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歴史教科書国定化で「1948年大韓民国政府樹立」を左翼偏向と主張する与党

登録:2015-10-09 00:18 修正:2015-10-09 09:35
全国教職員労働組合ビョン・ソンホ委員長(マイクを持った人)と組合員が9月17日午前、ソウル世宗路の政府ソウル庁舎前で韓国史教科書国定化反対教師宣言を行っている。宣言には全教組組合員と非組合員を合わせた教師1万5701人が参加した =イ・ジョングン記者//ハンギョレ新聞社

 セヌリ党は大韓民国建国時期、北朝鮮関連記述、歴代韓国政権の評価などで現在の検定教科書が「左翼偏向」しており、「1948年建国説」を展開するニューライト側の主張に肩入れしている。 だが、これは「大韓民国が3・1運動で作られた」とする憲法に反する反憲法的主張であり、「親日附逆・独裁」批判をかわそうとする企みだと批判される。

■ 1948年に大韓民国が建国?

 セヌリ党は、2013年に「親日附逆・独裁の美化」が問題になった教学社版教科書が「1948年大韓民国建国」を明示し検定過程で修正しなければならなかった点を「韓国史国定化」の必要性を裏付ける代表的事例に挙げている。セヌリ党が「偏向性」是非を提起した結果、7つの検定教科書は「政府樹立」と叙述したが、これは教育部の告示に従ったものだ。 だが、教育部は先月23日に発表した「2015年教育課程」でこれを「大韓民国樹立」に突然変えた。

 セヌリ党と韓国政府は「北朝鮮は1948年に朝鮮民主主義人民共和国を樹立したが、韓国は“政府樹立”と叙述しており、このことが韓国が完全な国家ではなく政府を樹立しただけという誤った認識を持たせかねない」と主張している。 北朝鮮より韓国を格下にしたということだ。これはニューライト側の核心的な主張でもある。

韓国史検定教科書の偏向性論議
与党・政府「1948年建国説」を主張
憲法には「臨時政府の法統継承」
1919年を建国時点と規定
北朝鮮の主体思想など不公正記述?
執筆陣「北朝鮮の批判的理解のために
執筆基準に合わせて記述したもの」
歴代政権に対する偏向評価?
教師「李承晩独裁を抹消し
維新時期の人権蹂躪を書くなということ」

 しかし、このような主張は反憲法的だという批判を受ける。憲法は「大韓民国は3・1運動で建設された大韓民国臨時政府の法統」を継承するとし、「1919年」を建国時点と見なしている。イ・マニョル元国史編纂委員長は「(憲法の規定は)大韓民国の建国が連合国による解放という他律によるものではなく、3・1独立闘争の結果としてなされたことを意味する」と指摘した。 李承晩(イ・スンマン)初代大統領も1948年8月15日0時に政府樹立を宣言し、同日慶祝式を開いた場面が行政自治部傘下の国家記録院が最近公開した動画でも鮮明だ。 朴槿恵(パク・クネ)大統領も先月4日、中国の上海で「上海臨時政府庁舎は祖国の国権回復のために献身された烈士の息遣いが生き生きと残っている所」とし、大韓民国の法統が臨時政府から始まったと明らかにした。 従って1948年建国の主張は北朝鮮の主張を意識して意味を引きずり降ろすものであり“歴史の歪曲”だという批判も出ている。

■北朝鮮の主体思想など不公正叙述?

 セヌリ党と教育部は独立運動、南北分断責任、主体思想紹介、朝鮮戦争勃発責任などで検定教科書の一部の叙述や引用資料などを問題視し、「偏向性」論議を提起している。 例えば南北分断の責任と関連して、李承晩元大統領の「韓国単独政府樹立」井邑(チョンウプ)発言(1946年6月)以前に北朝鮮の「北朝鮮臨時人民委員会」発足(1946年2月)があった点をきちんと叙述しなかったと主張している。 「分断の責任が韓国にあったかのように正統性に関する否定的認識を持たらしかねない」と主張する。 しかし、南北分断の経過と責任の所在を巡っては学界で長期にわたる論議の対象だ。

 日帝強制占領期間の独立運動と関連して、一部の教科書の社会主義系列叙述量が多すぎるとか、北朝鮮の権力世襲を批判的に理解するための核心学習要素である「主体思想」を紹介し、参考資料として一部の文章を引用した点も「不公正叙述」事例だとセヌリ党は主張する。 これに対して教科書執筆者たちは、北朝鮮を正確に知り批判的に理解するよう定めた教科書執筆基準に忠実な叙述だと反論している。

■歴代政権に対する偏向評価?

 一部の検定教科書が「李承晩・朴正煕(パク・チョンヒ)政権は否定的に評価し、金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は肯定的に記述している」というのがセヌリ党の主張だ。 「李承晩政府が各種の不正を犯して国民の期待を裏切った」(未来N)とか「反民族行為者の処罰より反共を重要と考えた李承晩政府」(飛上教育)などを事例として挙げている。 だが、李承晩政府が韓民党と共に親日附逆派の清算のために活動していた反民族行為者処罰特別委員会(反民特委)を解体したという「歴史的事実」を記述したことまで「否定的叙述」とする見方こそ偏向的だという批判されている。 検定教科書は、朴正煕元大統領は維新独裁を行ったが当時の経済開発の成果についても多く記述している。 金大中・盧武鉉政権が南北和解・協力に進展を成し遂げたことも保守と進歩の別なく認められている客観的事実だ。

 キム・ユクフン歴史問題研究所長(禿山高教師)は「歴史教科書から李承晩が独裁した事実自体を抹消しろということで、維新時期の明白な人権蹂躪も書くなということだ」と指摘した。

イ・スボム、チョン・ジョンユン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/schooling/712060.html 韓国語原文入力:2015-10-08 19:36
訳J.S(2264字)

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