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[ニュース分析なぜ?] 集会妨害者‘大漢門大統領’はどのように昇進したか?

登録:2014-01-25 15:13 修正:2014-01-27 08:02
‘大漢門大統領’チェ・ソンヨンの昇進
昨年12月17日午後、ソウル中区 貞洞(チョンドン)の貞洞ビルディングにある民主労総事務室に入ろうとしていたソウル南大門(ナムデムン)警察署チェ・ソンヨン警備課長が民主労総組合員に追い出されている。 この日は鉄道労組執行部に対する強制拘留の便りが伝えられた日だった。 リュ・ウジョン記者 wjryu@hani.co.kr

▲‘大漢門大統領’という言葉を聞いたことがありますか? チェ・ソンヨン南大門(ナムデムン)警察署警備課長に市民が付けたニックネームです。 ソウル大漢門前で開かれる集会にはいつもこの方が引き受けて管理してきましたよ。 今回の警察人事で総警に昇進しましたが、これについて話がたくさんあります。 なぜ市民はこの方の昇進を快く思わないのでしょうか。 <ハンギョレ>が論難を起こしているチェ・ソンヨン警備課長の行跡を探ってみました。

 去る14日午前11時、ソウル貞洞(チョンドン)の貞洞民主労総建物入口。 制服姿の義務警察部隊が建物の出入口を取り囲んだ。 ストライキを行った鉄道労組幹部が警察署に自主的に出頭するという便りが知らされた。 現場指揮はチェ・ソンヨン南大門(ナムデムン)警察署警備課長が受け持っていた。 緊張感が漲った。

 チュ・ポンヒ民主労総副委員長が建物の前でチェ課長とぎこちない挨拶を交わした。 「あなたは我々のおかえで今回進級したのだから、下の若い人たち(義務警察官)に少しはよくしてやれよ。」チェ課長はニヤリと笑っただけで何も答えなかった。 先月22日、チェ・ソンヨン警備課長は押収捜索令状も持たずに民主労総建物に警察力を投入し鉄道労組幹部の逮捕を試み論難が起きた。

 しばらくすると、キム・ミョンファン鉄道労組委員長と民主労総組合員たちが建物前に出てきた。 建物の外で待機していた義務警察がキム・ミョンファン委員長側に少しずつ動き始めた。 マイクを持ったある男性が緊迫した声で叫んだ。 「警察に警告します。 ここは合法的に集会申告した場所です。警察は離れてください。」

総警昇進に反発した市民団体の批判声明

 チェ・ソンヨン警備課長が独り言を言った。 「待てよ。ここの集会申告で何人が参加すると言った?」 付近に待機していた警察バスに走って行った。続いて彼の声がバスのスピーカーから流れた。

 "皆さんは申告した人員30人より多く集まっています。 集会および示威に関する法律に違反しており、南大門(ナムデムン)警察署長の命により警備課長が1次解散命令を発します。" 集会申告人員より20人余り多く集まったからと集会を禁止させるのは、南大門警察署だけだ。 キム・ミョンファン委員長と集まっていた50人余りの労組員の表情がゆがんだ。 鉄道労組幹部は挨拶を終わらせた後、10m余り歩いてパトカーに自発的に乗り込む予定だった。 チェ警備課長はこれを許さなかった。 11時25分頃、彼は緊迫した声で「52,54(義務警察中隊)入れ」と指示した。 機動警察が労組員の間に食い込んだ。 あちこちで悲鳴が上がり現場は修羅場になった。

 マイクを持ったある男性が「警察の不法な集会場乱入により今日計画したすべての日程を取り消します」と叫んだ。 鉄道労組は警察への自主出頭を一時的に延期し、キム委員長らは再び建物内に入った。 チェ・ソンヨン警備課長はその場を離れなかった。 鉄道労組幹部11人は午後5時頃、建物外に出てきて外で待機中だった警察の乗合車5台に分乗し警察署に向かった。

 この日はチェ警備課長が南大門警察署で最後に現場指揮する日だった。 去る数年間、ソウル都心の重要警備業務を務めて多くの論難を起こした警備課長の最後の業務だったが、そのことを知っていた人は多くなかった。

