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韓国、清算1年ではなく「再建1年」【寄稿】

登録:2025-12-09 08:36 修正:2025-12-09 11:12
ソ・ボクキョン|ザ・可能研究所代表
12・3内乱外患清算と終息、社会大改革市民大行進が行われた今月3日夜、国会正門前で参加者たちがスローガンを叫びながらペンライトを振っている=ユン・ウンシク記者//ハンギョレ新聞社

 最近、昨年のあの心がざわついた冬の夜を思い浮かべる多くの人々の言葉から、興味深い事実を発見した。ある人は「内乱から1年」と言い、ある人は「革命から1年」と言っているということをだ。ああ、たまに「啓蒙令1周忌」と言っている人もいる。個人の言葉は個人の様々な考えが込められている。だが、集団が共有する言葉は別の力を持つ。「私の言葉の限界は私の世界の限界」だと述べたウィトゲンシュタインの言葉を借りれば、私たちが共有する言葉は私たちが集団的に認識する世界の限界を意味する。みなさんは2025年12月3日に2024年12月3日をどのような言葉で思い浮かべたのかが知りたいものだ。

 現行法の一つに「対日抗争期の強制動員被害調査および国外強制動員犠牲者などの支援に関する特別法」がある。この法律名は、集団が共有する言葉の力について考えることのできる良い例だ。もともとこの法律は、2004年に「日帝強占下の強制動員被害真相究明などに関する特別法」という名で世に出た。2004年の法では、1910年から1945年までの時期を「日帝強占期」という言葉で表現していたが、2010年の新法では、その時代は「対日抗争期」という別の名を得た。前者が客体の視線から時代とその時代を生きた人々を受動的に描写した言葉だとすれば、後者は主体の能動的視線が完全に込められた言葉だ。「日帝強占期」における主語は日帝軍国主義権力である一方、「対日抗争期」における主語は大韓民国の人々だ。

 今も私の年代の多くの人は、「対日抗争期」という単語より「日帝強占期」という単語を好んで使う。そう学んだし長い間それを使ってきたため、「日帝強占期」は馴染みがあるし、「対日抗争期」は馴染みがない。そのせいだろうか。私は同年代の人々と日帝軍国主義者の強制占領がどれほど不当なのかについてたびたび話し合ってきたが、その厳しく長かった時代に抵抗を放棄しなかった独立運動家たちの人生について深く話し合った記憶はあまりない。私は、同年代の人々にとっての馴染みの言葉が、抗争の歴史より強制占領の歴史に焦点を当てさせるという認識の限界を強いたことも、重要な原因ではなかったかと思う。私たちの共有する言葉は、自分の考えの限界を規定するからだ。

 改めて12月3日に戻ってみよう。このところ、様々な集まりやオンラインのコメントで「いったいいつまで内乱清算をやらなければならないのか」という、怒りのこもったもどかしさを訴える言葉を聞く。その言葉を発する人々のニュアンスは様々だ。「内乱清算はこれで十分だ、もっと急を要することも多いのだから、未来を準備すべきだ」から、「内乱清算が最優先課題であるべきなのに、1年が過ぎても一つもまともに清算できていない」に至るまで。道は遠いのにあらゆる場所で「内乱清算」に対する抵抗が頻発するものだから、多くの人々が焦っているようだ。

 いま私は、過去1年を定義する私たちの集団的言語として「内乱清算1年」ではなく、「民主政再建1年」を用いることを提案したい。これから私たちが作っていくべき時間をより正確に表現する言葉でもあるうえ、共有する言葉の力はこの時間の焦りに耐えるうえで助けにもなると考えるからだ。

 「清算」とは、過去をきれいに整理して正すという意味だ。だが、いつまで、どれだけ整理すれば、私たちの過去はきれいになるのだろうか。過去をきれいに整理しないと前に進めないのだろうか。私はそうは思わない。内乱の捜査と裁判は当然徹底して行われなければならないが、それは過去をきれいにするためではなく、似たような犯罪の再発を防ぐためのものであるため、民主政再建の過程の一領域だ。制度を作り変えて権力機関同士のけん制システムをうまく働かせることも、再建の一つの過程だ。私たちが共に暮らす家を新築する過程は絶対的に時間と忍耐を必要とし、試行錯誤は避けられない。社会経済的不平等も緩和させ、市民の基本権保障も強化し、権力機関の誤作動も正しつつ、「12・3内乱」犯罪者たちに責任を問うことを通した再発防止も、長い目でみて同時にやっていくことだ。清算をやり切ってはじめて再建は可能だという段階論的思考は私たちの忍耐を枯渇させるとともに、民主主義者の連帯の内部の信頼を傷つける恐れがある。一つの領域の課題が時間がかかるなら他のことをまず片付ければよいのだし、途中で失敗したらやり直せばよい。いま重要なのは、民主政の再建を共に担っていくべきあらゆる部門の民主主義者たち同士の信頼と連帯だ。

//ハンギョレ新聞社

ソ・ボクキョン|ザ・可能研究所代表 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1233510.html韓国語原文入力:2025-12-08 19:38
訳D.K

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