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[ニュース分析]虚をつかれたサムスン…李副会長の支配力強化に打撃

登録:2016-06-01 00:27 修正:2016-06-01 11:59
サムスン物産、控訴審敗訴の波紋

裁判所「意図的株価下落の疑い」
新規工事など合併後に公開
他の建設会社の株価が上がるなかで
サムスン物産のみ下落

サムスン物産合併議決前の主要建設会社の株価変動//ハンギョレ新聞社

 李在鎔(イジェヨン)副会長「これが祝福されるようなことですか?」

 サムスン3世経営の主役を演じる李在鎔副会長が、昨年7月のサムスン物産と第一毛織の株主総会で合併決定後、未来戦略室の役員から「おめでとうございます」という挨拶を受け、不安げに語った言葉だ。

 李副会長の憂慮は現実のものとなった。旧サムスン物産株式の持分2.1%を保有していた日盛(イルソン)新薬が合併に反対して提起した株式買収価格変更請求の控訴審で、裁判所が買収価格が過度に低く策定されたとし、日盛新薬の主張を受け入れた。サムスンとしては米国系ヘッジファンドのエリオットの反対を押し切り、かろうじて合併を成功させ安心していたところに虚をつかれた形だ。サムスン側は「1審では日盛新薬が敗訴したので思いもよらない結果だ。焼けぼっくいに火が点いた感じ」と当惑した様子だ。

 市場も予想できない結果だとし、ダビデ(日盛新薬)が巨人(サムスン)に勝ったという反応だ。法務法人ハンヌリのキム・ジュヨン弁護士は「これまで保守的な態度を見せてきた裁判所が、裁量権を積極的に活用し株式買収価格変更請求を受け入れた珍しい事例」として「まだ大法院(最高裁)判決が残っているが、今後類似の事件に大きな影響を及ぼすだろう」と予想した。

 サムスン物産株式の買い取り価格が、当初の一株当り5万7234ウォンから控訴審裁判所が定めた6万6602ウォンに上がる場合、サムスン物産が日盛新薬に追加で支払う金額は350億ウォン(約33億円)程度だ。しかし、サムスンが実際に受ける打撃はこれをはるかに上回る見込みだ。裁判所が株式の買収価格が企業価値を正しく反映していなかったと明らかにしたことにより、サムスン物産と第一毛織の株式合併比率(1対0.35)、これに基づく合併は不公正だという市場の疑問が裁判所によって確認された形になるためだ。統合サムスン物産の株価が合併後に大幅に下落し投資家の不満が高い状況に加えて、今回判決に襲われる格好になった。

サムスン「焼けぼっくいに火が点いた感じ」
系列会社合併と持株会社転換を通じた
李在鎔副会長継承構想に負担
株主追加訴訟が相次ぐ可能性も

裁判所が提示した「サムスン物産合併前の株式低評価」判決の根拠//ハンギョレ新聞社

 合併比率をオーナー家にとり有利にするため意図的にサムスン物産の実績不振と株価下落を誘導した疑いがあると裁判所が明らかにしたことも、大きな負担になる。裁判所は「旧サムスン物産は李健熙(イゴンヒ)会長一家の株式保有率が低く、第一毛織については高いので、サムスン物産の合併比率が低いほどイ会長一家には有利になる」と指摘した。裁判所はその根拠として、サムスン物産の理事会が2015年5月末に合併決議を行う直前は、住宅景気の回復で他の建設会社の株価が揃って上がったのに、サムスン物産だけが下がった点、住宅新規供給を増やさずに大型新規受注がなかった点を挙げた。一般株主としては株価操作の疑いを抱いても当然と言える内容だ。

 サムスンの3世継承に及ぼす影響も注目される。当初、サムスン物産合併の主目的は、李副会長の支配力強化とするのが市場の支配的分析だった。今回の決定により、李副会長のこの支配力強化の歩みが正当性という点で大きな打撃を受けることになった。1990年代後半のサムスンエバーランド転換社債安値引き受けに代表される脱法相続問題、続いて2000年代のサムソンSDSへの集中発注問題に、サムスン物産と第一毛織の不公正合併問題という不名誉な勲章が追加されたわけだ。サムスンが李副会長の支配力強化のために構想している系列会社の合併や持株会社への転換にも相当な負担が伴うことになった。市場ではサムスン電子とサムスン生命の持株会社転換、サムスン物産の再分割とサムスン電子との合併など種々の方案が提示されている。経済改革連帯のキム・サンジョ所長は「サムスンは法に従っているので何の問題もないと言うが、最小限の基準に過ぎない法遵守だけでは不十分だ。市場と社会の期待に応えるためには、支配構造改善のためのより積極的な努力が必要だ」と話した。

 サムスンにとって不幸中の幸いと言えるのは、控訴審の決定がサムスン物産合併に反対した他の投資家にまで直ちに適用されはしないことだ。買い取り価格の引き上げは、日盛新薬のように合併に反対し株式の買い取り請求をした株主だけに適用される。また、サムスン物産の合併比率や合併が直ちに無効になるわけでもない。日盛新薬はサムスン物産を相手に合併無効訴訟も進めている。一般株主がサムスン物産を相手に株価操作疑惑で損害賠償請求訴訟を請求することはできるが、金融監督当局の不法行為立証が先決課題だ。

クァク・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/746217.html 韓国語原文入力:2016-05-31 21:22
訳J.S(2144字)

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