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「党委員長」は金正恩唯一領導を強調する苦肉の策

登録:2016-05-10 08:14 修正:2016-05-10 08:34
9日、平壌4・25文化会館で開かれた第7回労働党大会で、金正恩第1書記が壇上に座っている様子。金第1書記は同日、新たな呼称の党委員長に推戴された=AP・連合ニュース

唯一無二の指導者を想起させ
党中央委委員長でなく「党委員長」
金正日も「党総書記」の名称選択
中国では「党中央委総書記」が最高位

「永遠の主席」「永遠の総書記」献呈
祖父・父の役職を避ける苦肉の策

 朝鮮労働党第7回大会が金正恩(キムジョンウン)労働党第1書記を党最高位として推戴した「朝鮮労働党委員長」(党委員長)は、集団指導体制を根幹とする他の社会主義国家の“唯一党”には存在しない職責だ。朝鮮労働党の職制にもなく、金第1書記の祖父、金日成(キムイルソン)主席と父の金正日(キムジョンイル)総書記も就いたことがない職責だ。したがい今回の党大会を通じて党最高位という意味を込め、新たに作られた職責である。

 いかなる位相と含意を持つ職責なのか。党が国家を率いる党・国家体制の社会主義国家における唯一党においては、一般的に党中央委員会が最高指導部を構成し、党中央委員会委員長が集合の指導のリーダーを務めている。党中央委員会のような集団指導部を「一元的集団指導体制」と呼ぶのはこのためだ。党中央委委員長よりも権力集中度が高い職責が党中央委総書記だ。中国の最高指導者の習近平・国家主席の党職は中国共産党中央委員会総書記だ。

 金正恩第1書記が新たに就いた職責が党委員長である理由は、金日成→金正日→金正恩の3代にわたる“1人体制”で国を率いてきた北朝鮮権力の歴史的変遷と無縁ではない。さらに、今回の党大会で金正恩第1書記の“唯一領導”を強調してきたことを考慮しなければならない。

 歴史を振り返ると、金日成主席は、1966年10月の第2回党代表者会議で党中央委総書記に就くまで党中央委委員長を務めた。金日成唯一体制の確立・強化により、党中央委総書記を経て1972年の憲法改正後、国家主席に就いた。金正日総書記は1997年に金日成主席を「永遠の主席」に擁して国家主席職を廃止した。現行の北朝鮮憲法の序文は金日成主席を永遠の主席と明記している。

 金正日総書記は1997年に党総書記職に就いた。注意すべき点は、中国共産党の党中央委総書記ではなく、単に党総書記である事実。北朝鮮の唯一無二の最高指導者である金総書記に、集団指導体制の指導者の党中央委総書記が相応しくないとの判断による名称調整と解釈される。北朝鮮は2012年の改正労働党規約に金正日を「永遠の総書記」と明記した。

 金正恩第1書記が新たに就いた党委員長も、同様に理解することができる。「金正恩同志の唯一領導」(党大会決定書)という趣旨に相応しく党中央委委員長ではなく、党委員長ということだ。

 政府関係者は「党委員長という他の社会主義国家にない奇妙な職責は、金正恩第1書記が祖父(金日成)と父(金正日)に献呈した主席、総書記、国防委員長の職を避け、『唯一無二の最高指導者』であることを強調するための苦肉の策であり、勝手に設けた役職」と批判した。

イ・ジェフン、キム・ジンチョル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-05-10 00:32

https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/743133.html 訳Y.B

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