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[寄稿]韓中国交正常化30周年の先の未来

登録:2021-09-06 06:22 修正:2021-10-18 08:24
李婷婷|北京大学教授

 中国と韓国は、国交正常化記念日の8月24日、元・現職の高官と専門家で構成された「中韓関係未来発展委員会」を発足した。両国の外相による合意事案を受け、来年の国交正常化30周年を迎え、今後の両国関係の発展のロードマップを用意するための協議体だ。米国の対中戦略の競争激化と民間における否定的な相互認識の広がりにより、難しい局面に置かれている中韓関係にとって、極めて時期適切かつ必要な試みだと評価される。

 未来への発展を図るのであれば、現在を正確に診断することから出発しなければならない。国交正常化後の中韓間の対立は、ほとんどが第3者の要因から始まった。THAAD(高高度ミサイル防衛体系)問題から続いている現在の難局も、米国の対中牽制と北朝鮮の核高度化によって始まったことだというのは周知の事実だ。これまで、中国は北朝鮮との伝統的な友好関係と韓国との戦略的協力パートナー関係を、韓国は「安米経中」(安保は米国、経済は中国と協力)と「戦略的あいまいさ」を通じて、最大限のバランスを探りながら飛躍的な関係発展を成し遂げてきた。今後も、二者択一という時代錯誤の方法論に回帰することよりも、新たな均衡点を模索していく方が、両国の共同利益に合致する。

 米国の対中戦略競争において、二分法による陣営論理と価値観の言説が多く引き合いに出されるのは事実だ。しかし、その競争の実体は、歴史的によく登場する先行走者による“蹴落とし”、すなわち、追手の発展速度を遅らせ自国との格差を広げようとする戦略の繰り返しに近い。問題は、冷戦時代とは違って現在の中米関係は深く絡みあっており、二者択一的な論理で規定するには説得力が落ちるという点だ。たとえ最先端技術分野で閉鎖的なサプライチェーンを構築し、中国牽制を試み続けたとしても、米国でさえ中国経済とのデカップリング(脱同調化)は現実的には不可能だという認識が、大方の意見になっている。

 バイデン政権が、中米関係を新冷戦ではなく戦略競争だと明確に再規定したことも、発足してから7カ月が過ぎても対中貿易政策を出さないでいることも、そのような中米関係の複合性に対する傍証だ。バイデン政権が主唱する「より良い再建」の議題も、中国との断絶よりも役割の再分担を通じて推進することの方がもっと効果的でありうる。実際、今年上半期の中米間の貿易の規模は、前年同期比で45.7%も増加し、米国がオーストラリアと中国間の貿易紛争の最大の受益者だという指摘も出ている。

 韓国は「戦略的あいまいさ」を維持し、国益の極大化と国際的地位の向上を追求している。欧州連合(EU)で強調されている「戦略的自主性」と同じ流れのアプローチだ。中国も中米間の率直な対話を追求し、気候変動への対応、新型コロナウイスルの防疫、核非拡散など双方が共に選ぶ協力分野から、協力のモメンタム(動力)を拡大しようと努力している。特に朝鮮半島については、バランスを取ったアプローチを維持し、朝米交渉再開のために関連国と緊密に連絡を取りあっている。米国の高官級関係者も、朝鮮半島非核化にあたり、中米協力の必要性を再三にわたり強調してきた。このように、中米関係と朝鮮半島情勢をめぐる関連国の複雑な新しい枠組み作りが激しく展開されている。二者択一的で単純な考え方では、今日の複合的な情勢変化に効果的に対応できない。

 急変する世界秩序に対応する柔軟性と、衝撃から回復できる復元力が何より重要だ。中国と韓国は、国交正常化以来、飛躍的な協力を通じて相互の成長からシナジー効果を新たに作りだし、今回の新型コロナウイルスのパンデミックの衝撃からも優れた回復力を示した。これは、国家の効果的な統治能力、企業の柔軟性と創意性、医療・通信などのインフラ環境の完備と弾力的な運営、知性と科学主義に対する尊重、そして共同体精神など、様々な要素の後押しがあってこそ可能な成果物だ。また、両国は、ファストトラック(迅速通路)通関の導入と地域防疫の協力を推進することでも、先導的な役割を果たした。今後も中国と韓国は、そのような底力を基に複合的な変化に能動的に対応し、両国関係の未来の発展の方向を模索していかなければならない。

//ハンギョレ新聞社

李婷婷|北京大学教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1010534.html韓国語原文入力:2021-09-06 02:33
訳M.S

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