尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が9日、李明博(イ・ミョンバク)元大統領の赦免を既成事実化したことで、時期と幅をめぐる議論が公論化する見通しだ。しかし、李元大統領の赦免に否定的世論が高いうえに、サムスン電子のイ・ジェヨン副会長を含む財閥トップを含む「大々的な赦免」に踏み切った場合、法治を損なうという批判が高まるとみられる。
尹大統領は、「20数年間収監生活をするのはやりすぎではないか。過去の前例に照らしても」と述べ、「前例」を赦免の根拠に挙げた。これは昨年、文在寅(ムン・ジェイン)大統領のクリスマス恩赦として4年9カ月間の服役の末に赦免された朴槿恵(パク・クネ)元大統領を含め、全斗煥(チョン・ドゥファン)氏や盧泰愚(ノ・テウ)氏赦免事例を念頭に置いたものと思われる。収賄や横領などの容疑で17年刑が確定した李元大統領は、これまで2年7カ月間収監された。尹大統領が言及した「20数年収監生活」は、李元大統領の刑期を指したものとみられる。李元大統領は2日、健康問題などを理由に、水原(スウォン)地検安養支庁に刑執行停止を申請した。尹大統領は前日、李明博派出身である与党「国民の力」のクォン・ソンドン院内代表の李元大統領赦免の主張に「言及する問題ではない」と述べたが、翌日には赦免に前向きな態度を示した。
しかし、李元大統領の赦免に対する世論は否定的だ。韓国社会世論研究所(KSOI)が交通放送(TBS)の依頼で4月29~30日に実施した世論調査(信頼水準95%標本誤差±3.1ポイント)で、「赦免に反対する」と回答した人は51.7%、賛成する人は40.4%だった。
共に民主党のシン・ヒョニョン報道担当は「国民が血税を使い果たした張本人を赦免することに共感できるかは疑問だ」として、「赦免権は大統領の固有権限だが、責任も全て大統領が負わなければならない」と述べた。
こうした中、与党では8・15光復節を契機に、李元大統領を含めサムスン電子のイ・ジェヨン副会長など財閥トップや、昨年7月に懲役2年刑を受けたキム・ギョンス元慶南知事を含む大規模な赦免が行われるとみている。
クォン・ソンドン院内代表は同日、CBSのラジオ番組に出演し、「これまで政権1年目には8月15日に大統合赦免を多く行ってきた」と語った。大統領室関係者も「企業に投資を促しておいて、足を引っ張るわけにはいかない。キム元知事(赦免)問題も検討する」と述べた。
与党周辺ではイ・ジェヨン副会長を含め、ロッテグループの辛東彬(シン・ドンビン、重光昭夫)副会長、プヨングループのイ・ジュングン会長、泰光グループのイ・ホジン前会長などが特別赦免と復権の対象に取りざたされている。国政壟断事件で2年6カ月の実刑が確定(2021年1月)したイ・ジェヨン副会長と、数百億ウォン台の横領や背任などの疑いで2年6カ月の実刑が確定(2020年8月)したイ・ジュングン会長は、昨年8月に仮釈放された状態だ。特別赦免を受ければ刑執行が免除され、復権までなされれば「5年間就職制限」規定の適用を受けるイ副会長などは経営に復帰できる。シン会長も国政壟断事件当時、贈賄疑惑を受け、最高裁で懲役2年6月執行猶予4年刑が確定した。
これについて、政治評論家のパク・サンビョン氏は「これまで国民統合を名分に大々的な赦免を多く行ってきたため、予見されていた」としながらも、「罪を犯したなら当然代償を払わなければならないのに、憲法精神と法治主義を強調してきた尹大統領が赦免を語るのはつじつまが合わない」と批判した。一方、龍仁大学のチェ・チャンリョル教授は「赦免が最小限の統合の象徴的措置になりうる」として、「企業家も経済に多くの影響を及ぼすため、今赦免を行うのは悪い措置ではない」と述べた。