政府が整理解雇の手続きを多少厳しくする方向の勤労基準法改正を推進しても、整理解雇要件である「緊迫した経営上の必要」という条項に手をつけない限り政労使の法律的紛争は続く見込みだ。ひとまず労働界は昨年末に企画財政部が出した「整理解雇要件緩和」方針にある程度ブレーキがかかった状況に安堵している。 しかしその一方で、企業が強く要求しているいわゆる「業務不振者(低成果者)」等に対する解雇(一般解雇)要件の緩和は政府が強行するだろうと見て緊張を緩めていない。
使用者が労働者の意向に反して解雇できるのは整理、懲戒、一般解雇の三種だ。このうち1997年勤労基準法改正で導入された整理解雇は、緊迫した経営上の必要という要件さえ充足すれば可能だ。 双龍(サンヨン)自動車事件での大法院(最高裁)判決などに見られるように、裁判所は経営陣の判断を幅広く受け入れ、その許容範囲を拡げて解釈してきた。 さらに大法院は「企業運営に必要な人材規模がどの程度なのかなどは、特別な事情がないかぎり経営者の判断を尊重しなければならない」として「将来予想される経営上の危機」も整理解雇の許容範囲と見ている。
金属労組法律院のキム・テウク弁護士は「裁判所が使用者の解雇回避努力を過度に幅広く解釈していて、法に具体的な手続きを明示することには概して肯定的」としながらも「(整理解雇要件である)緊迫した経営上の必要が認められる場合に解雇回避努力が不備だったという理由で整理解雇を無効にするケースは非常に珍しい」と話した。 整理解雇の乱発を阻むためには要件自体を強化しなければならないという指摘だ。
これと関連してキム・ソンテ(セヌリ党)、チョン・チョンレ、ホン・ヨンピョ(新政治民主連合)、シム・サンジョン(正義党)など与野党の国会議員が「緊迫した経営上の必要」の前に「経営悪化で事業を継続できない」(キム・ソンテ議員案)といった文言を追加して、事実上倒産直前でなければ整理解雇ができないよう制限する法改正案が国会に提出されている。 しかし国会環境労働委員会で足止めをくっている状況だ。 しかも雇用労働部高位関係者は15日「そんな形で規制したら誰も正社員を使おうと思わなくなる」と否定的反応を示した。
雇用部が今年上半期中に出すことにした「一般解雇要件ガイドライン」も容易な解雇のための方便という指摘がある。 集団的になされる整理解雇とは異なり、懲戒解雇と一般解雇は大概個別の労働者を対象に行われる。 懲戒解雇は労働者が横領や長期間無断欠勤など、就業規則や団体協約の懲戒理由に該当する問題を起こした時に可能だ。
労働者の帰責事由が比較的明確になっている懲戒解雇とは異なり、業務不振などを理由になされる一般解雇は使用者が正当な理由を立証しなければならず容易ではない。 現行勤労基準法が正当な理由なしには使用者が労働者を解雇できないよう規定しているためだ。 政府が突然「一般解雇要件ガイドライン」の作成に乗り出したことに労働界が疑問を抱く理由だ。
チョン・ムンジュ韓国労総政策本部長は「政府が最近2カ月ほど議論になった集団解雇問題はあきらめて、その代わりに一般解雇要件の緩和を推進していると見る」とし、「就業規則不利益変更要件の緩和と低成果者解雇要件の緩和は、労使政委員会で必ず阻止する方針」と話した。