本文に移動

[ルポ]THAAD配備候補地に広がる住民の不安

登録:2016-02-22 05:12 修正:2016-02-22 21:32
「米軍基地の鉄条網がなくなると思ったらTHAAD電磁に襲われることに」
19日、在韓米軍のTHAAD配備の候補地の一つに挙がる京畿道平沢の米軍基地キャンプ・ハンフリーズのフェンス前を米兵が通り過ぎる=平沢/シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

原州、倭館、平沢、群山で住民が不安訴える 
政府が一方的に強行する場合は第2の「大秋里」になる恐れも 

政府、「目には目、歯には歯」の強硬策に走る 
軍事対決深まり民主主義に脅威 
配備に賛成の議員ら 「私の選挙区にはだめ」 

市民団体THAAD対策委員会発足 
群山では自治体が対策会議開く 
平沢市長もフェイスブックを通じて「反対」

 「70年間生きて来て、ずっと米軍基地の鉄条網ばかり見ていたけど、やっと刑務所のような鉄条網が撤去されると思ったら、今度はTHAAD(高高度防衛ミサイル)の電磁波まで心配しなければいけなくなった」

 18日、江原道原州(ウォンジュ)台壯(テジャン)洞の旧米軍基地、キャンプ・ロング近くで会ったシン・サンウン氏(71)は、不安を隠せずにいた。原州が在韓米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)の配置候補地の一つに挙げられているからだ。ここだけではない。大邱(テグ)と慶尚北道倭館(ウェグァン)、京畿道平沢(ピョンテク)、全羅北道群山(クンサン)など、これまでメディアで候補地に挙げられた地域の反応はみな同じだ。慶北漆谷(チルゴク)郡倭館にある米軍部隊、キャンプ・キャロルに近いピョンジャン老人会館で会った76歳の男性は、「THAADの電磁波がかなり強くて危険だと聞いたが、住民ががんになったりするのではないか。この村の近くには絶対入って来ちゃだめだ」と話した。

 地域社会の世論が急速に組織化している。大邱では「大邱慶北進歩連帯」などが12、17、18日、相次いでTHAAD配備反対記者会見を開いており、原州では30を超える市民団体が参加する「THAADの原州配備に反対する汎市民対策委員会」が発足した。群山(クンサン)ではソン・ハジン全羅北道知事とムン・ドンシン群山市長が11日、道庁で対策会議まで開くなど、地方自治団体が直接対策づくりに乗り出した。

 朴槿恵(パククネ)政権が米国と共に推進する在韓米軍のTHAAD配備は、北朝鮮を強く圧迫し、孤立を進めるための中核の手段だ。朴槿恵大統領の残った任期2年間、中国との関係を損なってでも、北朝鮮の挑発に韓米軍事同盟、さらには韓米日3角安全保障協力を中心軸に、「目には目、歯には歯」で対抗するという意志が込められている。

 しかし、THAAD配備に対する地域社会の否定的な声は、朴大統領のこのような構想を根底から揺さぶるかもしれない雷管だ。THAAD配備の問題は、北東アジア地域の力学構図と関連した軍事・外交問題だけでなく、民主主義の問題でもあるからだ。

 政府は、THAAD敷地の問題が「第2の大秋里(テチュリ)」や「密陽(ミルヤン)送電塔事件」のように、飛び火する危険性を警戒している。マスコミに候補地が取り上げたら、すぐに「まだ決定されていない」と釈明資料を出したり、敷地条件や面積など、具体的な言及も控えている。軍当局者は21日、「一つのTHAAD砲隊に管理センター、レーダー、発射台6基、発電機などが入るが、地形条件が重要であるため、予断はできない」と述べた。しかし、グアムにTHAADを配備する際、14.4万平方メートル(サッカー場20個程度の大きさ)の森林を破壊したという昨年の米陸軍の環境影響評価書や、レーダーの地面傾斜度を2.86度以下と規定した米陸軍の技術教範などを考慮すると、少なくとも14.4万平方メートルの開豁地が必要であると推定される。安全距離も確保しなければならない。米陸軍の技術教範はTHAADレーダのAN / TPY2の前方130度の範囲100メートルまでを接近禁止区域に、3.6キロメートルを非認可者統制区域に設定する。 5.5キロメートル以内の上空は航空機の接近禁止区域だ。しかし、平沢などは、都市化が進んでいて、このような条件を満たせる開豁地を見つけるのは難しい。コン・ジェグァン平沢市長は13日、フェイスブックに「キャンプ・ハンフリーズを基準にすると、人の出入り遮断区域である半径3.6キロメートル以内に1305世帯、2982人が居住しており、航空機遮断区域の半径5.5キロメートル以内には6484世帯、1万4536人が住んでいる」として、THAAD配備への反対の意思を明らかにした。

 政府は、電磁波被害が「誇張されたもの」と否定している。軍当局者は、「100メートル以内の接近禁止区域に入らない限り、電磁波被害はない」と述べた。しかし、密陽送電塔と関連して、医学的に電磁波被害が立証されていないという当局の説明にもかかわらず、地域住民による抗議の座り込みとデモが数年間続いた。2014年から経ヶ岬基地のTHAADレーダー設置反対運動を率いた永井友昭氏は、「レーダーの電波などによる健康被害は、放射線のように長期間にわたって少しずつ進むため、すぐには目立たず、因果関係を証明が困難だ」と指摘した。

 地域の民心は政界にも反映される。THAADの導入に賛成した議員たちも、THAADが自分の選挙区に入ってくることについては否定的だ。原州地域が選挙区のセヌリ党のキム・ギソン議員は、報道資料を出して「THAADの国内配備は必ず必要だ。しかし、原州は最適地ではない」と主張した。沈黙することで困惑した状況を避ける人もいる。平沢が選挙区のセヌリ党のウォン・ユチョル院内代表は12日、記者の質問に「THAADをどこに配備するかは、軍当局から総合的に判断して決定する問題」だとして、(直接的な言及を)避けた。

 THAADをどこに配備するかは、4・13総選挙で「厄介な問題」になりかねない。早ければ今週に米共同実務団が構成されても、候補地の決定は4月の総選挙後に行われると予想されるのも、そのためだ。

パク・ビョンス記者、大邱、平沢、原州、群山/キム・イルウ、ホン・ヨンド、パク・スヒョク、パク・イムグン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-02-21 19:37

https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/731383.html 訳H.J

関連記事