 チェ・ソンヨン(50・警正)警備課長は10日、警察庁人事で総警への昇進対象として発表された。 今や彼は一線警察署の署長になれる資格を得た。 南大門署警備課長の業務も先週で終えられた。

 東国(トングク)大警察行政学科を卒業した彼は、1992年警察任用試験に合格して一線警察署で広範な業務で勤務してきた。 2006年に警正に昇進し、江原(カンウォン)地方警察庁東海警察署生活安全課長を務め、2008~2010年ソウル地方警察庁1機動団副団長を務めた。 2008年ソウル都心で大規模ろうそく集会が繰り広げられた時、戦闘警察部隊を直接指揮した。2010年2月1日ソウル地方警察庁中部警察署警備課長として赴任した後、2011年1月14日から最近まで南大門警察署警備課長として仕事をしてきた。

 チェ・ソンヨン警備課長の総警昇進の便りが知らされるや、その間ソウル都心で警察の公権力乱用と集会の自由縮小を憂慮してきた市民団体は声明を出し、警察の決定を強く批判した。

 ‘民主社会のための弁護士会’労働委員会と金属労組双龍(サンヨン)自動車支部などは10日に出した声明書で「南大門の‘アドルフ・アイヒマン’(第2次世界大戦当時ユダヤ人虐殺の実務責任者)であるチェ・ソンヨン警備課長を総警に昇進させながら、朴槿恵(パク・クネ)政権が‘憲法と法律を根拠に公権力を執行せず、ただ政権の話だけをよく聞けば昇進させる’方針を宣言した」と批判した。

 一線警察署警備課長の昇進に対し市民団体が公開的に声明まで出して批判したことは異例だ。 チェ・ソンヨン警備課長が批判を受けるのは、彼の去る数年間の問題行跡のためだ。 たとえソウル都心警備責任者だとしても我が国の社会が合理的に獲得してきた集会関連常識と法律的判断をチェ警備課長が自ら押し倒してきたという批判を受けている。

 例を挙げればこのようなケースだ。 大漢門前で何人かの市民が双龍車解雇者の復職を祈るロウソクを持って立っている。 それが‘社会的安寧’を害しなくとも、未申告集会だという理由で強制解散させる。 南大門警察署は昨年大漢門前での集会申告を受け付けない時が多かった。 集会および示威に関する法律(集示法)は、集会を許可制ではなく申告制だと釘を刺しているものの、南大門警察署にはこの法律が通じない時が多い。

 裁判所(ソウル行政裁判所行政6部)は先月6日‘大漢門前での集会を禁止したことは違法だ’と判決した。 裁判所は‘憲法が保障した集会の自由は、自分が計画した集会を誰もがどこで行うかを原則的に自由に決定できてこそ初めて保障される’と明らかにした。 しかしチェ・ソンヨン警備課長は現在まで何の説明もしていない。

"警備課長が解散命令を発します"
申告人員より20人多いからと
鉄道労組幹部の自主出頭集会を
警察力投じて解散させたチェ・ソンヨン
これが彼の最後の業務であった

南大門の‘アドルフ・アイヒマン’
‘大漢門大統領’のニックネームのように
裁判所が認めた大漢門集会まで
はばかることなく公権力を前面に掲げ妨害
その功績が認められ総警に昇進したのか

市民たちが彼を現行犯で逮捕することを試みたのも

 チェ・ソンヨン警備課長が集会を解散させたり双龍(サンヨン)車犠牲者焼香所の物品などを押収する時にいつも持ち出した法的根拠は‘即時強制行政執行’条項だった。 市民が‘押収根拠は何か’と抗議すれば、チェ警備課長が口癖のように言った説明だった。 焼香所のロウソク、茶碗、遺影、座布団、テントなどを押収する時にも全く同じ説明をした。

