大学生のチェ氏(24)は昨春、臨床試験のアルバイトに参加した。 臨床試験は特許が満了した薬品の複製薬を作り、効果と副作用を調べるための薬品試験の一つだ。期間は2泊3日だった。 ソウルのある病院で初日に採血検査などを受け、2日目に医師がくれたステロイド薬を服用し、2日間決められたスケジュールにより採血を続ける簡単なアルバイトだった。 3日間で20回も血を抜いた代価としてチェ氏が受け取った額は35~40万ウォン(約4万円)程度だった。 コンビニなどで働くより時間も節約でき力も要らないのに、受け取る報酬ははるかに良いアルバイトだった。 彼は2012年と2014年にも臨床試験のアルバイトをしたことがある。 2014年には前立腺肥大症の薬を服用したという。
キム氏(31)は5年前に夜間大学院に通った時期に臨床試験のアルバイトをした。 キム氏は「一週間を10万ウォンで生活していた時だった。一回やれば1カ月しのげると思ってすることにしたが気分は良くなかった。肉体を金に変えたという思いのためだったと思う」と話した。
2人が薬品臨床試験のアルバイトに初めて接したのは、アルバイト求人・求職ホームページを通じてだ。 チェ氏は「下宿をしていて生活費が必要だったが、学生会の活動と勉強に縛られて定期的なアルバイトをするのが容易でない状況で、短期バイトを探していて偶然に臨床試験のアルバイトを発見した」と答え「切迫しているときにお金を簡単に手に入れられ、周囲の友人もよくやっている」と打ち明けた。
2人の話からわかるように“マルタバイト”と呼ばれる臨床試験のアルバイトは、大学生の間では「蜜バイト」(楽なアルバイト)として通っている。臨床試験などの薬品試験アルバイトは、副作用による被害が少なくない“ハイリスクのアルバイト”だ。 韓国政府は「医薬品臨床試験計画承認に関する規定」を設けて臨床試験の安全性を検討しているが、2011~13年臨床試験による副作用である「重大異常薬品反応」が476件報告された。 死亡につながったり生命を脅かされるほどの副作用も56件に達する。
それでも「大学明日20代研究所」が最近大学生193人を対象に実施したアンケート調査によれば、臨床試験のバイトは工事現場と物流倉庫作業に次いで大学生が3番目に多く訪れるアルバイトだ。 学生たちは生活費、授業料、負債償還など主に“金の問題”を解決するためにこのようなハイリスクのアルバイトを選択していると答えた。 チョン・ヒョンジュン人道主義実践医師協議会政策局長は「すでに韓国社会は臨床試験を市場論理に完全に任せた状態だ。 学生や低所得層は金の誘惑のために臨床試験に参加しており、お金が必要なので自分の肉体を徹底して使い臨床試験に臨んでおり中途放棄も難しい」と話した。
こうした中で保健福祉部は今年8月、「(韓国を)2020年までに世界5大臨床試験強国にする」として「臨床試験競争力強化方案」を出したことがある。 参与連帯と健康権実現のための保健医療団体連合は16日、「臨床試験の隠れた真実、国民はマルタか?」と題したトークショーを開き「からだの問題を産業的にのみ接近する政策は修正すべきだ」としてこれを批判した。 イ・ギョンミン参与連帯社会福祉委員会幹事は「経済的論理だけを追求して多くの国民に危険な臨床試験を薦め、参加者の疾病情報まで侵害する計画」と批判した。