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[書評]政治で闘おうという「街頭のクォン弁護士」

登録:2016-03-22 06:33 修正:2016-03-22 08:08

『正義を捨てて―龍山の望桜から韓門の花壇まで
街頭の弁護士』
クォン・ヨングク著/ブックコンマ発行

『正義を捨てて―龍山の望桜から韓門の花壇まで 街頭の弁護士』//ハンギョレ新聞社

 ギリシア神話に登場する法と正義の女神ディケ(アストライア)は、両目を覆ったまま右手には刀、左手には秤を持っている。 秤は公平さを、刀は決然さを、目隠しは偏見や先入観を持たないという意味だとされる。 もしそのディケから秤と目隠しを取ってしまったなら? クォン・ヨングク弁護士が法という名の偽りの正義を捨てて現実政治に跳びこんだ理由である。

 彼は2014年11月13日、即ち大法院(最高裁)が双龍(サンヨン)自動車の会計操作整理解雇事件で労働者側が勝訴した原審を破棄し、使用者側に軍配を上げた日、また、同年12月19日、即ち憲法裁判所が統合進歩党解散決定を下した日、思い知らされた。「判決を通して世の中を変えてみようといった未練のようなものが残っているなら、もうきっぱり捨てよう。 (中略)傾いた運動場を変えない限り、法と制度は既得権秩序を擁護する機構として作用するだけで、誤った現実を是正する装置にはなり得ない」

 『正義を捨てて』には、鉱夫の息子に生まれ科学者の夢を育んでいた筆者が「街頭の弁護士」となったいきさつと40年の人生の痕跡が盛られている。 韓国非正規労働センターのイ・ナムシン所長と「ジャン・グレ(非正社員問題を扱ったドラマの主人公の名)を生かす運動本部」のユン・ジヨン弁護士との対談で彼は、大学生時代の血を流している現実との出会い、工場労働者として働きながら経験した労働組合の闘いと解雇、3年6カ月の獄中生活、保安司の査察対象となり就職が制限された状況で司法試験を準備することになった過程といくつかの事件について、率直に語る。 何よりも、彼がスペインの「ポデモス」やドイツの「海賊党」のような方式で「構成員が意思決定に直接参加して自らの意思を反映させる直接民主主義を強化しようという趣旨」で「市民革命党推進委員会」を発足させた過程、オンライン政治プラットホーム「動こう!」を通して市民の意思と力を結集しようとする考えなど、独特の政治哲学がおもしろい。 彼は先月20日、「4月の第20代総選挙で龍山の惨事での殺人鎮圧の主犯キム・ソッキ(前ソウル警察庁長)セヌリ党予備候補を落選させるために慶州(キョンジュ)に行く」として無所属出馬を宣言した。

チョン・サンヨン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-03-10 20:22

https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/734399.html訳A.K

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