米国のトランプ政権が韓国の大統領選挙の結果に対する立場を明らかにした際、「中国の介入」に言及したことに対し、中国外務省は「中韓関係を仲違いさせるな」と激しく反発した。新大統領の就任初日から激しい駆け引きをいとわない米中をみると、韓国の直面する厳しい外交の現実を改めて痛感する。「THAAD(高高度防衛ミサイル)問題」のときのように米中対立の真っただ中に引きずり込まれたら、当時とは比較にならないほど大きな打撃を受ける恐れがある。確固たる「外交の重心」を保って冷静に対応するとして、まずは韓米関係の安定を最優先目標とすべきだ。
ホワイトハウスが李在明(イ・ジェミョン)大統領の当選確定後の3日(現地時間)に示した反応は、形式と内容の両面で極めて異例だった。ホワイトハウスの当局者はお祝いの儀礼的なあいさつすら省略し、「中国が全世界の民主主義国に干渉し、影響力を行使していることを憂慮し、反対する」との立場を表明した。トランプ大統領は5日まで韓国の大統領選挙の結果について一切反応しなかった。前政権の「米国への全賭け外交」を克服しようとしている韓国の新政権を、最初から強くけん制しようという意図が込められているのではないかと懸念される。
さらに、ホワイトハウスが言及した「中国」と「(選挙)介入」という2つのキーワードは、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が12・3内乱を起こした際に掲げた大義名分だ。トランプ大統領が韓国について歪曲された情報を持つ一部の「極右の有力者」の影響力に振り回されている可能性も排除できない。戴兵駐韓中国大使は4日、「選挙介入主張はまったく根拠のない虚偽事実」だと反発した。
李大統領は韓国外交の宿命である米中との距離の取り方について、「強固な韓米同盟を土台として韓米日協力を固めるとともに、周辺国(中国・ロシア)との関係も国益と実用の観点からアプローチ」するとの立場を表明してきた。至極当然な話だが、それを実現するには少なからぬ困難が伴わざるを得ない。米国は韓国に過酷な「トランプ関税」を課しつつ、「安米経中(安保は米国、経済は中国)」の放棄と国内総生産(GDP)の5%台に達する国防費支出まで要求している。すぐに在韓米軍の「戦略的柔軟性」を要求する声も本格化するだろう。
このような切迫した状況を考えれば、米国と「最初のボタン」をかけ違わないことが重要だ。トランプ大統領とのコミュニケーションの幅を広げつつ、韓米同盟の未来に対する韓国の明確なビジョンを表明しなければならない。米国との関係が安定してこそ、対中外交の道も開ける。