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なぜ月給が高い人ほど「最低賃金1万ウォン」に反対するのでしょうか

登録:2017-09-22 22:09 修正:2017-09-23 08:34
全国民主労働組合総連盟傘下の非正規職労働組合員とこれに連帯する正規職労働者、市民社会団体の会員たちが6月30日、ソウルの光化門広場で開かれた一斉ストライキ本集会で「最低賃金1万ウォン」のスローガンを叫んでいる=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 韓国労働研究院が「2017年労使関係国民意識調査」という資料を出しました。労働組合に対する肯定的評価が高まったという内容が載っていましたが、いろいろな面で考えさせられる材料を投げかけてくれました。保守マスコミがかぶせた“貴族労組”のフレームから国民はすでに抜け出しましたが、私自身は相変らず閉じ込められていたんだな、と、労働担当記者として恥ずかしく思いました。こんにちは、社会政策チームのチョン・ウンジュ記者です。

 労働研究院は、1989年、2007年、2010年、そして今年、1カ月間かけて労使関係に対する国民意識を一対一の対面調査方式で調べました。回答者は男女、賃金労働者、自営業者、労組組合員の割合、政治的指向などを考慮して多様に選定しました。結論は、労組に対する認識が1987年6月抗争と“労働者大闘争”の余韻が残っていた1989年の水準まで肯定的に変わったということです。昨年の「ろうそく革命」の過程で、労組が一定の役割を果たしたという評価が反映された結果ですね。文在寅(ムン・ジェイン)政府が「労働尊重社会」の実現を前面に掲げて多様な労働政策を展開していることも肯定的影響を及ぼしたのでしょう。

 今回の調査では、文在寅政府の労働政策に対する支持度も評価しました。「青年雇用の拡大および保護」が最も多い支持を受け、「雇用創出のための大企業・高所得者増税」、「経済社会的不平等緩和」、「公正な労使関係形成支援」などが後に続きました。多少意外な結果としては、現政権の13個の労働政策の中で「最低賃金1万ウォン(約1000円)引き上げ」が最も低い点数だったという点です。

 「最低賃金1万ウォン」は、今回の大統領選挙ですべての候補が主張した公約です。実現時期だけが2020年と2022年で多少違っていただけです。2020年を約束した文在寅候補が当選し、最低賃金委員会は時間当たりの最低賃金を今年の6470ウォンから来年は7530ウォンに16.4%引き上げました。次の2年間の引上げ率も15%水準で維持すれば、2020年には最低賃金が1万ウォンを達成できるのです。では、誰がなぜこの政策に反対しているのでしょうか?

 労働研究院から詳細な分析資料を受け取ってみたところ、最低賃金1万ウォンに「賛成する」という応答は55%、「反対する」という応答は18.5%でした。26.5%は「反対でも賛成でもない」と答えました。月給が少ないほど賛成率が高く、月給が多いほど反対率が高まりました。150万ウォン(約15万円)以下では賛成63.1%、反対12.8%、150万~300万ウォン(15万~30万円)では賛成55.2%、反対14.5%、300万~500万ウォン(30万~50万円)では賛成53.1%、反対22.8%、500万ウォン以上では賛成45.9%、反対29.7%と調査されました。最低賃金引き上げに直接的な影響を受ける150万ウォン以下で賛成率が高いのは当然だと思いますが、月給が多くなるほど「最低賃金1万ウォン」に反対する比率が高まる理由は、にわかには分かりにくいのです。最低賃金が上がった時に影響を受ける事業場の80%が30人未満の零細・中小事業体なのに、なぜ高所得者が最低賃金1万ウォンに抵抗するのでしょうか?

 この政策に直接影響を受けるまた別の利害関係者である自営業者はどうでしょうか? 予想どおり、支持度は相対的に低くあらわれました。従業員のいる雇い主は、35.5%が反対し、29%が賛成しました。60.2%が賛成して13.7%が反対した賃金労働者とは明確に異なる結果です。自営業者の反対のために、最低賃金1万ウォンが労働政策の支持度で“最下位”を記録したようです。今年最低賃金を16.4%上げて、自営業者には例年平均にくらべて超過引き上げ分を直接支援する対策を出しましたが、それだけでは彼らの不安を完全に解消できなかったようです。

 最低賃金1万ウォンに対する政府と与党の雰囲気も少し違っています。キム・ドンヨン副総理兼企画財政部長官は13日、国会経済分野対政府質問で「最低賃金を引き上げなければならないという方向は明らかだが、来年以後の速度は慎重に検討する」と述べました。文在寅政府の引継ぎ委員会の役割をした国政企画諮問委員会の委員長出身である共に民主党のキム・ジンピョ議員も18日、ソウル汝矣島(ヨイド)の中小企業中央会で「2020年までの3年以内に最低賃金を時給1万ウォンに引き上げる政策の速度は緩和されることがありうる」と明らかにしました。

 世論により政策が変わることはありえますが、対策により世論が変わることもあります。最低賃金1万ウォンはどんな道を選択するのでしょうか?

チョン・ウンジュ 社会エディター席社会政策チーム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/812191.html 韓国語原文入力:2017-09-22 20:37
訳J.S(2197字)

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