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ポスト李健熙2年、遠いサムスンの経営継承

登録:2016-05-09 09:02 修正:2016-05-09 17:18
李会長の闘病長引き継承作業続く
サムスン・オーナー家と系列会社のサムスン物産の持ち株保有率は39.6%。李健煕2.86% 李富真5.51% 李敍顕5.51% 李在鎔17.23%//ハンギョレ新聞社

李在鎔副会長、系列会社整理に速度
サムスン物産中心の支配構造
持ち株会社の設立が改編の中心に
金融持ち株転換中断の観測も
経営権継承は長期化の見通し
サムスン「持ち株会社転換は公式に検討しない」

 会長職務代行2年目。

 10日はサムスングループを率いてきた李健熙(イゴンヒ)サムスン電子会長が急性心筋梗塞で病床に臥してから2年になる日だ。今も副会長の肩書きを持つが、李在鎔(イジェヨン)サムスン電子副会長が、父に代わりサムスングループの経営全般を担ってきた。李副会長が“職務代行”をする間、サムスングループは少なからぬ変化を遂げてきた。系列6社が売却され、残る多くの系列会社も事業部門の構造調整に入った。李会長の闘病が長引き、李副会長を中心とした支配構造の再編作業もスピードをあげ始めている。サムスン物産株の17.23%を保有する李副会長が系列会社の支配力を強化するため株式を確保し、父の持ち株を受け継いだ時に発生する税金を負担する金銭的余力も用意しておかねばならないためだ。

 この2年を評価するなら、支配構造改編の事前段階と呼ばれた系列会社の整理作業は急ピッチで続いたが、重要な最初のステップと考えられたサムスン生命の金融持ち株会社への転換作業は、スタートから難航が続けた。このため、李副会長の経営継承過程は、予想より遅くなるとの見通しも出されている。

 サムスングループが支配構造の再編に拍車をかけたのは、2014年6月にサムスンエバーランドの社名を第一毛織に変えてからだ。その後、サムソンテックウィン、サムスントータル、サムスンタレス、サムスン総合化学を韓火(ハンファ)グループに売却し、サムスン精密化学、サムスンBP化学、サムスンSDIのケミカル事業部門をロッテグループに売却するなど、グループ事業を電子、金融、バイオ中心に再編するための規模縮小を進めてきた。昨年は、サムスン物産の3大株主だった米国私募ファンドのエリオットの反対に抗し、支配構造改編の頂点になる第一毛織とサムスン物産の合併まで成功させ、経営引継ぎ作業に弾みをつけたように見えた。

 財界周辺では、サムスングループが李副会長の支配力を高めるための次のステップとして、持ち株会社(他の会社の株式を所有して事業活動を支配することを主な事業とする会社)を作ると見込んでいる。李会長と子息らは、サムスン物産株のうち約31%を所有しており、これを通じてグループ全体に支配力を行使している。系列会社各社は、サムスン物産→サムスン生命→サムスン電子へとつながる出資構造を柱としているが、このうちサムスン生命とサムスン電子は、他の系列会社の持ち株の一部を所有する中心の系列会社だ。第一企画、サムスンSDS、サムスンエンジニアリング、サムスンバイオロジックスはサムスン物産が株を直接持っている。

 サムスングループが持ち株会社体制でいくと見られる主な理由は、サムスン生命→サムスン電子につながる持ち株率の循環構造の強化にある。サムスン生命は現在、サムスン電子の持ち株7.75%を持つ大株主だが、その割合はそれほど高くないため、経営権防衛に脆弱な点があるのが現実だ。また、サムスン生命の顧客の資金をもとにサムスン電子を支配し、金融・産業分離の原則に反しているとの社会的批判も絶えず受けてきた。こうした問題を解決するため、既存の株主らが持ち株率の通りに分けて作った新会社の株式を持てる人的分割を経て、サムスン生命とサムスン電子をそれぞれ投資法人と事業法人に分割することができる。サムスン物産もサムスン電子の持ち株の4.18%を持つが、人的分割の過程で行われる株式公開買収で、サムスン電子の株式をさらに買い付けることができる。これを通じてサムスン物産が直接、新設の「サムスン生命投資法人」(金融持ち株会社)と「サムスン電子投資法人」(非金融持ち株会社)を支配することになれば、李会長オーナー家がより安定的にグループ全体を支配できるためだ。

