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[インタビュー] 「狭い国土でも多様な韓国ローカルフードは途方もない資産」

登録:2015-03-12 22:31 修正:2015-03-13 08:24
英国出身のフードコラムニスト ティム・アルパ氏
英国出身のフードコラムニスト ティム・アルパ氏。 イ・キルウ先任記者//ハンギョレ新聞社

 英国人が最も好むケーキはニンジン ケーキだ。 英国の湿っぽい気候でも良く育つニンジンは、水分が少なくパンに入れればしっとりとした食感になるからだ。 「ニンジンは私に唯一話しかけそうな、美しく快活な女子学生のようだ。 事実誰とでも仲良くするという悪いうわさが飛び交う程に快活な女子学生のように、ニンジン ケーキも何とでもよく合う」。料理の味でなく、文字だけでも料理の多様で興味深い世界へ誘惑する料理人、ティム・アルパ氏(38)の表現だ。

 今月6日、ソウル・延南(ヨンナム)洞のある小さなレストランで会った彼は「フランス国旗の白は平等を象徴する。 焼きたてのバケットを手でちぎった時に見える肌は私たちを満足させる純白だ。 フランスの高級料理に優越感と帝国主義的傾向がまだ残っているとすれば、パンは民主主義と平等、ヒューマニズムと同義語」と説明した。 ちぎったパンの一かけからそんなストーリーを引き出すとは…、思わず唸ってしまう。

 哲学を専攻しバイトしながらコックに
 有名ホテルの副厨房長まで務めた経歴
 「シェフの小言が嫌で」言葉と文で料理を表現

 韓国人と結婚して9年、料理の話
 ヨーロッパグルメ探険記『バナナとクスクス』出版
 韓国料理探険中

 ついでにバゲットに対する説明を続けて欲しいと言った。「フランスの町のおいしいパン屋で焼きたてのバケットを行列して買えば、避けがたい苦痛を味わわなければなりません。 その香ばしい味の誘惑に勝てずにバケットの両端の丸い部分をちぎって口に入れれば、涅槃の境地に入ったラマ僧でさえも次の一口を得るために手がパンへ向かうのを堪えられないでしょう」。英国系ユダヤ人の父親とフランス人の母親を持つ彼は英国で生まれた。 大学では哲学を専攻した。 彼は高校生の時から英国の代表的な大衆飲食店であるパブでアルバイトとして料理を始めた。 大学に進学してフロイトとニーチェに耽溺したが、彼は食堂で料理を続け、ついに有名ホテルの副厨房長にまでなった。 だがシェフの小言が嫌で、料理をあきらめて文と言葉で料理を扱い始めた。 料理に対する好奇心は2005年に韓国に来るまで彼をヨーロッパの様々な国へ旅行させた。 人々が有名観光地を見ている間に、彼はささいな料理もとことん見て回る飲食旅行をした。

 2007年に韓国人と結婚して9年暮らしている彼は、ヨーロッパ料理探険記を生かして『バナナとクスクス』(イエローストーン刊)を最近出版した。 翻訳は各種の料理資格証を持ったマニアであり“グルメ放送界の達人”を自任する夫人のチョ・ウンジョン氏が受け持った。「料理は、今まで私が経験してみた最も創意的な行為で、料理する姿を見ていると、あたかも赤い夕焼けが美しく染まる場面のように自然の一部のように見えます。 料理は私たちを人間にし、一つに結束させました」。彼は英国を出発してフランス、イタリア、スペイン、ギリシャ、スイス、ドイツを経てロシアに至るまで、おいしい料理の探険を続けた。 彼は一つの国の文化を理解するためには料理に対して好奇心がなければならないと語る。 「韓国式味噌を作る過程を知れば、韓国の人々が今までどのように暮らしてきたかを理解できます。 英国でよく食べるフィッシュ・アンド・チップスがどのように生まれたのか彼らは気にしていません。 単に『あっ! これはイギリスの人がよく食べる食べ物だな』としか思いません。 事実、その食べ物のいきさつを知れば、そちらの歴史や哲学を深く理解できるのにです」。 彼は貧しい漁師が獲った魚を持って行き売って残った雑魚をジャガイモと一緒に油で揚げて作った“憂鬱なわけ”がある料理がフィッシュ・アンド・チップスだと教えてくれた。

 結婚と同時に韓国に定着し、フード コラムニストとして活動してきた彼は韓国料理の多様性に驚いたという。「ロシアは広い国だが各地域の料理は大差ありません。 ところが韓国は狭い国土なのに地域別に明確に区別される料理文化を持っています。 途方もない民族資産です」。彼はチョングクチャン(韓国納豆)、ホンオ(ガンギエイの発酵食品)、クァメギ(干しサンマ)が好きだ。 その独特の臭いが魅力的だという。「もしイタリアに旅行に行けば、必ず田舎のおばあさんが作ったパスタを味わってみてください。 あたかも韓国の韓国式うどん(カルグクス)を作る人の手の味がにじみ出てくるように、身近で情感いっぱいの旅を味わえます。 もちろん値段も安いですよ」。 韓国料理を探険している彼は、もうすぐこれを本に書いて出す予定だ。 彼は「本当に文化に一歩近付ける最も良い方法は、“飢えた腹”と“開かれた心”で旅をすること」と話した。

イ・キルウ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/681986.html 韓国語原文入力:2015/03/12 21:00
訳J.S(2198字)

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