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韓国の新旧権力、「人事権と赦免」めぐり正面衝突

登録:2022-03-17 05:45 修正:2022-03-17 07:42
ニュース分析 
4時間前に取り消し、前例のない事態 
具体的説明もなく「実務協議が不十分」 
韓銀総裁など、後任人事が試験台に
大統領府の全景=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 文在寅大統領と尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領の初会合が、16日午前の会合を4時間後に控えて突然取り消しになった。大統領と大統領当選者の会合が当日中止になったのは初めて。尹氏が公式に提起した李明博(イ・ミョンバク)元大統領の赦免と韓国銀行総裁の任命など人事権をめぐる隔たりを埋めることができなかった結果とみられる。政権交代期の新旧政権が真っ向から衝突し、しばらく両者の緊張関係が続く見通しだ。

人事権と赦免をめぐる対立で会合が取り消しに

 尹次期大統領側のキム・ウンヘ報道担当は16日午前の定例会見で、「今日予定されていた文大統領と尹次期大統領の会合は実務的協議が終わらず、改めて日程を決めることにした」とし、「実務者レベルの協議は引き続き進めていく予定」だと述べた。パク・キョンミ大統領府報道官も同時刻、同じ内容の書面ブリーフィング資料を出し、取り消しの事実を確認した。両者は発表文案と時間を事前に調整したという。双方はどうして当日の会合が中止になったのかについて、具体的な理由は説明しなかった。

 当初、文大統領と尹氏は同日昼、大統領府で同席者なしの昼食会を行う予定だった。

 イ・チョルヒ大統領府政務首席とチャン・ジェウォン次期大統領秘書室長は、前日まで実務協議を行っていた。不穏な気流が流れたのは前日、尹氏側が「李明博元大統領とキム・ギョンス前慶尚南道知事の同時赦免論」を提起してからだ。尹氏の側近である国民の力のクォン・ソンドン議員はラジオに出演し、「文大統領としては、キム・ギョンス前知事を放っておくわけにはいかない。(文大統領が)救ってあげなければならない」とし、「文大統領が李元大統領とキム前知事を一緒に赦免するものとみている。100%だと思う」と述べた。

 大統領府では尹氏側が李明博元大統領の赦免を公開的に圧迫し、キム・ギョンス前知事との「同時赦免論」まで言及したことを受け、「赦免取引をしようというのか」と激昂する声が上がったという。同時に大統領府は、尹氏側が1年以上任期を残しているキム・オス検察総長に事実上辞任するよう圧力をかけると共に、文在寅政権の公共機関人事を問題視し、事前協議を要求するなど、大統領の人事権に介入していると判断したものとみられる。両者は今月31日に任期が終了するイ・ジュヨル韓国銀行総裁の後任任命権をめぐっても意見の相違があったという。大統領府は大統領任期中の任命権行使は当然だという立場である一方、尹氏側は次期政権が任命すべきだと主張している。

 これに先立ち、尹氏側は現政権の公共機関の人事をめぐり、「必ず必要な人物の場合は共に協議し、そうでない場合、(政府の)業務の引き継ぎが円滑に進められるよう要請しておいた」(キム・ウンヘ報道担当)とし、事前協議を要求した。これに対し、大統領府は「5月9日までは文在寅政権の任期であり、任期内に与えられた人事権を行使するのは当然だ」とし、協議要請に応じる意向はないと反論するなど、衝突局面が展開された。

 チャン・ジェウォン次期大統領秘書室長はソウル通義洞(トンウィドン)の引き継ぎ委員会事務室前で記者団に対し、「実務協議を行うのに時間がかかると考え、自然に(延期する方向で)調整した」と述べた。与党関係者は本紙の取材に対し、「今回の会談の性格はお祝いと徳談だ。文大統領も、次期大統領が胸襟を開いて何でも話せば良いとして、二人が単独で面会をすることにしたが、突然人事や赦免、補正予算などが議題化されてしまった」とし、「議題は結論を出さなければならないが、双方が困る可能性があるため、中止になったものと理解している」と述べた。

「民情首席室の廃止」めぐる論議などで神経戦続く

 引き継ぎ委の主要関係者は、「会合の議題を調整する過程で時間がさらに必要になるかもしれないが、4時間前に取り消しになるのは望ましくはない」と述べた。政界では、両者が機先を制するため神経戦を繰り広げているという見方もある。尹氏側の人事権要求などが行き過ぎだと判断した大統領府が会合を突然取り消すことで対抗したというのだ。

 これに先立ち、双方は尹氏の民情首席室廃止の発表をめぐって神経戦を繰り広げた。尹氏は14日、大統領職引き継ぎ委員会の初顔合わせで、大統領府民政首席室廃止の意思を明らかにし、「国民の身の上調査や裏調査のような残滓を清算する」と述べた。これに対し、大統領府は「現政権が行っていないことを民情首席室廃止の根拠にされては困る」と不快感を露わにした。

 双方は会合の時期について、「もう少し時間が必要だ」という立場だけを示している。文大統領と尹氏がしばらく冷却期を置く可能性が高い。

 この場合、政府の引き継ぎ過程にも支障は避けられない。31日で任期が切れる韓国銀行総裁の後任人事が最初の試験台になるものとみられる。大統領府は「人事に必要な実務準備はしている」という原則的立場を示している。文大統領の任期が2カ月ほど残っている状況で、新旧権力の対立は大統領選挙で浮き彫りになった陣営間の対立を激化させ、尹氏の任期初めの国政運営の動力にも影響を及ぼしかねないという指摘もある。

キム・ミナ、イ・ワン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/1035144.html?_fr=mt1韓国語原文入力:2022-03-17 02:32
訳H.J

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