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強制徴用、被害国のみが「解決策探し」に奔走…国論分裂の雷管に?

登録:2022-08-02 02:23 修正:2022-08-02 08:07
日本企業の資産の現金化が差し迫る中 
政府「現金化前の代案」模索 
被害者側「日本の直接謝罪が先行すべき」
2021年10月28日に植民地歴史博物館で行われた「10・30強制動員最高裁判決3年、強制動員被害者および市民社会団体記者会見」で太平洋戦争被害者補償推進協議会のイ・ヒジャ代表が日本製鉄強制労役被害者イ・チュンシクさんの写真を掲げている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 2018年、最高裁は日本の戦犯企業に対し、日帝強占期の強制動員被害者への賠償を命じる判決を下した。履行を拒否した企業の韓国内資産の「現金化」措置が差し迫っているが、国内の被害者団体と政府の姿勢はすれ違い、軋轢が生じている。政府が韓日関係の改善に向けて設置した「強制徴用官民協議会」に被害者と被害者の訴訟代理人の一部が参加しないことを決めたのもそのうちの一つだ。

■ 嵐の前の静けさか

 先月14日、外交部ではチョ・ヒョンドン第1次官の主宰で「強制徴用官民協議会」の会議が行われた。4日に初会議が開催されて半月も経たないうちに行われた2回目の会議だ。戦犯企業の国内資産の現金化をめぐって激化した日本との対立を解消する方策を模索する場だった。18日と19日にはパク・チン外交部長官が日本の首相と外相に会い、強制徴用被害者賠償問題に言及し、資産現金化の開始前に代案を示すと語った。

 このような動きに強い批判の声をあげる人々がいる。三菱勤労挺身隊訴訟の支援団体である日帝強制動員市民の会と訴訟代理人団だ。彼らは官民協議会への不参加も宣言している。日帝強制動員市民の会のイ・グゴン常任代表は「日本企業が韓国最高裁の判決を履行しないことが韓日関係を悪化させた原因だ。三菱などの日本の強制動員企業がまず人権侵害の事実を認め、率直に謝罪し、そして賠償に取り組むべきだ」と声を強めた。加害者である日本企業は「やれるものならやってみろ」というふうに後ろ手を組んでいるが、被害者である韓国の政府が気を揉んで動くのは「低姿勢」にとどまらず「屈辱」に近いということだ。一部からは、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の動きをめぐって「対立を解消するつもりが、まかり間違えば日本との関係悪化はもちろん、国論分裂へと突き進む恐れもある」との懸念の声があがっている。

 実際に、被害者団体と彼らの訴訟代理人の一部が政府の設置した官民協議会への参加そのものを拒否することを決めたのは、新政権の対日外交行動にさす濃い影となっている。彼らはなぜ、「韓日関係改善の障害物」という一部の強い非難を受けてまで、「日本企業の謝罪と直接賠償」を要求しているのか。

勤労挺身隊被害者ヤン・クムドクさん(左から3人目)が2019年6月、韓日の市民団体と共に東京の三菱重工業本社前でデモを行っている=日帝強制動員市民の会提供//ハンギョレ新聞社

■ 問題の始まり…2つの顔の日本

 強制動員被害者賠償問題が全面に浮上する契機となったのは、3年あまり前の最高裁判決だ。2018年10月、最高裁は故ヨ・ウンテクさんら4人の強制動員被害者が日本製鉄(旧新日鉄住金)を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で原告勝訴の判決を下した。1人当たり1億ウォン前後の賠償金を支払えというものだった。ヤン・クムドクさん(93)、キム・ソンジュさん(93)ら5人(生存2人)も同年11月、「1人当たり1億~1億5千万ウォンを賠償せよ」という最高裁判決を引き出した。

 以降、韓国の強制動員被害者の訴訟代理人は、日本企業の韓国内資産について強制執行手続きを踏んだ。戦犯企業の韓国内資産を差し押さえ、売却して賠償金を一部でも確保するためだ。ヤンさんらは三菱重工業の韓国内資産(特許権6件と商標権2件)に対する差し押さえ命令を裁判所に申し立て、昨年9月に差し押さえ決定と売却決定を引き出した。早ければ8~9月ごろには最高裁による確定判決が下される見通しだ。故ヨ・ウンテクさんらも日本製鉄が所有しているPNR(製鉄副産物のリサイクル企業)株の強制執行手続きを踏んでいる。

 資産の現金化に向けた強制執行手続きを踏むのは、日本と当該企業が最高裁判決に従わず、賠償責任を否定しているためだ。日本は1965年に韓日両政府が結んだ「請求権協定」で被害者個人の請求権は消滅したとしている。韓国政府が50年あまり前に被害者個人に代わって賠償金を全て受け取ったという主張だ。日本が2019年に半導体の最重要素材を含む一部品目の韓国への輸出を禁止する措置を取ったのは、韓国の賠償判決に対する「経済報復」の性格が濃かった。

 韓日関係が崖っぷちに立たされる中、日本は中国には全く異なる態度を示してきたという事実が浮き彫りになってもいる。一例として、日本の西松建設は戦時中に日本の水力発電所の工事に動員した中国人被害者に、2009年と2010年の二度にわたって47億ウォン相当の和解金を支払い、記者会見を開いて謝罪した。中国人強制動員被害者が同社を相手取って日本で起こした訴訟で敗訴したにもかかわらず断行された措置だった。

日帝強占期に日本企業で強制労働させられた勤労挺身隊=日帝強制動員市民の会提供//ハンギョレ新聞社

■ 最初のボタンをきちんと…「罪を認めて謝罪から」

 強制動員被害者賠償については様々な意見と解決法が提案されている。被害国である韓国がまず解決策を模索するのは不適切だという見方がある一方、行き詰まった状況を打開するためには韓国政府が被害者に賠償を行い、その後に日本企業に対して求償すべきだとする意見もある。いわゆる「代位弁済」方式だ。代位弁済方式に限っても、誰の金で賠償するかについて見解が分かれる。

 しかし最も重要なのは、やはり「被害者の立場の尊重」だ。被害者の多くは依然として戦犯企業の直接謝罪を最優先の条件として掲げている。依然として係留中の訴訟が多いということも変数だ。最初のボタンをきちんとかけることがそれだけ重要なわけだ。日帝強制動員市民の会の集計によると、日本企業を相手取った損害賠償請求訴訟のうち、係留中のものは66件、原告は1102人に達する。内訳は最高裁係留9件(125人)▽二審留4件(85人)▽一審係留53件(892人)。

チョン・デハ、キム・ヨンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/honam/1053033.html韓国語原文入力:2022-08-01 09:00
訳D.K

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