韓国政府が14日、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に仮署名し、韓日両国の全面的な軍事情報協力が目の前に迫ってきた。日本との軍事情報交流は韓日軍事協力の重大な転換点になるものと見られる。政府は昨年5月、4年ぶりに韓日国防長官会談を開いた後、韓日軍事協力の幅を徐々に拡大してきた。今回の協定への仮署名は、このような流れに起爆剤になると予想される。これから韓日物品役務相互提供協定(ACSA)の締結、さらに軍事作戦の全面協力にまでつながる手順を踏むのではないかという懸念交じりの見通しも示されている。
■推進過程も疑問だらけ…世論は反対が圧倒的
ハン・ミング国防部長官は韓日軍事情報包括保護協定の推進と関連し「10月27日に召集された大統領府国家安全保障会議(NSC)で協議して決定したもの」と述べてきた。しかし、ハン長官はその日の会議に出ておらず、ファン・インム国防部次官を代理出席させたことが確認された。ハン長官は、これに対して10月28日の国会国防委員会で「同じ時刻に首相が主宰する国務委員会があったため、出席できなかった」と釈明した。同日の会議には国防部長官だけでなく、外交通商部長官も出席しなかったということだ。
韓日軍事情報包括保護協定の問題は2012年6月、韓日間の最終署名の1時間前に世論の反発により急遽(署名が)取り消されたほど、敏感な事案である。このような重要事案が、関連省庁閣僚が誰も出席しなかった会議で決定されたわけだ。これに対して共に民主党のイ・チョルヒ議員は「大統領府がすべてを決定しておいて、安全保障会議を形式的に開いてきたから、次官を代理出席させたのではないか」として、大統領府が黒幕であると主張した。野党3党は協定の仮署名を強行すれば、ハン・ミング長官の解任手続きを踏む方針を明らかにし、強く反発している。
ハン長官はこれまで「国民のコンセンサスなどまず条件を整えるべきだ」と再三強調してきた。しかし、世論は依然として協定の推進に否定的である。世論調査機関のリアルメーターが10月3日に行った世論調査の結果によると、協定に対する反対意見がが47.9%で、賛成意見(15.8%)を大きく上回った。さらに、国防部はこれまで、国民の理解を得るためにいかなる努力もしたことがなく、公聴会すら一度も開かなかった。ハン長官は14日の記者懇談会で、これと関連して「もっと努力する」と述べただけで、口をつぐんだ。
韓日軍事情報包括保護協定を推進した時期はさらに大きな疑念を抱かせる。国防部が日本と協定について協議すると発表した10月27日は、チェ・スンシル氏が大統領府の内部資料をあらかじめ受け取っていたとする疑惑が持ち上がり、「朴槿恵(パク・クネ)・チェ・スンシル事態」が本格化してから3日後のことだ。(大統領府の)政治的意図に疑問符を付けざるを得ない絶妙なタイミングである。韓日軍事情報包括保護協定はこれからは閣議を経て、朴槿恵大統領の裁可を受けなければならない。国民から退陣を迫られている朴大統領が、反対世論が強い敏感な外交・安保事案を決定することになる。国民から不信任された政権が多数の国民の意思に反する政策決定をするもので、正当性に疑念を持たれている。
日本も韓国政府の突然の韓日軍事情報包括保護協定の推進に意外という反応を示している。この協定を強く支持する「読売新聞」でさえ12日付で「韓国では朴槿恵大統領の友人女性による国政介入疑惑で与野党の対立が激化しており(韓国の協定強行は)激しい反発を招く可能性がある」と報じた。
■自衛隊の朝鮮半島への影響力を強化する足掛かり
ハン・ミング長官は14日の記者懇談会で、軍事的に日本の情報が対北朝鮮抑止に役立つと協定を擁護した。しかし、対北朝鮮抑止力だけを見て外交・安保政策を推進する「近視眼的」政策は危険だという指摘が多い。北東アジア情勢は北朝鮮の脅威以外にも米中日の間に軍事的対立と軋轢が深まるなど、不透明性が高まっている。中国が軍事的に浮上しており、これに対抗して日本は集団自衛権の容認と平和憲法改正の推進で軍事大国の道に進んでいる。これに加えて米国は北東アジアの覇権を維持しようと韓米日3角安全保障協力を構想しながら、韓日軍事協力を強要している。
韓日軍事協力の強化は、中国対米日間の対立構図に韓国が自らを縛り付ける自縄自縛であるという懸念の声も高まっている。朝鮮半島に対する影響力の拡大を図る自衛隊に翼をつけてあげる出発点になるという批判もある。
日本は実際に、今回の協定を韓日安保協力の終着点ではなく始発点として受け止める雰囲気だ。菅義偉・官房長官は14日の定例記者会見で「日本は、協定の早期締結を含め安全保障について日韓協力をさらに進めていきたい」と明らかにした。日本政府はすでに3月に施行された安保関連法を通じてこれと関連した法的整備を終えた。米国だけに許されていた後方支援も「米国など他国軍」にまで拡張した。朝鮮半島に対する軍事的影響力を念頭に置いた布石といえる。