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韓国産業界の温室効果ガス削減率12%に大幅縮小…原発増設も論議の的

登録:2015-07-06 00:22 修正:2015-07-06 08:09
ユン・ソンギュ環境部長官(右から三人目)が30日午前、世宗市の政府世宗庁舍企画財政部共用ブリーフィングルームで2030年温室効果ガス削減目標を排出量展望値(BAU)対比37%に決定したと発表している=世宗/ニューシス

 韓国政府が30日に発表した2030年温室効果ガス削減目標と大略的な目標履行方案は、国際社会に約束した既存目標の後退を前提としている。しかも産業部門が負うべき減縮負担を発電や輸送など他部門に押し付けるものであるという点で、国内外で大きな論議を呼び起こすことが予想される。 削減目標履行の手段として原発の追加建設を検討する事にしたことと、国内の代わりに国外で削減するのにかかる費用負担の主体など核心事項についての決定を先に延ばしている点についても同様だ。

新たな削減目標が既存の目標より進展している?
今後5年間に1億4千万トン減らし
その後10年間には710万トンのみ削減
現実的に不可能な経路

国際社会との約束違反との批判憂慮
「他国の炭素排出権を買って充当」
財源調逹・金で解決に対する批判も

■ 国際社会との約束 2020年削減目標を事実上放棄

 新しい削減目標は削減率の数値上は、国際社会に約束した既存の2020年削減目標より強化されたように見える。 排出量展望値対比30%から37%へと削減率が高まるためである。実際、排出量展望値に削減率を適用して目標排出量を計算しても、 2020年5億4300万tCO2-e(二酸化炭素相当量トン、以下トン)から2030年には5億3590万トンと710万トン数値は下がっている。削減目標が既存の削減目標より進展したものだと韓国政府が説明する根拠だ。

 しかし実際に温室効果ガス削減が進められる経路を検討して見れば、新しい目標は既存の目標と両立しないことが分かる。 2012年基準で6億8800万トンの温室効果ガス排出実績を考慮する時、2020年の削減目標と2030年の目標を同時に守るということは、2020年までの今後5年間に1億4000万余トンを減らし、2020年からの10年間には710万トンだけを減らすという話だ。 現実的に不可能な減縮経路だ。30日のブリーフィングに立った政府関係者たちが、既存目標より強化された案であると説明しながらも、目標達成のための履行計画樹立過程で既存目標を下方調整する可能性を排除しない矛盾した答弁をしているのはこのためと見られる。 結局、去年ペルーのリマ気候会議で合意した既存目標後退禁止の原則を破ったという批判は避け難いようだ。

温室効果ガス削減の従来の目標と新目標の比較 //ハンギョレ新聞社

■ 原発追加建設により産業界の削減負担を減らす?

 政府が今回の削減目標発表の際に、産業部門の削減率は12%を超過しないようにすると明らかにしたことも論議の的だ。 削減率12%は昨年政府が2020年既存削減目標達成のためのロードマップで設定した産業部門削減率である18.5%よりはるかに低い。これは今回の削減目標設定を製造業革新の機会にするという政府の主張とも矛盾している。 産業界の削減負担が減った分、企業が低炭素技術開発のための投資を減らす蓋然性が高いためである。

 削減率12%は先に政府が発表した4つの削減シナリオのうち、第2案(排出量展望値対比19.2%)において産業部門に適用する事にした削減率と同一である。 基本削減シナリオとして第3案(排出量展望値対比25.7%)を選択しておきながら、産業界に対してのみ、より緩和された第2案を適用するという特恵を約束したのである。 産業部門で減ることになる削減負担は、結局は輸送・建物・発電などの他部門で引き受けなければならないという点で、今後の細部履行計画樹立過程において大きな陣痛が不可避だ。

 政府は産業部門に対して緩和する減縮負担を主に発電部門に押し付けるという腹案を持っている。 このために核発電の比重を高める方案を考慮すると明らかにし、温室効果ガス削減を核発電拡大のための名分に活用しているという批判も出ている。 産業通商資源部のチョン・ヤンホ エネルギー資源室長はこの日のブリーフィングで 「産業界で減らされる削減負担を発電や他部門が引き受ける形になる。原発のようなものを追加で作らなければならないという部分も同時に検討している」と述べた。

■ 金で削減負担を埋め合わせ

 総削減率の3分の1に近い2030年の排出量展望値対比11.3%の削減分を国際炭素市場を活用して国外の減縮を通して充当する事にしたのは、温室効果ガス削減負担を低開発国に移転するという倫理的問題のみならず、莫大な削減費用負担問題を抱えることになる。 国外削減分11.3%は排出量展望値を適用して単純計算すれば、温室効果ガス排出権9600余万トン規模だ。排出権価格を10ユーロと計算しても、最低1兆ウォンを超える。

 この日のブリーフィングで政府関係者は、国外削減のための財源を国民の税金にするか、企業の負担とするかという記者の質問に対して 「まだ確定できない段階だ」として明確に答えなかった。

 アン・ビョンオク気候変化行動研究所長は「今回政府が定めた削減目標は、先に発表したシナリオから数字は少々変わったが、朴槿惠(パク・クネ)大統領も何回も守ると公言した2020年の削減目標を放棄したものだ」として「この部分に対する国際社会の評価は冷ややかにならざるを得ないだろう」と述べた。

 環境運動連合は「政府が先に発表したシナリオ第3案に、国外の減縮分を総減縮分の30%も入れ込むという姑息な手を使った」として、「『汚染者負担の原則』を破り、産業界の温室効果ガス削減責任を国民と国外に押し付ける内容だ」と批判した。

キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/698319.html 韓国語原文入力:2015-06-30 22:37
訳A.K(2504字)

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