 経済改革連帯は昨年2月の報告書で、「第1段階としてサムスン生命を中心とした金融持ち株会社を設立した後、第2段階でサムスン電子を中心とする非金融の系列会社の一般持ち株会社を設立させ、最後に政府が中間金融持ち株会社制度を許容すれば、二つの持ち株会社を垂直に連結する最終的な持ち株会社を設立できる」と予想した。ハイ投資証券も先月、「サムスングループの支配構造変換」に関する分析報告書の中で、経済改革連帯と似た見通しを示し、「事前作業として李副会長の経営能力に対する信頼性を得た後、経営権継承のための支配構造変換が本格的に現れるものとみられる」と分析した。

 このうちサムスン生命の金融持ち株会社への転換作業は、これまで活発な準備作業が行われてきた。サムスン生命は今年1月、自社株300万株を買い入れ、サムスン電子が保有していたサムスンカードの持ち株37.45%も取得した。ハイ投資証券のイ・サンホン氏は「グループ全体として事業部門の構造調整も一段落した状態で、サムスン生命が自社株を買い入れたのは、株式の価値を高めるための焼却用途ではないため、持ち株会社への転換など、支配構造を変えるための目的と見ざるを得ない」と話した。

 しかし、財界の話を総合すると、サムスングループは最近、サムスン生命の金融持ち株会社への転換作業を中断したと伝えられた。ある財界関係者は「金融会社が持ち株会社に転換するためには、金融委員会から設立や大株主の資格要件に対する事前承認手続きを経ねばならないが、その過程で、サムスン生命は保険金支給能力を示す指標の支給余力の比率が低くなる問題などに対する解決策を、十分に提示できなかった」と話した。これに対しサムスングループ関係者は「(金融持ち株会社への転換について)公式に検討したことはないため、進行を保留したとも言えない」と答えた。金融持ち株会社への転換可能性について経済改革連帯のキム・サンジョ所長(漢城大貿易学科教授)は、「持ち株会社への転換の最初のステップに当たる金融持ち株会社への転換が実現できなかったことを考えれば、グループの支配構造の再編作業は、当分、進めていくのが難しそうだ。金融当局が指摘した内容を補完し、その他にも与党が過半数割れした国会の状況と政権交代などの影響を考慮すれば、少なくとも2~3年以内には難しいだろう」と予測した。

 サムスン生命を通じた金融持ち株会社への転換以外にも、サムスン物産を金融持ち株と事業会社に分けて事業を再編する可能性もあるが、専門家らは実現の可能性は低いと見る。これに先立つサムスン物産と第一毛織の合併が難航したため、サムスングループが敢えて困難な道を選ぶことはないという分析だ。ハイ投資証券のイ氏は「サムスン生命の金融持ち株の転換より複雑な手続きを踏まねばならないため、サムスン物産の持ち株会社への転換は遠い道に戻っていく方法となる。実行に移すのは容易ではないだろう」と話した。

 金融持ち株会社への転換作業で空回りを続け、その後につなげるべきサムスン電子の持ち株会社への転換可能性は議論さえ難しい状態にある。しかも、まだ事業再編を終えていない系列会社もある。2014年にサムスン重工業との合併を白紙撤回したサムスンエンジニアリング、売却可能性が言及されている第一企画とエスワンなどが残っている。また、サムスン重工業は最近、造船業の構造調整という懸案にも直面している。

 このため李副会長を中心とした支配構造の再編作業は、これに先立ち財界で予想してきた3~5年より長い時間がかかる可能性が高まった。結局、この期間に、李副会長は自らを中心とした支配構造の再編が必要な理由を韓国社会に説明しなければならないことが課題として残った。経済改革連帯のキム所長は「まだ終わっていない系列会社の整理などの事業再編を終えた後に、持ち株会社への転換について議論を進めなければならない。サムスングループがもっと時間をかけて準備すれば、サムスン生命とサムスン電子の持ち株会社への転換をほぼ同時に公表することもできる。結局、サムスンがどういう選択をするかという問題」と指摘した。

キム・ソンファン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-05-08 20:01

https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/742921.html?_fr=mt2 訳Y.B

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