 これは警察官職務執行法6条1項に従ったものだが、この法は‘犯罪行為によって身体に危害を及ぼしたり財産に重大な損害を及ぼす恐れがあり緊急を要する場合、その行為を制止できる’とされている。 明らかにこの法は非常に厳格な条件下でのみ警察が市民の行為を制止できるよう制限しているが、チェ警備課長はこのような事実を市民に説明したことがない。

 市民が何の行動もせずに単純に集まっているだけの場合には、集会解散命令を発動し難い。このような時にチェ警備課長が持ち出す論理は‘保護措置’または‘危険発生防止措置’であった。

 彼は警察官職務執行法上の‘保護・防止措置’と説明して、義務警察官らに市民の四肢を強制的に持ち上げ他所に移すよう命令してきた。 一見すると不法強制連行のように映るが、すぐ近くに再び置くので必ずしもそうでない。

 警察官職務執行法4条(保護措置)は‘警察は怪しい挙動、その他の周囲の事情を合理的に判断し応急救護を要すると信じるに足る相当な理由がある者を発見した時は、適当な措置ができる’とされている。 警察官職務執行法5条(危険発生防止)は‘警察官は人命または身体に危害を及ぼしたり、財産に重大な損害を及ぼす恐れがある天災、事変、工作物の損壊、交通事故、その他の危険な事態がある時には危害を受ける恐れのある者を必要な限度内で抑留したり避難させることができる’と規定している。

 法の内容をよく調べれば、該当条項は‘応急救護が必要な人や、危険な状況に置かれた人を警察が助けることができる’という趣旨であって、集まっている人々を強制解散させるために用意された条項ではない。

チェ・ソンヨン ソウル南大門警察署警備課長が去る6日、ソウル広場でスローガンを叫んだ双龍車解雇労働者イ・チャングン氏の口をふさぎ顔を押し退けた。

 警察官職務執行法1条は‘警察官の職権はその職務遂行に必要な最小限度内で行使されなければならず、これを乱用してはならない’と規定している。 チェ・ソンヨン警備課長が見せた勤務方式は、警察官職務執行法1条違反の可能性が濃厚だ。

 このように公権力乱用論難が数年間続くと、市民はチェ・ソンヨン警備課長に‘大漢門大統領’というニックネームを付けた。 ソウル都心で公権力が法律を無視し、絶対的な権力を行使しているという批判的含意が含まれている。

 見るに耐えない市民たちは警備作戦を展開したチェ・ソンヨン警備課長を現行犯で逮捕しようと試みたこともある。昨年7月25日、民主社会のための弁護士会(民弁)は大漢門前で‘集会の自由を勝ち取るための市民キャンペーン’という名の集会を開こうとしたが、チェ・ソンヨン課長の制止を受けた。 合法的申告をした集会だったが、チェ課長は‘集会参加者の一部が申告された集会場所の外に垂れ幕を突き出しているため不法集会’という論理を展開した。

 民主弁護士会クォン・ヨングク弁護士らは、チェ課長が集会を妨害した現行犯だとし、市民たちと共にこの日チェ・ソンヨン警備課長を逮捕した。 チェ課長も‘堂々と検察の調査を受ける’と答え、市民がチェ課長の腕を捕まえて20mほど崇礼門(スンネムン)側に連れていくハプニングが起きもした。

 永く大漢門前の状況を見守ってきたクォン。ヨングク弁護士は<ハンギョレ>との通話で 「チェ・ソンヨン課長にいくら集会管理方針に関する最高裁判例を説明しても変化が見られなかった。 警察の公務執行は法律と判例に従わなければならないが、チェ課長はそれに気を遣わない。‘くやしければ告訴しろ’というばかりだ。 彼に会えば警察組織に絶望感を感じることになる」と批判した。

 集示法3条と22条は‘何人も平和的な集会を妨害したり秩序を乱れさせてはならない。 警察官がこれに違反した場合には5年以下の懲役に処する’と規定している。 民弁とチャン・ハナ国会議員らはチェ警備課長を5回にわたり職権乱用、集示法違反などの疑いで告訴したが、検察は一件も起訴しなかった。 法廷でチェ警備課長の公務方式に対して是非を分ける機会を市民はまともに持てなかった。

クォン・ウンヒと比較した批判文が気に障ると?

