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-日本の韓国に対する経済報復措置(半導体の原料および材料の輸出制限措置)とGSOMIA(韓日軍事情報包括保護協定)問題はどのように解決すべきか。
「日本が強制動員問題に対して通商規制を行い、韓国はその対応としてGSOMIAを中止させてから、停止に変えた状態だ。政治問題が経済と安全保障を侵害したケースだが、韓日関係が悪化しても経済と安全保障の領域は侵害しない不文律が崩れた。どちらも損をする『ルーズルーズ(lose-lose)ゲーム』だ。現在、韓国と日本を取り巻く戦略的環境を考慮すれば、絶対やってはいけないことをしたのだ。
日本は歴史問題が解決されなければ、経済報復措置も解除できないと言うが、経済措置の解除において進展があれば、歴史問題を解決する動力になり得る点に気づき、発想を転換しなければならない。強制動員問題の解決策の第1段階として現金化措置を凍結する解決策を韓国が用意した後は、通商規制とGSOMIA問題もすぐに解決しなければならない」
-韓日関係を複合重症骨折状態だと診断したが、原因と解決策は何か。
「韓日関係で『失われた10年』の悪循環の構造が固定化している最大の原因は、韓日の国力の差が急速に縮まり、過去の非対称的関係から対称的関係に変貌する過程をきちんと消化できなかったことだ。日本は『失われた30年』を経験しながら発展の動力を失い、政治・社会的不安が大きくなったことで、過去の過ちを反省するよりは『強い国家』を望むようになり、歴史修正主義に傾いて、右傾化した。日本の右派民族主義と韓国の左派民族主義の衝突が起きた。中国の浮上と北朝鮮問題の解決策に対する両国の立場の相違も影響を及ぼした。
この難しい状況を互いにうまく乗り越えれば『成長痛』で終わるだろうが、さらに長期化すれば『筋萎縮症』に固定化する恐れがある。ところが、両国は国際秩序が非常に不確実な現在、互いの重要性と協力の潜在力を看過している。中国は『小国は大国に従わなければならない』という位階的・垂直的秩序を掲げて浮上しており、北朝鮮は事実上核武装国家に近づき、米国の新孤立主義が台頭する非常に不安定な戦略環境で、韓国と日本が戦略的に重要なパートナーだという点を直視しなければならない」
-世界史的な観点から、韓日関係と65年体制を長期的にどのように改善できるか。
「韓日基本条約と請求権協定で形成された『65年体制』は、時代の変化によって多くの修正と補完が行われてきたし、今後もそうなるだろう。最大の争点である植民地支配に対して、韓国は違法で不当だと述べた。 日本は当時は『合法で正当』だと主張したが、現在は『合法だが、不当なもの』に変化した。1990年代から村山談話、河野談話、金大中-小渕宣言、菅直人談話などを通じて、日本が過去に過ちを犯したことは認めた。
ただ、法的に植民地支配が違法か否かをめぐっては依然として埋めがたい隔たりがある。日本だけの問題ではなく、欧州帝国主義列強も植民地支配の違法性を認めていないという問題がある。むしろ世界史的には韓日が植民地支配の清算において、時代を先取りしたと言える。植民主義に対する帝国主義国家の謝罪と反省は、時間の問題であって、結局は行われると思う。韓国だけでなくアフリカやカリブ海地域の国々が植民地支配国家の謝罪と反省を求めている」
-安倍元首相の死去後、日本政治はどこに向かい、韓日関係にはどのような影響があるだろうか。
「安倍元首相は明治維新以後、最長期間政権に就いた首相だっただけでなく、2010年代に日本の政治・外交・安全保障・経済を支配し、一種のパラダイムの転換を試みた指導者だ。安倍元首相の死が日本政界に及ぼす影響は、非常に大きくならざるを得ない。
現在、自民党内で議員93人の最大派閥である安倍派(清和政策研究会)をはじめ、茂木派(平成研究会)、麻生派(志公会)、二階派(志帥会)、岸田派(宏池会)が主要5大派閥だが、岸田首相率いる岸田派は議員41人で最も小さな派閥だ。政局の最大の変数は安倍派の行く末だが、現在は7人集団指導体制を整えており、誰が安倍派を実質的に率いるかは明らかでない。安倍首相の統制がなくなり、彼らがさらに強硬路線に傾く危険性もある。
