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[ニュース分析]アストラゼネカは予防効果5分の1?…中和抗体量と感染予防効果は別

登録:2021-11-25 06:56 修正:2021-11-25 07:48
8月17日午前、ソウル市銅雀区の予防接種センターが設置された舎堂総合体育館で、市民がワクチン接種のために待機している/聯合ニュース
ニュース分析//ハンギョレ新聞社

 韓国内のアストラゼネカ(AZ)ワクチンの接種者の「中和抗体価」(ウイルス感染を中和させ予防効果を誘導する抗体量)が、ファイザーやモデルナの接種者に比べ、それぞれ、5分の1と7分の1にまで下がるという疾病管理庁(疾病庁)国立保健研究院の研究結果が最近公開された。これまで、mRNAワクチンであるモデルナやファイザーのワクチンが、ウイルスベクターワクチンであるAZやヤンセンファーマ(ジョンソン・エンド・ジョンソンの医薬品部門)のものより中和抗体をより多く作りだすという海外での研究結果はあったが、韓国内の接種者を対象にワクチン別の中和抗体価を調査したのは今回が初めて。

 では、韓国内に最初に導入され、約1100万人が接種したAZワクチンは、ファイザーやモデルナに比べ、感染予防効果も5分の1ほどに低下するのだろうか。一部のメディアは、疾病庁の研究結果を基に「ワクチン別の効果と安定性の差が大きく広がった」と報道したが、専門家らは中和抗体の数値だけではワクチンの効果を判断するのは難しいという立場だ。疾病庁と専門家の分析を基に、中和抗体価とワクチンの予防効果の間の関連性と研究結果の意味を探ってみた。

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AZの予防効果はファイザーの5分の1?

 ワクチン別の抗体価の分析が含まれた疾病庁国立保健研究院の「新型コロナワクチン接種者の免疫原性分析の中間結果」は、17日に中央防疫対策本部(防対本)の資料として公開された。防対本は、ブースター接種の間隔を、これまでの完了後6カ月以降から4~5カ月に短縮しようとする根拠の一つとして、この研究資料を提示した。防対本が20~59歳の韓国内の新型コロナワクチン接種群の969人を対象にした「ワクチン別抗体形成および持続能(力)分析結果」によると、接種完了後における最大の中和抗体価は、モデルナが2852と最も高く、ついでAZ・ファイザーの交差接種(2368)、ファイザー(2119)、AZ(392)、ヤンセン1回のみ接種(263)の順だった。この中和抗体価だけを比較してみると、AZはモデルナとファイザーに比べ、それぞれ13%、18%にすぎない。

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中和抗体が5倍高ければ予防効果は5倍という根拠はない

 この研究結果について専門家らは、ワクチン接種後の中和抗体価だけで新型コロナの感染予防効果を判断するのは難しいと説明する。中和抗体は、ワクチンの効果を証明できる多くの根拠のうちのひとつにすぎないため、中和抗体が5倍高いからといって予防効果も5倍高いものではないという指摘だ。

 高麗大学安山病院のチェ・ウォンソク教授(感染内科)は、「中和抗体価が下がれば感染予防効果が一緒に落ちる可能性はあるが、中和抗体価の基準を定めているインフルエンザワクチンとは違い、新型コロナワクチンには「ある程度の水準であれば感染予防は可能だ」という中和抗体の基準はなく、感染予防効果を中和抗体価で代用して語るのは適切ではない」と述べた。たとえば、新型コロナワクチンの中和抗体価の基準が50であれば、抗体価が80でも100以上でも基準を越えているので、予防効果はあるとみなさなければならないということだ。嘉泉大学医学部のチョン・ジェフン教授(予防医学科)も、「抗体が低いからといって感染予防にならないのではなく、効果がある場合もあり、中和抗体価と感染予防効果を直接結びつけることは難しい」とし、「実際にワクチン別の効果の差を証明するには、さらに長い時間のデータが必要だ」と説明した。

 チョン・ウンギョン中央防疫対策本部長(疾病管理庁長)も22日の定例会見で、「抗体価が多少高ければ疾病予防に有利になり得るが、中和抗体価がある程度の数値以上になって初めて予防効果が生じるのか、最低基準値はまだ明らかになったものはなく、(基準を)明確に解釈することは難しい」とし、「ワクチンの種類だけで高齢層のブレークスルー感染についての点を説明するのは難しい。すべてのワクチンは一定期間過ぎればワクチンの効果が減少するため、ブースター接種を勧告している」と明らかにした。

