本文に移動

ILO協約めぐる貿易紛争…韓国「努力中」EU「十分ではない」

登録:2019-01-22 07:28 修正:2019-01-22 10:24
解雇者など含まれない「労働者」条項が問題に 
宅配配達員などの労働者性を認めていないと指摘 
「ストによる業務妨害罪の処罰」も改革を要求 
「EU圧迫をテコに政府が解決すべき」
民主労総の組合員たちが昨年10月12日午前、政・労・使代表者会議が開かれるソウル・セムンアン路エスタワー前で行われた「ILO核心協約批准と7大立法課題の年内処理を求める記者会見」でスローガンを叫んでいる=パク・ジョンシク記者//ハンギョレ新聞社

 欧州連合(EU)が韓国政府に提起した労働基本権関連の公式貿易紛争解決の手続きが始まった。2011年7月から発効された韓-EU自由貿易協定(FTA)で、双方は核心協約の批准を約束したが、韓国政府がこれを守っていないというのが主な争点だ。EU側が核心協約に反する韓国の現行法の条項を言及し、協議を強く求めている一方、韓国政府は消極的な態度を示しており、対立が予想される。

 21日午後、ソウル中区(チュング)のあるホテルで、韓国政府とEU代表部は「韓-EU自由貿易協定」貿易と持続可能な発展の章の核心協約批准義務に対する「政府間協議」を開催した。同日、在韓EU代表部大使は「貿易は財貨およびサービスの交換以上に基準と価値を守るという意味だ。これまでの韓国政府の行動は十分ではない」とし、「韓国に国際労働機関の核心協約の国会批准と、労働関係法および行政改革を要求する」と述べた。また、EUは報道資料で「(協議の)結果物に国際労働機関の勧告が反映されなければならない」と明らかにした。これまでEUが求めていた「核心協約の批准に向けた具体的な日程」に加え、「国際労働機関の勧告事項を反映するかどうか」まで協議事項に含まれたのだ。

 EUの要求はかなり具体的だ。昨年12月17日、EUが政府間協議を求めて発表した報道資料で、韓国の現行法のうち問題の条項について言及している。まず、「労働者」を職業の種類を問わず、賃金・給料その他これに準ずる収入により生活する者に規定する労働組合法第2条1項が取り上げられた。韓国の判例上、従属的自営業者や解雇者、失業者などが「労働者」に含まれていないということだ。「労働者ではない者の加入を認めた場合、労働組合と見なさない」と定めた労働組合法第2条4項のラ号も問題視された。法的に「自営業者」である宅配配達員や運転代行ドライバー、学習誌指導教師などの特殊雇用労働者は、労働組合の設立過程で「労働者性」が問題となり、長い間の議論になってきた。

 労働組合の役員資格を在職者に制限した労組法第23条1項と、政府が労働組合設立申告書を差戻しできるよう定めた労働組合法第10条12条も問題になった。EUは、国際労働基準は労働組合の加入・活動・役員の資格を全面的に労働組合の自律に任せるものとしており、労働組合の設立過程で当局の実質的な審査が行われる場合、結社の自由の原則違反だと数回にわたり指摘してきた。さらに、労働者の基本権であるストに刑法上の業務妨害罪を適用して処罰してきた慣行も、改革の対象に挙げられた。これまで裁判所と検察は、ストに刑法を適用し、労働者のスト権を事実上無力化してきたという批判を受けてきた。このようなEU側の要求は、経済社会労働委員会で議論された労働組合法改正水準をはるかに上回る。

 EUが貿易協定で労働基本権をめぐって政府間協議を要請したのは、今回が初めてだ。EUは「政府間協議は、相互の利害関係がかかっているいかなる事案でも、双方の疎通を公式に強化する方法」だとし、韓国の低い労働基本権の水準がEUの利益を侵害している点を明確にした。韓国企業が労働者の権利を侵害する方式で、不公正な利益を得ているということだ。EU内部で韓国に対する圧迫を強めてきた強硬派が、主に通商分野に属する人物たちである点は、示唆するところが大きい。EUは翌日、韓国の労使団体と相次いで懇談会を開く予定だ。今回の協議で満足のいく解決策が得られない場合、韓国とEU、第三国の専門家が6人ずつ参加する「専門家パネル」が招集される予定だ。専門家パネルは勧告報告書を双方に提出し、その後「貿易と持続可能な発展委員会」で履行事項を点検することになる。

 韓国政府の対応は消極的だ。キム・デファン雇用労働部国際協力官は冒頭発言で「核心協約の批准のため経済社会労働委員会で進めている結社の自由協約の批准に関連した社会的対話を支援している」とし、従来の立場を繰り返した。「社会的対話」が韓国政府の「継続的かつ持続的な努力」だということだ。韓国政府は「野党の反対」を理由に、労使合意の他に具体的なロードマップを示していない。

 韓国政府が数回にわたり「社会的対話を通じて核心協約の批准を進めている」と釈明したにもかかわらず、EUが政府間協議の要請を強行したという点で、解決策を見出すのは困難と見られる。ソウル大学雇用福祉法センターのユン・エリム研究委員は、「韓国政府は核心協約の批准と関連し、国際社会に新しく打ち出す対策が全くない状況だ。EUの圧迫をテコに国会や経営界を説得する動きも見られない」と批判した。

 労働界は政府に積極的な取り組みを求めた。リュ・ミギョン民主労総国際局長は「韓国政府は事実上、社会的対話に核心協約の批准の可否を任せ、義務を放棄している。政府がEUにもっと進展した答えを出すことができなければ、自ら約束したものも守れない無責任な国家として残るだろう」と指摘した。

 韓-EU自由貿易協定は、多国間貿易協定では初めて、第13章(貿易と持続可能な発展の章)に双方の労働・環境関連の義務事項を盛り込んだ。双方は、国際労働機関の核心協約と77の最新協約の批准に向けて、持続的に努力しなければならず、自国の労働法を效果的に執行せず貿易と投資に影響を及ぼした場合は、義務違反と見なすという内容だ。

イ・ジヘ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/879237.html韓国語原文入力:2019-01-21 13:27
訳H.J

関連記事