韓国政府は8日、4400万人分の新型コロナウイルス感染症ワクチンを確保したと発表した。当初、集団免疫のために人口の60%が接種できる3000万人分の確保を目標としていたが、これより増えた。コロナ禍が1年近く続く中、数多くの人々が社会・経済的被害で苦しんできただけに、嬉しいニュースには違いない。
政府は来年2~3月からワクチンを国内に持ち込む予定だが、接種時期は具体的に決めていない。ワクチンはいずれも4段階の臨床試験のうち第3相までを完了したもので、安全性や効果などに対する懸念が完全には解消されていないため、国外での接種の動向、副作用の有無、国内のコロナ状況などをすべて考慮して接種時期を決める方針だ。もともとワクチンは、効能や副作用などを長期にわたって観察する第4相臨床試験まで終えた後に最終承認が下りるが、初のコロナ禍のため第3相試験を終えた段階で接種を始める。
8日にファイザーのワクチンを世界で初めて接種した英国を筆頭に、米国などのコロナによる被害が深刻な国から、早急に接種を開始するものと見られる。感染者数や死亡率が相対的に低い韓国は、これらの国々よりも事情はましな方だが、最近のコロナ拡散を見ると、余裕のある状況ではない。しかも、これまでの防疫の成功は、世界のどの国よりもマスクの着用や社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)などの防疫守則を徹底的に守ってきた国民の犠牲に大きく依存している。いつまでも日常を停止させ、経済的苦痛に耐えることを要求し続けることはできない。ワクチンの安全性が最優先なのは当然だが、接種時期をできる限り繰り上げることにも力を入れるべきだ。ワクチン接種に関しては、恐怖と不安を助長する「ワクチンの政治化」も警戒しなければならない。フランスでは根拠のない「ワクチン陰謀論」が広がり、ワクチンを打たないという世論が強い。そうなれば集団免疫の形成に失敗し、被害は手をつけられなくなる。
結局、ワクチン接種に関しては、国民の信頼を高めることが何より重要だ。政府はワクチンの導入や予防接種などの業務を専門とする「コロナ予防接種対応推進団」を新設することを明らかにした。韓国より先に接種を実施する国々の状況をきめ細かくモニタリングし、副作用への対応策を細部にわたってまとめるとともに、接種の順番も不要な摩擦が起きぬよう、公正に決めねばならない。ワクチンの保管や流通の過程における安全管理は言うまでもない。どれ一つ取っても侮ることのできない課題であるだけに、非常な覚悟で万全を期さなければならない。