米国が2月28日、イランを再び奇襲攻撃した。昨年6月に続き8カ月ぶりのことだ。今度はイスラエルを加えての合同作戦だ。米国がイランの領海や隣国の領土を越えてイラン本土を攻撃したのは、ドナルド・トランプ政権が初めてだ。かつて1979年には、イスラム指導者ホメイニ師が親米のパーレビ王政を追放しイスラム共和国を樹立したイラン革命の直後、在イラン米国大使館が占拠され、米国のジミー・カーター政権は米国人の人質救出作戦を試みたが失敗した。イランの心臓部で実施された制限的な軍事作戦であり、侵略的な攻撃ではなかった。
トランプ大統領は1期目のときから「米国第一主義」を叫び、米国の対外介入政策を否定する言葉を繰り返した。2024年の大統領選での選挙遊説でも「私は国家安全保障体制から戦争狂を追い出し、軍産複合体の清算を遂行することによって、戦争から利益を得る行為を終わらせ、つねに米国を最優先にする。われわれは終わりのない戦争を終わらせる」と述べた。
トランプ大統領の言葉と行動は正反対だった。バラク・オバマ政権が2015年に国連安全保障理事会の常任理事国およびドイツ(P5+1)と共同で合意したイランとの「包括的共同作業計画」(JCPOA)の核合意を、トランプ大統領は1期目就任翌年の2018年に一方的に破棄した。今年に入ると新年早々、ベネズエラの首都に軍隊を送り、ニコラス・マドゥロ大統領を自国に連行した。
これに先立ち、2003年にはジョージ・ブッシュ政権がイラクに侵攻した。米国は唯一の超大国として台頭した21世紀以降、民主党であれ共和党であれ政権与党に関係なく、軍事力を行使して戦争を遂行することを躊躇(ちゅうちょ)しなかった。米国が直接攻撃した「テロ集団」はほとんどが石油資源の豊富な国だった。
米国の民間研究所の外交政策専門家であるウィリアム・ハートゥングとベン・フリーマンは昨年出版した共著で、米国を「1兆ドルの戦争機械」(The Trillion Dollar War Machine:原著のタイトル)に例えた。韓国語版は最近、『米国はなぜ戦争をやめられないのか」(ブッキー刊)と題して出版された(日本語版未出版)。「戦争機械」とは、米国の政治・軍需産業・科学技術が一つになった軍産複合体が、国家政策を実質的に操縦する一つのシステムになったという意味だ。権力と資本と技術楽観主義が有機的に結合したことで、フランケンシュタインのような怪物になった。
2025年の米国防総省の予算は史上最高額の8950億ドル(約140兆円)。計り知れない天文学的な数字だ。米国がイラクとアフガニスタンの戦争(2001~2021年)に投入した8兆ドル(約1260兆円)は、米国の電力網全体を脱炭素化し、あらゆる人の学生ローンを全額免除し、ジョー・バイデン政権のエコ・エネルギー投資計画の予算を4倍に増やしても、なお余る額だ。2024年に国防総省の契約企業は、945人の政界ロビイストだけで1億4800万ドル(約233億円)を支出した。これらの企業が雇用したロビイストの大多数が、議会や行政府出身の回転ドア人事の関係者だった。戦争機械が吸い込む費用は、米国をより多くの兵器取引、より多くの紛争、より多くの殺傷の沼に引きずり込む。このようなシステムは、良質の雇用、医療、保育、住居などの実質的な生活の質を犠牲にする代価として維持される。
米国の軍産複合体は、第2次世界大戦中に大規模に拡張された軍需分野が、新たな利益創出の手法を考案する過程で生まれた。その中核は、アイゼンハワー政権が推進した「大量報復核戦略」だった。1961年に発足したケネディ政権は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)と雇用を結びつけ、核軍拡競争を加速させた。
ベトナム戦争の敗北をきっかけに、ニクソン政権は大規模な兵力の派遣の代わりに、紛争地帯の「代理人」に兵器を供給する政策に転換した。米国の兵器輸出が急増した。その後、中東の米軍基地ネットワーク構築のきっかけとなったカーター・ドクトリンと湾岸戦争(1990~1991)などを通じて、米国の軍事介入と軍産複合体はともに成長を続けた。
1989年のベルリンの壁崩壊とソ連解体によって、米国は国防総省の予算増額の口実を失い、軍産複合体は大きな打撃を受けた。クリントン政権期に軍産複合体が取った対応策は二つだった。一つ目は新たな敵を見出したことで、それがまさに、イラン・イラク・北朝鮮のいわゆる「ならず者国家」(Rogue States)のレッテルを貼られた国々だった。二つ目は軍事力をもとに世界の覇権国家になることだったが、これはジョージ・W・ブッシュ政権のアフガニスタン侵攻(2001)とイラク侵攻(2003)へとつながった。
現在の米国の戦争機械は、第2次世界大戦後で最大の変化に直面している。5大防衛産業企業が掌握する既存勢力と、シリコンバレーを中心とする新興技術企業が繰り広げる戦争産業の主導権と国防予算の争奪戦の時代が幕を開けた。上記の著書を執筆したハートゥングとフリーマンは、この競争の今後のシナリオを二つ予測した。新興技術企業がロッキード・マーティンやボーイングといった既存の大企業のシェアを奪うか、国防総省が予算を大幅に増額し、双方に十分な資金を提供するというものだ。著者は「少なくとも、当面は後者が採択される可能性が高いとみられる」としている。故障した戦争機械を直し、暴走と誤作動を阻止するのは、米国市民全員の役目だ。しかし現実的には、最大の権限と責任は行政府が負っている。そのトップである大統領の考えと意思は決定的だ。
トランプ大統領はしばしば「ビューティフル」(beautiful、美しい)という形容詞を好んで用いる。しかし、実際のトランプ大統領の言葉と政策は、多くの場合、荒くて暴力的だ。「美しい関税」「美しい減税」「美しいジェット戦闘機」「美しくてきれいな石炭」「美しい障壁」のように、まったく似つかわしくない物事や政策に「ビューティフル」を乱発するのは、とんでもないというより、むしろおぞましい。真の美しさは威勢や財力ではなく品位と調和から出るということを、トランプ大統領が存命中に理解するよう願うのは、無理な望みだろうか。