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[コラム] 詭弁の達人、安倍首相

登録:2015-08-17 23:50 修正:2015-08-18 06:53

 学校で主観式数学問題を解く時、解析過程は合っているが答が違う場合、先生は概して正解に次ぐ過分な点数を与える。 たとえ最後にミスして答は間違って書いても、答を探してゆく過程を重視するためだ。 しかし「解析過程は間違って、答だけを正しく書いた」反対の場合は、ほとんど零点に近い苛酷な点数を与える。まさに安倍晋三日本首相が14日に出した敗戦70周年“安倍談話”は、解析過程は間違って答だけを整えてしまった典型的事例だ。

 安倍首相は敗戦50周年、60周年に出された村山談話、小泉談話より3倍以上長い分量でありながら、メッセージの強度は顕著に弱化させた。談話の4大キーワードとして発表前から国際的な注目を浴びた侵略、植民支配、反省、謝罪は談話の隅々に配置したが、脈絡は以前の談話と全く異なっていた。 村山、小泉談話は日本が周辺国に対して行った侵略と植民支配に対して反省し謝罪する主体と客体を明確に表現したが、安倍談話はこれらすべてに対して主体も客体も不明な“幽体離脱”話法を駆使した。 3倍以上の分量で以前の談話のメッセージを30倍以上薄めたといっても過言ではない。

 安倍談話は侵略に関して「事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない」と述べたが、これはどこから見ても日本が外国を侵略した事実を述べたものとは見られない。「植民地支配から永遠に訣別し、すべての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない」とした原則論も「日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました」という部分と連結して読めば、過去の植民支配に対する反省とはかけ離れたものであることがわかる。さらに、日露戦争云々する部分は、その戦争の結果として植民統治の苛酷な苦痛を味わった韓国人には冒とく以外の何物でもない。

 安倍首相は「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」とも述べた。 中国の新華社通信が適切に指摘したように、自分たちが被った広島と長崎の原爆被爆の惨状は永遠に記憶しようと言っておきながら、彼ら自身の侵略と植民支配による苦痛は「もうそろそろ」と言っていることと相違ない。 被害当事国に響く言葉でも言いながらであれば分からないが。

 安倍首相は韓日間の最大葛藤要因になっている日本軍慰安婦問題を意識して、談話の前後に戦争中に「深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも、忘れてはなりません」ということを二度繰り返した。 だが、慰安婦と関連した日本政府の強制性を認めた河野談話の内容にははるかに及ばない内容だ。 もっとも安倍政権は、昨年4月にも河野談話を検証するとして、談話内容の根幹をむやみに傷つけておきながら当たり前のように談話は継承し続ける宇と公言したことがあるので、期待すること自体がおかしいことではある。

 こうして安倍首相は「我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。…こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります」と自身が直接反省、謝罪することは極力避けた。

 全体的に脈絡が合わない言及と詭弁的な論理で一貫したこのような談話に、米国ホワイトハウスは「首相が以前の歴史関連談話を継承するとした約束を歓迎する」という声明で応えた。 解析は間違ったが、答えは合っているという理由で、米国が安倍首相に100点を与えたわけだ。 そのように見れば、安倍首相は正解を当てることだけを重視する米国の意図をあらかじめ看破して、巧妙なかけはぎ表現だけに没頭したようだ。 だが、安倍談話がどれほど不充分で詭弁的な論理で書かれたかは、世界各地の主要言論がいっせいに批判したことを見ただけでも十分に知ることが出来る。

オ・テギュ論説委員室長 //ハンギョレ新聞社

 今や私たちがすべきことは安倍首相に反省と謝罪を要求することではないようだ。 それ以前に、論理の勉強をもっとしてくれるようお願いするのが良さそうだ。解析が正確であってこそ正解であり、解析を間違えばたとえ答が合っていても誤答だということを教えることが急務だ。

オ・テギュ論説委員室長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/704743.html 韓国語原文入力:2015-08-17 18:16
訳J.S(1897字)

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