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[ニュース分析]統一部長官、開城工団発言撤回 大統領府の強硬姿勢で自己矛盾

登録:2016-02-16 08:09 修正:2016-02-16 08:49
ホン・ヨンピョ統一部長官が12日午前、ソウル世宗路の政府ソウル庁舎で固い表情で「開城工業団地の全面中断による政府声明」を発表している=イ・ジョンヨン先任記者//ハンギョレ新聞社

 ホン・ヨンピョ統一部長官の発言による、開城(ケソン)工業団地(開城工団)賃金の核開発転用証拠問題は、開城工団を閉鎖させる名分を無理に作ろうとして起きた“事故”だったと、政府周辺で語られ始めている。7日の北朝鮮のロケット発射後、8~9日に開城工団の制裁議論がされ、統一部は「暫定中断」を提案したが、朴槿恵(パククネ)大統領が「全面中断」を強力に進める過程で予想された事故とのことだ。大統領府の一方的決定で全面中断が決められた後、これを正当化できる説明を主務省庁の統一部が任され、無理が生じたものとみられる。

「全面中断」は大統領府の一方的決定
主務省庁の統一部長官が後片付けに追われ

10日の中断の発表では「懸念と推測」
北朝鮮対応に「証拠」「70%上納」
安保理制裁違反を指摘されると話を変え 

16日の朴大統領国会演説を控え
事前に「爆弾除去」との分析も

 統一部は新年の大統領業務報告の際には「開城工団の安定的運営・管理計画」を明らかにしていた。北朝鮮の核実験後、国民の安全を名分に開城工団の出入り人数を制限したものの、統一部当局者の多くは、一様に「開城工団は従来の国連制裁の対象でないため運営されてきた」と語り、北朝鮮の核・ミサイル開発の資金と開城工団の運営は無関係だという基本見解を明らかにしてきた。また「開城工団は制裁手段でない」というのが一貫した態度だった。

 開城工団の全面中断は8~9日、大統領府主導で決定された。議論の過程で統一部の暫定中断論は黙殺され、ホン長官の“抵抗”も失敗に終わったと複数の政府消息筋が伝えた。ホン長官は10日、「開城工団を通じて北朝鮮に6160億ウォン(約580億円)の現金が流入した。(この現金が)核兵器・長距離ミサイルの高度化に使われた」とする政府声明を朗読した。統一部当局者は「根拠があるのか」と問う記者団に「確認された部分はないものの憂慮と推測がある」と答えるにとどめた。

 問題の「証拠資料」発言は12日に出た。開城工団の閉鎖で反対世論が起きると、ホン長官は記者会見で「関連資料がある」としながら「公開できない」と発言した。開城工団の流入資金と北朝鮮の大量破壊兵器(WMD)開発を結ぶ論理を無理に探そうとして起きた、事故といえる。発言はさらに膨らまされた。ホン長官は14日朝放送されたKBS(韓国放送)の「日曜診断」(13日夜録画)でも誤った発言を収拾できなかった。「情報資料なので非公開」とした上で「開城工団労働者の賃金など70%が(労働)党書記室などに上納されるのを、複数のチャネルで確認した」と述べたのだ。ある政府筋は「12日か遅くとも13日に、この資料発言を修正すべきだったが、時期を逸した」と話した。政府関係者は「(開城工団賃金の70%と労働党上納という内容)これらはすべて国情院側の話だが、困った時には(国情院は)隠れている。もっと上(大統領府)も出てこようとしない」と話す。

 結局、ホン長官が言及した「関連資料」は雪だるま式に膨れ上がり、15日、国会で爆発した。ホン長官が最初の発言から3日ぶりに「証拠があるわけではない」と白状したのは、“自滅”を防がなくてはならない判断があったものとみられる。政府が開城工団資金の核開発専用資料を確保していながら、今まで開城工団を維持してきたなら、国連安全保障理事会(安保理)対北朝鮮制裁決議2094号の違反に該当する。決議2094号は「核やミサイル開発に使用する可能性がある現金など金融資産の移動や金融サービスの提供禁止」を国連加盟国の義務と規定している。国連決議を違反した韓国政府が北朝鮮を強力に制裁すると主張するのは非合理的だ。

 事故は完全に終了していない。ホン長官の国会発言を否定する報道説明資料を、統一部が配布したのだ。同日午後、「(核・ミサイルの開発で)現金が入った証拠資料があるように(自分の発言が)誤って伝わった」と国会で謝罪してから4時間後に、「一部メディアで開城工団の資金流入の証拠がないと報道したのは長官の発言の趣旨と違う」と主張した。

キム・ジンチョル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-02-15 22:24

https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/730531.html 訳Y.B

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