韓国政府が、南北関係改善と朝鮮半島平和プロセスの動力強化次元で推進する北朝鮮地域個別観光の具体方案を20日初めて公開した。南から北に行く個別観光、第3国経由の個別観光、外国人の南北連係観光の3方式だ。
統一部はこの日、個別観光の概念と必要性、可能な方式、訪朝承認要件、制裁との関連性、身辺安全保障問題などの争点と関連した政府見解を明らかにした。合わせて「個別観光は国連の制裁対象に該当せず、私たちが独自に推進可能な事業」とし「対北朝鮮制裁に該当しないので、セカンダリーボイコットも適用されない」と説明した。「セカンダリーボイコット」とは、制裁対象である北朝鮮の機関や個人と取引した第3国の機関・企業・個人に対する米国の独自制裁だ。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領が14日の年頭記者会見で「今後は朝米対話だけを見守ってはいられない」と述べ、「個別観光は制裁対象ではなく、十分に摸索しうる」と明らかにしたのに続き、主務部署の統一部が内部で検討してきた具体案を公論に付して世論の支持基盤を広げ、北側の呼応を打診している。南側の個別観光推進に対して、北側はまだ公式ないし公開の反応を見せていない。
■なぜ個別観光か?
統一部は「北朝鮮地域個別観光」を「既存の協力事業体を通した団体観光方式ではなく、非営利団体または第3国の旅行会社を通して、個別に北側の招請意思を確認し訪朝承認を受けて北朝鮮を訪問するもの」と明らかにした。“制裁の罠”を避けるために概念が複雑になっている。
統一部は「個別観光」の現実化により、国内の訪朝需要充足▽境界地域経済の活性化▽南北関係改善のための協力空間確保▽新たな観光需要の創出といった効果があることを期待すると明らかにした。
■どんな個別観光が可能なのか?
統一部当局者は、制裁対象でない個別観光の成立要件2点を挙げた。第一に、営利目的の(協力・合作)事業者方式の観光は許されず、第二に「北朝鮮が受容できる方式の観光でなければならない」ということだ。
これを前提に統一部当局者は、「3つの方式が現実的に可能だ」と話した。第一に「南→北への個別観光」、具体的には「離散家族または社会団体の金剛山(クムガンサン)・開城(ケソン)地域訪問」だ。営利を追求しない人道的目的、または社会文化交流レベルの個別訪朝なので、現代峨山(アサン)の開城・金剛山観光事業権を侵害せず、制裁対象でもなく、観光基盤がすでに存在するという点を考慮した構想だ。
第二に、「南→第3国→北への個別観光」、すなわち中国などの第3国の旅行会社の商品を活用して、平壌・陽徳(ヤンドク)・元山葛麻(ウォンサンカルマ)・三池淵(サムジヨン)など北側地域を観光目的で訪問する方式だ。統一部当局者は「中国人40人に韓国人10人を混ぜて入れる形よりは、南側市民だけを対象にする方が現実的だろう」と話し、“韓国人特化商品”の開発を念頭に置いていることを明らかにした。
すでに2018年に20万人、2019年には30万人前後の外国人観光客(中国人が90%)が北朝鮮観光をしたが、韓国人が中国の旅行会社などの観光商品を利用して北朝鮮を訪問するには、北側当局が“査証”(ビザ)を発給しなければならない。いまだに前例がないため、今後解決を要する課題だ。
第三に、第3国の旅行会社の外国人南北連係観光、すなわち「南→北→南への個別観光」方式だ。南北と第3国の旅行会社の商品開発、南北の当局と国連軍司令部の軍事境界線通過行政協力が必要だ。
統一部当局者は「3つの方式のうち、韓国政府が最も希望し優先順位を高く置くのは、南北直接個別観光」と話した。
■制裁対象ではないのか?
統一部は「訪朝時に支払う費用は、宿泊費・食費などの現地実費支給の性格であり、(国連の制裁対象である)「大量の現金」(バルクキャッシュ)の移転とは見られない」と明らかにした。統一部の当局者も「中国など世界各国の観光客が北朝鮮で使う観光経費も制裁を受けていない」と話した。
合わせて、観光客の募集に特定機関や事業体が関与しても「観光客の募集は単純仲介行為であり、北側の団体や個人とは別の機関であり、北側と収益配分もしないので(国連制裁の対象である)協力業者・合作事業に該当しない」と統一部は明らかにした。
■法的手続きは?
北朝鮮地域を個別観光するには、決まった法的手続きを踏まなければならない。南側の市民が北朝鮮を訪問するには「北側の招請意思を確認できる書類」(南北交流協力法施行令12条2項)を確保して、統一部長官の承認を得なければならない。統一部は「『招請意思を確認できる書類』は特定されていないため、多様な形式が可能だろう」と明らかにし、個別観光には「柔軟な訪朝承認」を念頭に置いていることを表わした。
韓国人が中国などの第3国を経由して北朝鮮を訪問するには、北朝鮮当局がビザを発給しなければならない。統一部は「北側のビザ(個別観光査証)は、北朝鮮当局の“入国保証書”であり交流協力法上の“招請意思確認書類”と見ることができる」として「南側の観光客の身辺安全保障を確認する北側との合意書・契約書・特約などが締結された場合、訪朝の承認を検討する予定」と明らかにした。「第3国経由ビザ訪朝」も可能だという話だ。
イ・ジョンソク元統一部長官は「(昨年10月)金正恩・北朝鮮国務委員長が金剛山の南側施設撤去を指示する前に個別観光を積極的に推進していたならば効果が大きかったはずだが、晩時之歎(時期を逸した)感がなくはない」としつつも「韓国政府が別の条件を付けて状況を複雑にせず、大胆で骨太に解決していかなければならない」と話した。