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勝てないウクライナ戦争、止める勇気が必要だ【寄稿】

登録:2025-12-03 07:56 修正:2025-12-03 09:34
キム・ジョンソプ|世宗研究所首席研究委員
30日、ウクライナ・ドネツク州のある村で市民がロシア軍のドローンとミサイルによる攻撃で破壊された住宅の前を歩いている/ロイター・聯合ニュース

 ウクライナ戦争終戦をめぐる議論が再加速している。米国が主導して用意した「28項目の和平案」がその出発点だ。この案は、ドネツク地域の放棄やウクライナのNATO加盟排除など、多くの点でロシア寄りの立場だと評されている。これに対し、ウクライナと欧州はただちに反発し、これを緩和した修正案を用意し、ロシアにボールを投げ返した。はたして今回は終戦の議論で成果を出せるだろうか。これまで以上に交渉の進展に期待が高まっているが、状況は依然として楽観しがたい。何より、戦線で主導権を握るロシアが、従来の戦争目標から後退する可能性が低いためだ。このため、今回も2022年のイスタンブール会談や2025年のリヤド会談と似たパターン(欧州の強硬姿勢を背景にウクライナが粘る)が繰り返される可能性が高いとみられる。しかし、冷静に考えれば、欧州とウクライナはいまこそ出口を模索すべきときだ。ウクライナ軍は戦線全体で押されており、ロシアの占領地は拡大している。戦況が悪化するほど、ウクライナが直面する終戦条件はさらに不利にならざるを得ない。

 それでも、ウクライナが抗戦に固執するのには、いくつかの理由がある。一つ目は、領土放棄、非軍事化、NATO加盟排除など、ロシアが掲げる終戦条件があまりにも苛酷なためだ。このような軍事的・外交的主権への深刻な侵害を受け入れるということは、政治的自殺行為に近い。これまで抗戦を叫んできたウクライナと欧州のエリート層にとっては、国民を説得する最低限の正当化の論理を見出さなければならない状況にある。二つ目は、たとえ終戦が実現したとしても、これは一時的な休戦にすぎず、ロシアはウクライナ全体をロシアの衛星国家にしようとするのではないかという疑問が存在する。いま戦わなければ、後にさらに暗い未来に直面するかもしれないという恐れが働いているのだ。西側の弱腰な対応がロシアの拡大の野望をさらに刺激することになるという、欧州の懸念も同様の流れにある。三つ目は、絶望的な状況のもとにあっても、ウクライナはいつか反転のきっかけが生じるという期待を捨てていない。ロシア経済がまもなく限界に直面するという見通しや、米国によるトマホーク・ミサイルの提供などにより、戦況を覆せるという希望がその例だ。

 しかし、希望と恐れは戦略にはなりえない。現在の西側の思考は矛盾している。ロシアを一方では過大評価し、他方では過小評価しているからだ。3年半がたってもウクライナの領土の5分の1程度しか占領できずに苦戦しているロシアが、NATOとの戦争も辞さず欧州の地図を塗り替える可能性があるという極端な悪夢は、ロシアの力量と意図を過大評価するものだ。旧ソ連の侵攻と占領を経験した北欧と東欧のトラウマが客観的な状況評価を妨げているのだ。一方、制裁と圧力を続ければロシア経済は持ちこたえられず、いずれは退くことになるという期待は、西側中心的な希望的観測にすぎない。

 特に欧州の「代理戦争」(proxy war)戦略が問題だ。表向きはウクライナ支援を掲げるが、実際には欧州の再武装のための時間稼ぎの戦略が隠されている。同時に、ウクライナを前面に出し、ロシアの力を消耗させようとする計算も背後にある。しかし、このような戦略は欧州にも大きな傷と後遺症を残すだろう。戦争の長期化は、欧州が直面している政治的不安定や極右勢力の台頭、経済的停滞をさらに悪化させるためだ。

 もちろん、ロシアも勝者とは言えない。有利な条件で戦争を終わらせるとしても、ロシアの戦略的損失は戦術的利点とは比べものにならない。戦争を始めた理由だった安全保障的懸念はむしろ強まり、欧州と断絶したままユーラシアの東端で活路を模索する状況に追い込まれているためだ。

 それでも究極的には決断を下すべき側はウクライナだ。戦争の苦痛が屈辱的な妥協を強いる水準に達するのであれば、次悪を選択すべき側は弱者側だからだ。もちろん、ロシアも白旗を強要して戦争を長期化することは、戦略的にも倫理的にも望ましくない。

 より根本的には、戦争の性格と責任に対する見解の違いが問題だ。西側はロシアの侵攻を抑止の失敗とみなす一方、ロシアは冷戦終結後の汎ヨーロッパ安全保障秩序構築を無視した西側の傲慢さに戦争の責任を問うている。短期的な休戦が可能だったとしても、このような歴史認識の隔たりを埋めることができなければ、欧州の平和は決して安定したものにはならないだろう。

//ハンギョレ新聞社

キム・ジョンソプ|世宗研究所首席研究委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1232301.html韓国語原文入力:2025-12-02 08:13
訳M.S

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