 チェ・ソンヨン警備課長はその他にも2008年6月ソウル都心ろうそく集会現場で起きた‘ソウル大イ・ナレ学生軍靴暴行事件’(2008年6月1日未明 米国産牛肉輸入反対集会に参加した女子大生が戦闘警察官に後ろ髪を捕まれ投げ飛ばされた後、軍靴で何度も踏まれた事件。 2010年4月裁判所は被害者に賠償するよう判決した)当時、該当戦闘警察部隊を指揮していた責任者であった。

 チェ警備課長は事件が起きる前日午後、デモ鎮圧に出動する警察機動隊に「老弱者・女性・障害者を殴る姿が(報道機関の)カメラに撮られれば俺たちがやられる。 そのような姿が撮られないように、そのような姿を撮られたら古参がカバーしろ」と命じもした。 当時、軍靴暴行事件とチェ警備課長の発言は大きな波紋を呼び起こしたが、彼はこれに対するいかなる責任も負っていない。

 チェ警備課長の業務方式に関しては、警察内部でも一部に批判的視線がある。 ソウルのある警察署の警備課長は 「チェ・ソンヨン警備課長の現場指揮は、法治主義の歪曲と見ることができる。 ソウル都心の治安をよく管理したという評価は内部で受けるかもしれないが、訴訟を起こされ裁判所に事件が渡れば敗れる可能性が高い」と話した。

 しかし、ソウル都心の警察署の警備課長に任命されれば、誰がなってもチェ・ソンヨン警備課長のようにすることになるという視線もある。 ある警備課長は「ソウル都心で集会が制限されるよう願うのが政府の方針であり、多くの国民がそれを支持していることも事実だ。 このような社会的雰囲気では法治主義を無視して警察が集会を阻むことに重点を置かざるをえないのが現実」と吐露した。

 チェ警備課長は今年の総警昇進審査を心配することが多かった。 警察組織では‘階級定年’という慣行がある。 警正昇進から6~8年以内に総警に昇進できなければ、事実上退職を選択しなければならない。 チェ警備課長は昨年で警正勤務8年目なので、今年昇進できなければ退職を心配しなければならない境遇に置かれていた。 昇進から脱落する危機に処するよりは、社会的に論難となっても都心集会を強く統制することがチェ警備課長にとっては引くに引けない選択肢だったというのが警察内外の視線だ。

 チェ・ソンヨン警備課長は自身に向けられた批判的視線をよく知っている。 インターネット検索も熱心に行っている。 13日、南大門警察署警備課長室で記者と会った彼は 「クォン・ウンヒ松坡(ソンパ)署捜査課長と自分を比較して、ネチズンがまた批判文を残した」として、それが気に障ると話した。 彼はくやしいと言った。 記者が「都心集会を過度に統制しているのではないか」と尋ねるや直ちに‘統制という言葉を使うな’と反論した。 彼は「集会を統制するのではなく保護することが私の業務だ。不法集会に限ってのみ警察が介入しているのだ」と主張した。

 チェ警備課長は警察官としてやむを得ずしなければならないことをしているという点を国民に説明したがった。 <ハンギョレ>とのインタビューも昨年から協議してきた。 彼は総警昇進以後をインタビュー時点として要求した。 チェ警備課長は13日<ハンギョレ>とインタビューすることで最終決定した。しかしインタビューの約束日である17日になると‘多くの重圧感であまりに荷が重い’と携帯電話メールを送った後、記者からの連絡は受けようとしなかった。 チェ警備課長は20日、総警研修に発った。

 チャン・ハナ民主党議員は「チェ警備課長は法治主義を無視してきたので、昇進ではなく内部懲戒対象だ。 このような人が反対に昇進したことは、朴槿恵(パク・クネ)政府下の警察組織に総体的な問題があることを象徴する」と話した。

ホ・ジェヒョン記者 catalunia@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/621333.html 韓国語原文入力:2014/01/25 10:26
訳J.S(6513字)

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