岸田首相が選挙のない3年間、どれだけ独自色を出し、日本政界に実力者として浮上できるかがカギとなる。岸田首相の政治力、派閥間の合従連衡、安倍派の安定化が日本政局の行方を決めるだろうが、このような不確実性のため、韓日関係の面で短期的には安倍元首相が水面下で影響力を行使していた時よりむしろ動きにくくなったのが事実だ。しかし、中長期的にはアジア諸国との関係を重視する穏健派の岸田首相が次第に力を発揮し、韓日関係の改善に肯定的な影響を及ぼすだろう」
-韓国の立場としては、日本が平和憲法9条を変える改憲を進めることに非常に敏感にならざるを得ない。
「今回の参議院選挙前から、憲法改正に友好的な4党の議席は改憲発議可能な議席を超えていた。最大の変数は、憲法改正に反対する多数の世論だった。ところが、ロシアのウクライナ侵略以降、日本も平和憲法の制約から脱却する『普通の国』になることを支持する世論が高まっている。中国が台湾と尖閣諸島(中国名・釣魚島)に対して強圧的な政策を展開することに対して、日本の世論が敏感になり始めた。このような状況で自民党は4項目を変える憲法改正を公約に掲げて選挙で勝利し、その直後、岸田首相が憲法改正を進めると明らかにした。
ところが、もう少し詳しく見ると、実際には憲法改正の議論が大きな動力を得るのは難しい。日本と世界経済が悪化しているのに、憲法改正に政治的資源を使うほど余裕があるだろうか。4党が憲法改正を支持しているといっても、各党が追求する内容が異なるため、歩調を合わせることも容易ではない。まず連立与党の公明党が憲法への『自衛隊の明記』を支持していない。公明党の基盤は仏教、都市疎外階層、平和主義者で、自民党の選挙で重要な役割を果たすという点で無視できない。岸田首相は様々な環境を見極めながら具体的に憲法改正に乗り出すかどうかを決めるだろうし、憲法改正が速いスピードで進められるかどうかは不透明だ」
-憲法改正とは別に、すでに日本が集団的自衛権、「敵基地攻撃(反撃)」を推進し、防衛費の大幅引き上げにも乗り出したことは懸念すべきことだ。
「日本の政府債務はGDPの約260%で、予算の約40%が元金支払いと利子の返済に使われている。現在、日本の公式の防衛費は(GDPの)1%にやや及ばないが、NATOの基準によって海上保安庁を含めて計算すれば約1.2%だ。これをGDPの2%に増額すると明らかにしたが、過度な政府債務などのため、実際に防衛費の増額に踏み切る余力はあまりない。高齢化で福祉予算の負担も大きい。つまり、防衛費を2%に増やすと目標設定はするが、簡単には実現できないだろう。
一方で、日本はすでに2015年に解釈改憲を通じて集団的自衛権を行使できるようになり、自衛隊は名ばかりで、すでに『戦える軍隊』だ。専守防衛はすでに崩れ始めている。戦前の日本に照らしてみれば、日本の再武装は非常に懸念すべきことだ。だが、戦後の日本の状況に照らしてみれば警戒が必要であるが、少し違う見方もできる。日本は平和憲法を70年余り維持し、反戦・反核に対する日本社会の支持も完全に色あせたとは思えない。もう一つ、日本のアキレス腱は人口問題だ。合計特殊出生率が1.2程度に低くなり、徴兵制でもないため、兵力を維持するのは難しい。
これと共に、我々が考えるべき点は中国の軍事力だ。中国が世界2位の軍事費を使っているが、中国の物価と非公式の軍事支出などをみると、東アジアに関する限り、米国の国防費支出とほぼ同じレベルという分析がある。東アジアで中国の軍事力は圧倒的で、米国がこの地域に留まるかどうかに対する疑念が高まっている。2030年代半ばになれば、中国の経済力はアジアの他の国を合わせたものを超えるだろう。韓国と日本は東アジアで勢力バランスを維持し、米国がこの地域から退いた場合、力の空白が生じ危険な状況が起きることを防がなければならないという共通の利害を持っている。もちろん、日本の軍事力増強が中国の軍事力に対するバランスを維持するという目標のもと透明に行われ、民間統制が確実に維持され、韓日間の協力が十分になされるという前提のもとでの話だ」
(3に続く)