組織・代表体制・社屋はそのまま
株主疎通強化具体案を出すべき
国民年金2カ月間で3900億ウォンの損失
新規循環出資禁止の解決法も課題
意志決定構造の不透明性解消を
サムスングループの実質的持株会社である合併サムスン物産が1日にスタートする。 「イ・ジェヨン体制」を念頭に置き、2013年から進められてきたサムスンの支配構造改編で、いわば“予選”が終わり“本選”が始まる。
サムスン物産は31日に出した報道資料を通じ、合併のシナジー効果を出すのはもちろん株主との積極的疎通で企業価値を最大化し、2020年に売上60兆ウォン(約6兆円)のグローバル企業に躍進すると明らかにした。 事業組織は現状の建設・商事(旧サムスン物産)、ファッションとリゾート・建設(旧第一毛織)の4部門を維持し、代表体制もチェ・チフン社長(建設)、ユン・ジュファ社長(ファッション)、キム・シン社長(商社)、キム・ポンヨン社長(リゾート・建設)と各自の代表体制をそのまま据え置くことにした。 合併法人の社員数は、第一毛織が4300人余、サムスン物産が8200人余で合計1万2500人だ。 サムスン物産の建設と商事部門はソウル・瑞草(ソチョ)洞の社屋に、第一毛織の建設・リゾート部門はソウル・太平路(テピョンノ)の旧サムスン本館にそのまま残る。 第一毛織のファッション部門だけはソウル・寿松(スソン)洞から道谷(トゴク)洞の軍人共済会館に移転する予定だ。
新たにスタートする合併法人は、その推進過程で合併比率の非公正性を巡る激しい議論を起こし、様々な課題を残した。 サムスンの支配構造改編が今回の合併で終わるわけではない点で、残された課題を巡る問題はいつでも再点火可能な火種として残る。
先ず、合併法人がグループオーナー家を除く残りの株主に対する疎通強化と権益保護を実質的にどれほど改善するかに視線が集まる。合併前のサムスン物産は米国系ヘッジファンドのエリオット・マネジメントと合併の公正性に関して株主総会での票対決を含め44日間の死闘を繰り広げた。 この時、国内外の株主に第一毛織との合併への支持を懇請して、株主との疎通強化などの約束を提示した。 また“食い逃げ”外国資本の相次ぐ攻撃憂慮を前面に出す「愛国心マーケティング」も動員した。 この過程で国民年金は多くの論議にもかかわらず合併に賛成票を投じた。 こうして結局合併案は通過したが、このような結果がオーナー家を除く残りのサムスン物産株主の当面の収益にはつながらなかった。たとえば国民年金は、サムスン物産の主要株主として合併発表後の2カ月間に3898億ウォン(約400億円、8月25日基準)の投資損失を見た。 合併サムスン物産はスタートを翌日に控え、以前に約束した株主権益保護のためのガバナンス委員会と社会的責任を強化するためのCSR(企業の社会的責任)委員会などを近い将来に設け活動に乗り出す計画を明らかにしただけだ。 だが、このような内容だけでは株主との疎通努力が大きく進展したとは言いがたい。 また、合併に反対したエリオットとの葛藤も完全には終わっていない。
第二に、合併法人は新規循環出資禁止と関連した法的問題も解決しなければならない。 公正取引法は既存の循環出資分は認めるものの、新規の循環出資は禁止している。 公正取引委員会は合併サムスン物産→サムスン電子→サムスン電気→合併サムスン物産など、合併法人に関連した循環出資に対して直ちに是正措置を取るべきか、合併にともなう例外として猶予期間を置くかを判断しなければならない。 公取委は9月4日、合併法人登記が終わり次第、調査に着手する予定だ。
この他、合併過程で明らかになった経営陣の意志決定構造の不透明性も解消しなければならない。 今後、サムスン電子イ・ジェヨン副会長のグループ掌握力を確立するためには、追加的な支配構造改編が避けられない状況だが、サムスン物産のみならずサムスン電子など主要系列会社に対して多くの持分を保有している外国人投資家は、合併過程で意志決定の透明性問題について疑問を提起した。
これに伴い、今後合併など支配構造の改編過程では、権限と責任の乖離問題を解決しなければならないとする指摘もされる。 キム・サンジョ経済改革連帯所長(漢城大教授)は「合併サムスン物産の理事陣に、イ・ジェヨン副会長やグループ経営を指揮するサムスン未来戦略室の高位級が参加しなければならない」として「合わせて今後の支配構造改編過程でも権限と責任を一致させるプロセスが必要だ」と話した。
一方、合併サムスン物産は合併法人登記が終われば、9月14日に新株を交付して9月15日に証券市場に新株が上場される。 サムスン物産はサムスングループの親会社として1938年の設立後77年ぶりにグループの事実上の持株会社になった。