文在寅(ムン・ジェイン)大統領がドナルド・トランプ米大統領と会談し、韓米同盟強化案に合意したのは、成果として評価されているが、トランプ大統領が防衛費分担金の増額を示唆したのは、来年から行われる韓米防衛費の交渉における重荷となると見られる。
■「条件」に基づいた戦時作戦統制権の移管
両国首脳は先月30日に発表された共同声明で、「条件に基づいた韓国軍への戦作権(戦時作戦統制権)移管が早急に行われるよう、(韓米)同盟レベルの協力を持続していくことにした」と明らかにした。これは、朴槿恵(パク・クネ)政権時代の2014年10月、韓米安保協議会議(SCM)で合意した基本枠組みを維持しながらも、転換時期を繰り上げる案を模索していくことを意味するものと見られる。当時、韓米は米軍が行使している戦作権の移管時期を明示しなかった。代わりに、韓国軍の連合作戦主導能力や北朝鮮の核・ミサイル脅威への対応能力、周辺の安保環境など、3つの「条件」が満たされれば移管することにした。いわゆる「条件に基づいた戦作権の移管」だ。
今回の両国首脳の合意は、韓米がこれらの「条件」を早期に満たし、戦作権の移管時期を繰り上げる案といえる。共同声明で韓国は「連合防衛を主導するのに必要な核心的な軍事能力や北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対抗するためのキルチェーン、韓国型ミサイル防衛(KAMD)などの探知・撹乱・破壊・防御能力を引き続き獲得していく」と強調した。
今回の両国首脳の「早急な戦作権移管」の合意で、任期内に戦作権の移管を推進すると明らかにしていた文大統領は、公約履行の第一ハードルを乗り越えた。しかし、実際、任期内の移管までは「一難去ってまた一難」の過程になるとみられる。韓米軍事当局間の具体的な協議も残っており、朝鮮半島の安保環境も予期せぬ影響を及ぼす可能性があるためだ。
■外交・国防長官会議の定例化
両国首脳はまた、今回の会談で「韓米相互防衛条約に基づいた強力な連合防衛態勢」と米国による「拡大抑止の提供」の公約を再確認した。トランプ大統領はこれと関連し、「通常兵器や核能力を含め、あらゆる範囲の軍事的能力を活用して」(拡大抑止を)提供すると明らかにした。両国首脳は、このような韓米同盟の強化を実質的に保障するため、これまで稼動されてきた両国の国防長官の協議体である韓米安保協議会議(SCM)と両国の合同参謀本部議長の協議体である韓米軍事委員会会議(MCM)などの役割も再確認した。また、両国外交・国防(2+2)長官会議と高官級の拡大抑止戦略協議体(EDSCG)の定例化も指示した。
■トランプ大統領、防衛費分担金交渉に向けた“布石”
会談から7時間後に発表された両国首脳の共同声明には、防衛費分担金が言及されておらず、会談で正式議題として取り上げられなかったものと見られる。しかし、トランプ大統領は会談直後のマスコミ発表の際、「在韓米軍の駐留費用が公正に分担されるようにする」とし、「駐留費用の分担は非常に重要な要素があり、今後はより重要になるだろう。特に、現政権ではそうだ」と明らかにした。トランプ大統領は、大統領選挙候補時代から同盟国の防衛費分担金の増額を要求してきており、今年4月にはツイッターを通じて、在韓米軍のTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備と関連し、THAADに10億ドルがかかるとしたうえで、「韓国が金を出すのが適切だ」と明らかにした。
文大統領はその後、米上院軍事委員長を務めているジョン・マケイン議員に会い、平沢(ピョンテク)米軍基地造成関連の費用として韓国が100億ドルを負担しており、米国の同盟国のうち韓国が国内総生産(GDP)に比べ最も高い比率の国防費を支出していると共に、米国からの兵器輸入額が高い国であると指摘した。文大統領は、在韓米軍の駐留防衛費分担をめぐる議論の際、マケイン議員がこれをよく説明してくれることを望んでいると述べた。
韓国が在韓米軍に出している今年の防衛費分担金は9507億ウォン(約930億円)だ。この金額は2014年韓米間の合意によるもので、2019年からは新たに合意された分担金を拠出しなければならない。トランプ大統領の今回の発言は来年の本格的な交渉に向けた地ならし作業と言える。