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抗体形成と同様に、感染細胞の増殖阻止も重要

 チェ・ウォンソク教授は、中和抗体価より重要なのは「細胞媒介免疫反応」だという説明も付け加えた。ウイルスに対する免疫反応には、大きく体液性と細胞性免疫に分かれる。抗体を作る体液性免疫(中和抗体価)も重要だが、感染した細胞の増殖を抑制したり殺す役割を果たす細胞性免疫も重要だ。チェ教授は「感染の観点からは体液性免疫が重要だが、感染後は、重症に進行したり死亡することを予防する観点から、ウイルス増殖のスピードには細胞媒介免疫がより重要な役割を果たす」とし、「AZやヤンセンなどのウイルスベクターワクチンの抗体価が比較的低いことは事実だが、これまでの新型コロナの流行では、拡大はしたが重症度が低かったのは、このようなワクチンが役割をうまく果たしてくれたため」だと述べた。チョン・ジェフン教授も「感染予防効果と重症予防効果は別にみなければならない」とし、「感染予防効果が減少しても、新型コロナワクチンの重症患者予防効果が極めて優れているということは否定できない」と強調した。

 これについて防対本は、9月に医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載された論文(新型コロナワクチンのデルタ変異の予防効果)を引用し、ファイザーのワクチンを接種完了した場合、デルタ型ウイルスへの予防効果は88%で、AZ(67%)に比べ高いと明らかにした。しかし、別の英国の論文(新型コロナワクチンのデルタ変異重症化予防効果)では、ファイザーのワクチンとAZワクチンを2回接種した場合、入院・死亡の予防効果はそれぞれ96%、92%と同程度に集計されたと明らかにされたことがある。カナダで発表された論文(「様々な変異の懸念に対する新型コロナワクチンの効果、カナダ」)では、どのワクチンでも1回接種した場合、入院・死亡の予防効果の面ではモデルナが96%と最も高く、AZワクチンが88%でファイザー(78%)より高かった。

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AZのブレークスルー感染率の上昇…ブースター接種後の感染は2人ともファイザー

 ただし、専門家らが「間接的な原因」だと指摘した中和抗体価とは違い、実際に接種者に現れた「ワクチン種類別のブレークスルー感染(突破感染)の割合」は、意味があるとみなす必要がある。16日に防対本が発表した資料によると、ワクチン別のブレークスルー感染(接種を完了した後に感染すること)の割合は、ヤンセンのワクチンが0.35%で最も高く、AZワクチンが0.171%、ファイザーワクチンが0.064%、モデルナワクチンが0.008%だった。ただし、基本の2回接種を終えた後のブースター接種後のブレークスルー感染だと推定された事例の2人は、3回ともファイザーワクチンを接種した30代だと調査された。

 専門家らは、今回の調査が「ブースター接種の必要性を立証する」という点では意味があるとみなした。調査結果によると、最近流行しているデルタ型ウイルスに対する中和抗体価については、ファイザー接種群は接種完了の5カ月後、AZ・交差接種群は接種完了の3カ月後に、抗体価が両方とも半分以上低下した。チェ教授は「B型肝炎やヒトパピローマウイルス(HPV)ではワクチン接種を3回行うことを考慮すると、新型コロナワクチンの基礎接種も3回でなければならないのでは」とし、「最近、ワクチンを保有している多くの国々がブースター接種を実施しているので、韓国も(全国民を対象とする)ブースター接種を積極的に進めていく必要がある」と提言した。今回の調査には60代以上の高齢層は反映されなかったという点について、疾病庁は本紙に「60代以上の年齢層を追加した中和抗体価の研究を今月末までに発表する予定であり、高齢層を対象にしたブースター接種に対する予防効果なども来月末までに発表する計画」だと明らかにした。

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韓国も来年はAZを導入せず

 一方、新型コロナ予防接種対応推進団は、年内にAZワクチン接種を終了し、AZとヤンセンのワクチンの追加購入計画はないと明らかにした状態だ。ホン・ジョンイク予防接種管理チーム長は18日、「AZワクチンを通じて多くの方々が接種を受けられ、十分な予防接種の効果も得られた」としながらも、「ワクチンの特性上、ファイザーでもモデルナでもAZでも、時間の経過にともなう変異ウイルスへの対応についての問題、時間にともなうワクチン効果の減少といった点を考慮してブースター接種を進めていく必要がある」と説明した。

クォン・ジダム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/1020253.html韓国語原文入力:2021-11-22 18:06
訳M.S

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