韓国の与党「共に民主党」が推進する、内乱事件を専門に担当する「内乱専担裁判部」に対し、裁判所長らが5日、全国裁判所長会議を開き反対の立場を明らかにした。民主党の主導で法制司法委員会で議決された内乱専担裁判部法案をめぐり違憲性の議論があるのは事実だ。だが、国民が司法府を信頼できないのは、12・3内乱から1年が過ぎても一審判決が出ていないためだ。司法府がきちんとしていたなら、内乱専担裁判部の設置が進められることはなかっただろう。司法府は「司法府の独立」を掲げる前に、まず国民が司法府に対し高い不信感を抱く理由を省みなければならない。
8日に開かれた民主党議員総会でも、多くの議員が同法案に対して懸念を示したという。法司委で議決された通りに立法された場合、違憲訴訟として内乱裁判が中断される可能があるとの懸念があるためだ。このため、民主党は各界各層の意見をさらに聴収してから、最終結論を下す方針を決めた。
このような状況を見守る国民はもどかしいばかりだ。国民は今頃になれば内乱勢力を断罪し、平穏な気持ちで年末を過ごせると期待していた。だが、チ・グィヨン裁判長の荒唐無稽な行動で、厳重でなければならない内乱裁判が笑い物になり、裁判の長期化で「ユン・アゲイン」を叫ぶ過激な支持者たちの勢いが増している。野党第1党「国民の力」の指導部は、公に不法戒厳を擁護している。裁判所が尹錫悦(ユン・ソクヨル)に対する断罪を早期に終わらせていれば、状況がここまで悪化することはなかっただろう。
1996年の全斗煥(チョン・ドゥファン)、盧泰愚(ノ・テウ)軍事反乱に対する断罪は、一審から最高裁の確定判決まで13カ月しかかからなかった。当時、ユン・グァン最高裁長官は一審と二審ともに裁判経験が多い刑事首席部長ら(キム・ヨンイル、クォン・ソン裁判長)に任せ、迅速に裁判を進めるようにした。裁判が長引き政治的対立が深まることを防ぐための措置だった。今、チョ・ヒデ最高裁長官の司法府は、チ・グィヨン裁判長の裁判指揮を手をこまねいて眺めているだけだ。国民の不安は眼中にないようだ。裁判所長らは今になって「迅速で集中的な裁判のため、あらゆる支援を尽くす」と述べた。それとともに内乱専担裁判部の設置に反対する理由として「国民の司法部に対する信頼を損ねる」という理由を挙げた。内乱専担裁判部の設置によって司法府の信頼が損なわれるのではなく、司法府の信頼が損なわれたからこそ、内乱専担裁判部の設置が求められているのだ。裁判所長たちもおそらく分かっているだろう。司法府は国民の内乱専担裁判所の設置要求にありきたりの「司法府の独立」だけを叫ぶのではなく、むしろ積極的な代案を提示する姿を見せなければならない。