尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が罷免後に行われた初の刑事裁判で、内乱首謀容疑を全面的に否認した。尹前大統領は冒頭陳述で実に79分間にわたって発言し、12・3非常戒厳の宣布は「平和的な対国民メッセージ戒厳」だったと主張した。
ソウル中央地裁刑事合議25部(チ・グィヨン裁判長)の審理で14日午前10時から行われた公判で尹前大統領は、検察による起訴事実の朗読後、「すべての容疑を否認する」として、「(12・3非常戒厳は)平和的な対国民メッセージ戒厳であり、戒厳とクーデターは異なる」と主張した。検察は「被告人は違憲で違法な布告令により、憲法機関による権能の行使を不可能にするとともに、政党制度などの憲法と法律の機能の消滅を目的として非常戒厳を宣布した」と述べた。しかし尹前大統領は、共に民主党の本部と「世論調査コッ」への兵力投入▽政治家ら主要人物の逮捕▽情報司令部の動員などについて、まったく知らなかったと主張した。そして「(軍の司令官たちが)軍政のようなものが実施される状況だと考えたため、私と(キム・ヨンヒョン前)長官とのコミュニケーションにとどまらず、(軍が持っている)非常マニュアルにもとづいて措置を取ったのではないかと思う」と述べた。自分が指示もしていないのに過度に武力を行使したとして、軍の司令官たちに責任を転嫁する主張だ。尹前大統領は「26年間、本当に多くの人を拘束し、起訴してきた私としても、(検察の起訴状が)一体どんな内容なのか、何を主張しているのか、どんなロジック(論理)によって内乱罪になるというのか、とうてい分からない」とも述べた。
尹前大統領は容疑を全面否定したが、この日、証人として出廷した佐官級の指揮官は「国会議員を引きずり出せ」という指示があったと証言した。非常戒厳時に国会に出動した陸軍特殊戦司令部第1特戦大隊のキム・ヒョンギ大隊長は、「第1空輸特殊戦旅団のイ・サンヒョン前旅団長から国会議員を引きずり出せという指示を受けたか」と問われ、「はい」と答えた。また「(私が任務を与えていたら)特殊戦司令部はドアを壊して議員を引きずり出していただろう」とし、「正当な指示なのか認知できなかったため、任務を与えなかった」と語った。首都防衛司令部第1警備団のチョ・ソンヒョン団長も、首防司のイ・ジヌ前司令官から同じことを指示されたことを認めた。