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ミサイル弾頭と破片を識別した迎撃不可能 米MD専門家が韓国国防部の主張に反論

登録:2016-02-17 09:05 修正:2016-02-17 15:54
セオドア・ポストルMIT教授 
赤外線終末誘導センサーを使う迎撃ミサイルの盲点
セオドア・ポストル米国マサチューセッツ工科大(MIT)名誉教授//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮が7日の長距離ロケット発射の過程で見せたロケット推進体の爆破技術が、地上配備型迎撃システムの高高度防衛ミサイル(THAAD)を無用の長物にしかねないとするミサイル防衛(MD)専門家の指摘に韓国国防部が反発すると、この専門家が再び国防部の主張に強く反論した。

THAADで識別して迎撃可能か
レーダーで識別した後の迎撃
30キロ地点で弾頭と出会い
迎撃高度より低く、不可能
爆破装置の設置は不可能?
ノドン・スカッドミサイルと
基本的に同じ構造
粉砕用爆薬線の設置は容易

 セオドア・ポストル米国マサチューセッツ工科大(MIT)名誉教授は、最近のハンギョレとの数回にわたる電子メール及び電話インタビューを通じ、「韓国国防部の反論は間違い」と一つひとつ反駁した。これに先立ちポストル教授は、北朝鮮がロケット推進体の爆破技術がノドンミサイルに適用させる場合、実際の弾頭と破片は識別できず、THAADで迎撃するのは難しいと指摘していた(ハンギョレ2月12日付)。これに対し韓国国防部関係者は12日、ブリーフィングを通じ「北朝鮮のスカッドミサイルは長距離ミサイルと異なり一体型なので、内部爆破装置を設置するとミサイル機能を果たせない。またノドンミサイルの場合、推進体に爆発物を設置すると初期数秒間でいくつかの破片の航跡が分かり、すぐ識別が可能だ」と反論した。

 まずポストル教授は、ノドンミサイルに対する国防部の主張に説得力がない理由を説明した。THAADレーダーでノドンミサイルの弾頭と破片を識別した後に迎撃ミサイルを発射すれば、飛来する弾頭の高度が下がってしまい、迎撃範囲を外れることになるというのだ。迎撃時間が不足し、迎撃ミサイルを発射しても無用の長物になるという意味だ。

THAAD迎撃ミサイルおよび弾道位置の流れ//ハンギョレ新聞社

 ポストル教授が互いに異なる重さを持つ物体の空気力学の特徴を分析し、ハンギョレに送った資料によると、弾頭▽動力飛行後に細かく砕かれたミサイルの破片▽小さな金属板やネジなどが、およそ高度70キロまで一緒に動くことが分かった。高度70キロの上空では空気抵抗が少なく、重さによる落下速度がほぼ同程度になるためだ。言い換えれば、相対的に重い弾頭と軽い他の物体が空気抵抗で速度が変わり、識別が可能になる位置、つまり高度70~80キロ地点に到達するまで迎撃ミサイルを発射できないことを意味する。

 地上のTHAADレーダーが弾頭と他の破片を識別した後、迎撃ミサイルに実際の弾頭の位置と高度などに対する発射情報を伝えると、迎撃ミサイルは発射27秒後に高度30キロ前後で弾頭と出会うことができる。しかし問題は、この地点がノドンミサイルに対する迎撃ミサイルの最低迎撃高度の40キロを下回ることにある。事実上、正確な迎撃が不可能になるのだ。

 もちろん、地上のTHAADレーダーが弾頭と破片を識別する前に迎撃ミサイルを発射することはできる。しかし、これは二つの点で問題を抱えている。まず、迎撃ミサイルを打ち上げた後では、地上のTHAADレーダーが弾頭と破片を後から識別しても、関連した情報を飛行中の迎撃ミサイルに伝えられないとポストル教授は指摘した。迎撃ミサイルは打ち上げ後、目標に接近すれば内蔵された赤外線センサーで自主的に目標を追跡しながら飛行するよう設計されているためだ。ポストル教授は「この情報伝達問題は常に重要な問題だった」と明らかにした。

 また、この情報断絶の中から迎撃ミサイルの独自の赤外線センサーが弾頭と破片を識別する時点は、打撃する数秒前頃に可能となる。それ以前は、赤外線センサーで弾頭か欺瞞弾かを明確に識別することができない。ポストル教授は「これは赤外線終末誘導センサーを使用するすべての迎撃ミサイルが抱えている問題」とし、「アシュトン・カーター米国防長官もかなり前に出した分析記事で、この点を明確に示した」と明らかにした。

 スカッドミサイルに爆破装置を設置するのは不可能だとした韓国国防部の主張についても、ポストル教授は「ノドンミサイルとスカッドミサイルの構造は基本的に同じ」と断言した。両ミサイルの外部金属性構造物は基本的に薄い壁のように作られており、粉砕用爆薬線(explosive cutting cord)を設置すれば、ロケット弾をいくつかの破片にするのは容易だという。

 ポストル教授は「粉砕用爆薬線を金属表面にしっかり付着させておくと、爆薬線の一方の端で爆破が開始され爆薬線に沿って拡散する」、「この時、かなりの高温と圧力のガスで金属表面をこなごなにする」と説明した。また「この技術はロケット工学で金属片をいくつかに砕く時に日常的に使用される」とし「熱いナイフでバターを切るようなものだ」と話した。そして「韓国人はTHAAD配備の決定を下すことはできるが、実際的な技術的な事実を知っておく必要がある」、「THAADの技術的恩恵がなければ、配備の決定は高い費用をもたらすことになる」と明らかにした。

ワシントン/イ・ヨンイン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-02-16 21:02

https://www.hani.co.kr/arti/international/america/730638.html 訳Y.B

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