朴槿恵(パク・クネ)大統領が韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結とTHAAD(高高度防衛ミサイル)の配備はもちろん、歴史教科書国定化など、主要国家政策を電撃的に推し進めている。国民的信頼と権威を完全に失った"植物状態の大統領"が国家の未来を左右する政策にアクセルを踏み込んでいるのだ。支持層を結集させ権力の崩壊を防ぎ、少なくとも来年上半期まではその座を維持しようとする政治的考慮によるものとみられる。
国防部が突然、韓日軍事情報包括保護協定を再推進する方針を明らかにしたのは、10月27日だった。同日、検察は「朴槿恵・チェ・スンシルゲート」捜査のための特別捜査本部を設置し、2日前の10月25日、朴大統領は「一部の演説文と広報物を(チェ・スンシル氏に)手伝ってもらったことがある」として国民に謝罪した。「朴槿恵・チェスンシルゲート」の影響で、朴大統領の支持率が就任後初めて10%台(リアルメーターが10月26日に発表、17.5%)に落ち込んだ翌日、4年前に世論の反対で白紙に戻った韓日軍事情報包括保護協定(の締結方針を)を突然打ち出したのだ。
10月14日まで、韓日軍事情報包括保護協定の再推進は政府の計画に全くなかった。同日に行われた国会の国防部国政監査でも、主務長官であるハン・ミング国防長官は「韓日軍事情報包括保護協定を推進していく上で、十分な条件を整える必要がある」と明らかにした。国民の党のキム・ドンチョル議員が「国民の同意がある時に推進するという意味なのか」と繰り返し問いただすと、「そうだ。多くの人たちが支持するとか、そのようなことがなければならないと思っている」と答弁した。
今月14日に韓日軍事情報包括保護協定の仮署名が強行されたのに続き、16日にはTHAAD(配備に向けた敷地交換のニュース)が飛び出した。国防部は同日、THAAD配備に向けて慶尚北道星州(ソンジュ)のロッテゴルフ場と京畿道南楊州(ナムヤンジュ)の軍部隊の敷地を交換する敷地交換に合意したと発表した。国防部当局者は同日、記者懇談会で「ロッテ側との敷地交換を、今年末か来年初めには完了し、THAADは予定通り来年までに配備を完了する方針」だとして、従来の立場を再確認した。
このような動きには、朴槿恵・チェスンシルゲートで退陣を迫られている朴大統領が、既存の政策を正常に進めているというメッセージを発信することで、否定的なイメージを少しでも払しょくして退陣の圧力を和らげようとする意図によるものと見られる。さらに、来年のドナルド・トランプ行政部発足以前にTHAAD配備を既成事実化しようとする米軍当局の意図に合致する側面も大きい。
政府は、歴史教科書の国定化もこれまで通り進めている。朴大統領は就任初年度の2013年6月17日、「教育現場の歴史歪曲を黙過できない」と宣言したのに続き、2014年2月13日には教育部に歴史教科書制度の改善を指示し、事実上、国定化への方向転換を示した。昨年10月21日、教育部は国定韓国史教科書の発行計画を公式発表した。
問題は「チェ・スンシル国政壟断」事件と歴史教科書の国定化が無縁ではないということにある。歴史教科書の国定化を決定した当時、大統領府教育文化首席秘書官だったキム・サンリュル氏は、チェ・スンシル氏の最側近であるチャ・ウンテク氏の母方の叔父に当たる。朴大統領は昨年11月「誤った歴史を学べば魂に異常をきたしかねない」と述べた。このため、全国102の大学の歴史関連学科の教授らと全国の歴史教師、教育監、市民社会団体はもちろん、野党3党も国定化の撤回を求めているが、政府はこれまで通り国定教科書の発行を推し進めている。
歴史教科書の国定化問題めぐる議論が白熱すれば、朴大統領の支持層の結集と反朴槿恵勢力の攪乱につながる可能性も高くなる。2014~2015年に歴史教科書の国定化をめぐり議論になった際、「現在の中高校歴史教科書は『反大韓民国史観』に基づいて書かれている」として国定化を後押ししていた金武星(キム・ムソン)当時セヌリ党代表は、今や朴大統領の弾劾を主張している。