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「極右保守化」いかに止めるかを問うなら【寄稿】

登録:2025-04-17 01:49 修正:2025-04-17 03:36
大統領の弾劾を求めるろうそく集会の様相がペンライトの波に変わってから、おかしなことが起こりはじめた。「労組のベストを着て食堂で食事をした時、勘定を済まそうとしたら、他の誰かがすでに私の分まで払っていた」、「労組のベストを着て地下鉄に乗っていたら、ある男が席を譲ってくれた。座って帰ってきたけど、涙が出そうになった」 
 
ハ・ジョンガン|聖公会大学労働アカデミー主任教授
1月13日午後7時ごろ、ソウル中区のハンファ本社前で行われた民主労総全国金属労働組合巨済統営固城造船下請け支会(造船下請け支会)の闘争文化祭。旗がなびく中、参加する市民と労組員=キム・ヘジョン記者//ハンギョレ新聞社

 最も勤勉で誠実なことで知られる労働組合の幹部がいる。明け方に出勤する非正規の組合員が多いため、朝5時から学習会をしなければならないことがよくある。最近、労働組合のベストを着て国会に入ろうとしたら制止された。入口で複数の警察官に「どこに行くのか。約束はしてあるのか」と根掘り葉掘り聞かれ、「尹錫悦(ユン・ソクヨル)の内乱も防げなかった連中が善良な市民に無礼な!」と怒鳴りつけてやりたかったが、実際には丁寧に説明して入館したという。

 地方にある比較的規模の大きな企業で労組を結成するために、出向いて数日とどまったことがある。数人の発起人が集まっておこなった労組結成総会では、「うまくいかなければ最後には私たちしか残らないこともありうる」と悲壮な覚悟をした。設立報告大会を経て組合員の加入を募った。その企業が構造調整を控えていたため、現場の反応は熱かった。

 ある日の昼休みに労組のベストを初めて着用することを決議したものの、会社の管理者の顔色をうかがってほとんどは着ることができなかった。わずか数人の女性組合員のうちの2人が、労組のベストを着て食堂に入った。ある男性組合員がその姿を撮って、労組のウェブサイトの掲示板に「組合員のみなさん、何か感じることはありませんか?」という簡単なコメントと共にその写真を投稿した。その日の夕方、労組が用意したベストが足りなくなった。千人を超える組合員が加入したことを聞きながらソウルに戻る列車に乗り込んだ。

 チェ・ギュソクさんのウェブトゥーンを原作としたドラマ「錐」にも、似たようなシーンがある。大規模スーパーで労組を結成し、初めてベストを着用すると決めた日、あるレジ係はカバンの奥に隠して持ってきたベストを、レジの下でこっそり着る。目をぎゅっと閉じたまま勇気を振り絞ってようやく立ち上がり、薄目を開けて周囲を見回すと、組合員が各々ベストを着て働く姿が目に入り、感極まって涙する。息子の労組活動を止めていた病弱な母親とその息子も、ベストを着て向き合う。労働組合が結成される度に起きる出来事だ。

 情報通信企業で労働組合を結成した際、ベストを着るかどうか悩んだ。「団結」、「闘争」などのスローガンの記されたベストは民主労組の象徴ではあるが、社員たちの情緒を考慮すれば、労働組合に近づきにくくさせる要素となりうるからだ。悩んだ末、ベストの代わりにパーカーを着ることにした。組合員を1人でも多く加入させたいという切実な願いが反映された選択だ。その決定を伝え聞いた時、「西洋の人々から見ると、パーカーは韓国のベストと似たような服。映画を見ると、裏通りの犯罪者たちがそういう服をよく着て出てくるだろ」と冗談を言いながら笑い合った。それが何だというのか…。韓国社会の労働組合に対する嫌悪感はそれくらい強い。他国ではなかなか見られない不思議な現象だ。

 大統領の弾劾を求めるろうそく集会の様相がペンライトの波に変わってから、おかしなことが起こりはじめた。「労組のベストを着て食堂で食事をした時、勘定を済まそうとしたら、他の誰かがすでに私の分まで払っていた」、「労組のベストを着て地下鉄に乗っていたら、ある男が席を譲ってくれた。断ったのに『私がしたいからしているのだ』と言って、むりやり私を自分の座っていた席に座らせた。座って帰ってきたけど、涙が出そうになった」

 わずか数カ月前までは想像し難かったことだ。2016年から2017年にかけての朴槿恵(パク・クネ)退陣を求めるろうそく集会では、集会に参加した市民が労働団体の旗さえ掲げさせなかった。司会者がマイクで「そこ、旗を下ろしてください!」と怒鳴りつけさえした。労働団体の旗やスローガンがまるで集会の純粋さを侵害するかのように考える人々が多かった。

 社会が次第に極右保守化しつつあることに対する懸念は強い。先日、ある高校で「青少年の未来を準備する人文学、労働者の人権」と題する講義の終了後、ある生徒が質問してきた。「韓国社会は次第に悪い方向へと変化しつつあるように思えます。特に若者の極右保守化は非常に深刻です。いつになれば韓国社会はもう一度よい方向へと変化しはじめるのでしょうか」。私は気障ったらしく答えた。「いつごろになるかは私にもよく分かりません。ですが、私たちがどちらに向かって努力すべきか、その方向性は変わりません。社会的弱者の権利が拡大する方向へと、労働者の権利がより保障される方向へと努力しなければならないという原則は、どんな状況でも変わらないと思います」

 集会現場で民主労総の鉢巻きとペンライトをとりかえっこしようと提案したりもする若者たちこそ、韓国社会の希望の約束だ。

//ハンギョレ新聞社

ハ・ジョンガン|聖公会大学労働アカデミー主任教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1192602.html韓国語原文入力:2025-04-16 08:00
訳D.K

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