼女の期待をはるかに超えた。「真実を世界に知らせてくれてありがとう」というコメントから「より多くの人たちがこの映像を見るべき」「映像を見て涙が止まらなかった」というコメントまで、英語と韓国語、イタリア語で書かれたさまざまな温かいコメントがあふれた。彼女の映像は次第に口コミで広がり、昨年夏に韓国で開かれた「BTSインサイトフォーラム」の発表者として招待され、韓国を訪問するに至った。

 奇跡のようなことはここで終わらなかった。セウォル号遺族と直接顔を合わせて話し合う機会が訪れたのだ。プルビレンティさんが韓国を訪れて発表の準備をしていたところ、主催側の文化マーケティンググループ「マッシュルーム」から遺族との面会をアレンジできるという話を聞き、「全身が麻痺するような気持ちがした」と振り返った。「計り知れない苦痛を経験した彼らにどんな話を切り出したらいいか、もしかすると文化的な違いによって私の言葉が予期せぬ傷になるのではないか、本当に心配でした」

昨年9月、安山市の檀園高校4・16記憶教室などでセウォル号の遺族と会ったイタリアARMYのアンジェラ・プルビレンティさん=アンジェラ・プルビレンティさん提供//ハンギョレ新聞社
昨年9月、安山市の檀園高校4・16記憶教室などでセウォル号の遺族と会ったイタリアARMYのアンジェラ・プルビレンティさん=アンジェラ・プルビレンティさん提供//ハンギョレ新聞社

 そのように昨年9月2日、プルビレンティさんは遺族たちに初めて会い、一緒に安山市(アンサンシ)の檀園高校を訪れた。亡くなった子どもたちが生前勉強したり遊んだりしていた場所を一緒に歩き、遺族たちは彼女に子どもたちの写真を見せ、彼らの奮闘に関する話も聞かせてくれた。プルビレンティさんは終始、家族の一人と手を取り合って、慣れない言葉に耳を傾けた。「遺族の方々は本当に温かく、強靭な方々でした。痛みを抱いたまま、より幸せで安全な世界のために闘っていました」。遺族は彼女にまず「映像が見たい」と話しかけ、映像を見た後には「真実を広く伝えてくれてありがとう」という挨拶を伝えた。プルビレンティさんはこの時を「人生で最も恥ずかしく、感動的だった瞬間」と回想した。

 彼女は「遺族の方々と会ってから、彼らが望む世界を支持するために力になりたいという思いがさらに強くなった」と話す。プルビレンティさんと他の国外のARMYが惨事を伝えるカードニュースを作り、全世界のARMYの慈善団体である「One in an ARMY」とともに募金プロジェクトも議論するなど、今回の6周忌にもセウォル号惨事の追悼のために積極的に取り組んでいるのもそのような背景からだ。

 「BTSの音楽には『自分と他の人たちを愛そう』というメッセージが込められています。より良い世界を夢見る多くのARMYがセウォル号の悲劇を理解し、韓国社会に支持と連帯のメッセージを送ってくれると信じています」

パク・ユンギョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/937297.html韓国語原文入力:2020-04-16 07:23
訳C.M

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