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「戦争中の故郷より、韓国で私はさらに大きく傷つけられた」

登録:2018-06-21 06:47 修正:2018-06-21 07:42
韓国政府は難民に寛大? 現実は正反対 
審査申請・非認定・再申請の繰り返し 
承認まで3~5年「無国籍者人生」 
承認率、実際は3%…放棄する人が多い
済州島に来たイエメン難民たちが今月19日、大韓赤十字社の救護品を受け取っている=ホ・ホジュン記者//ハンギョレ新聞社

 19日、済州(チェジュ)市内のある高校1年生のグループチャットルームに一人の学生が「女性が市役所周辺に行くと、イエメン人に付きまとわれるんだって」といううわさを伝えた。「本当?」、「怖い」、「うちの母も外に出ちゃいけないと言っていた」というチャットが相次いだ。難民に対する嫌悪と恐怖が広がっているのはこのカカオトークのグループチャットだけではない。イエメン難民問題が知られ始めた今月15日から5日間、メンバー数8万6千人を超える済州島ママカフェ(オンラインコミュニティ)には、難民(の受け入れ)に反対し、懸念する書き込みが80以上掲載された。済州道庁のホームページにも19日の1日だけで難民の受け入れ反対に関する書き込みが40以上も掲載された。

 彼らは、おおむね「難民たちに寛大すぎる政府政策」を批判しているが、現実は正反対だ。済州に来たイエメン人の出島(陸地に行くこと)が制限された4月30日以降、他の地方に出たイエメン人は5人だけだ。彼らのうち4人は一家で幼い子どもを連れており、1人は治療が必要な妊婦で、医療支援を受けられるソウル・京畿など首都圏に送られた。彼らが陸地でどのように生活していくかは、すでに韓国に難民申請をした人々の事例をみると、およその予想がつく。

 韓国で難民認定申請をして結果を受けるまでは、通常3~5年がかかる。韓国は、難民認定率が4.1%で、世界平均難民認定率の38%に比べてかなり低いが、審査中に「撤回および取消し」(11.1%)する割合が高いため、実質的な認定率は3%程度と見る専門家たちが多い。非常に長い審査期間や人権侵害、生計困難で韓国を離れる人々も多いからだ。コートジボワールでダンサーとして活動し、2002年に韓国に来たアマンさん(36)は16年間、難民申請者として暮らしている。難民申請が拒否された後、再審と3審を申請し、結果を待っているところだ。同じ時期にドイツに難民申請をした仲間の団員8人はいずれも難民資格を認められ、ドイツで暮らしている。難民キャンプを転々とし、2012年に韓国に来たマティルダの難民審査もまだ“進行中”だ。

 しかも、難民申請を行った後、6カ月間は就労が禁止され、難民らは極貧困層としての生活を余儀なくされる。生計費支援制度があるが、2017年に難民人権センターの調査では、昨年の生計費支給対象者1万3294人中、実際に生計費を支援された難民申請者は436人(3.2%)だけだ。また、一人当たり平均3カ月間10日間、40万ウォン(約4万円)ほどを受け取ったことが調査で確認された。『私たちの隣りの難民』の著者キム・ギョンラン人権政策研究所理事長は「難民申請者として韓国で生活する人たちは外国人労働者保護法すら適用されず、不当労働行為の犠牲者になりやすい。子どもを産んでも出生登録ができないため、親子2代にわたって無国籍者として生きていくしかない」と伝えた。

今月19日、済州島の難民関連機関が合同記者会見を開き、イエメン難民に対する保護と支援対策を発表している=ホ・ホジュン記者//ハンギョレ新聞社

 他の国で似たような事例を見つけられないほど、韓国の難民審査の壁が長く高い理由は、何よりも政策の不在にある。専門家たちは難民審査機構と審査官が絶対的に足りないことを問題に挙げている。難民審査を担当する出入国・外国人庁は全国に計10カ所、審査官は39人だけだ。イエメン難民問題が浮き彫りになってから、済州の出入国・外国人庁では2人の審査官が500人以上の難民を審査していることが分かった。

 公益人権法人「共感」のパク・ヨンア弁護士は「難民申請者の滞積が20年以上指摘されてきたが、これまで政府は関連予算や施設を増やすよりは難民申請者の選別に集中してきた」と批判した。難民人権センターのキム・ヨンジュ弁護士は「今年5月、少数民族とトルコを経由し、難民申請をした中国のウイグル人2人が入国拒否された。同じ時期にイエメン人11人も観光目的が疑われるという理由で経由国に送還された。韓国政府が恣意的解釈によって難民を強制送還しているのではないかを検証しなければならない」と主張した。済州出入国・外国人庁の関係者は「彼らは外形的に難民の可能性が全くない人たちであり、送還ではなく、入国不許可」だと釈明したが、不許可の事由は明らかにしなかった。

 約700人の内1人の割合で認められるという難民審査を通過しても、韓国で暮らすことは容易ではない。多くの難民たちは言語の壁やイスラムなどの他の文化に対する嫌悪、人種差別などを、韓国社会で生きにくい要因として挙げている。キム・ヒョンミ延世大学文化人類学科教授は「ある難民申請者は『本国で政治的迫害を受ける時よりも、韓国に来てから、さらに大きく傷つけられた』と話した。難民に対する韓国社会の態度をよく表す言葉だ」と指摘した。

ナム・ウンジュ、ホ・ホジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/area/849983.html韓国語原文入力:2018-06-21 05:00
訳H.J

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