90年代サムスン器興事業場3ライン
乳癌・卵巣嚢腫・白血病・脳疾患
老朽設計に加え各種有害物質より多く
ようやく産んだ子供までが先天性疾患
「死のエンドファブ」。一班に約20人が勤めていた。そのうち何と10人が病気に罹った。2人に1人の割合だ。 4人は6年から10年まで不妊症を患った。それだけではない。流産、乳癌、卵巣嚢腫、白血病、甲状腺癌、脳疾患などに罹った。そのうち1人が亡くなった。 2006年7月に白血病の診断を受け、一か月後に亡くなったイ・スギョンさんだ。 連絡がついたのは10人。残る10人は近況さえ分からない。そのうち誰が病気に罹ったかも知りようがない。
彼女らは全員1990年代初めから末までサムスン電子器興(キフン)事業場3ライン2階のエンドファブで一組で働いていた。その時、自分たちが後日不妊や流産をはじめとして、種々の悪性の病気にかかるとは予想もできなかった。
ファブ(fabrication facility)はウェハ加工工程を指す言葉で、3ライン2階エンドファブはその名の通り3ライン2階の終端にあったファブを意味する。 器興事業場で最も古い半導体生産ラインである3ラインは、故ファン・ユミさんも仕事をした所で、半導体白血病論議に火が点いた2008年の1~2ラインと共に閉鎖措置された。 すでにない3ライン2階エンドファブで何があったのか?
「これほど病気に罹った人が多いとは知らなかった。 エンドファブで一緒に仕事をした同僚が毎年一回ずつ会合を持っているが、8人程が集まりました。 話をしてみると私を含めて病気を持っている人が9人もいました」
パク・ジョンスクさん(仮名・41)は1991年から1998年まで満7年間器興工場に通った。 主に3ラインのエンドファブのエッチング・フォト・蒸着の工程で働いた。 退社前の3年間は助長も務めた。
「4班3交代だったが、生産量に対するノルマがきつかった。 助長が生産量に応じて人事考課を付けるのですが、ストレスをたくさん受けました。 生産量が下がればその班が責められたりしました」
班別に生産量競争をしたのは3ラインのエンドファブだけではなかった。
「3ライン エンドファブの隣に新設ベイ(半導体製造工程区画)が11ベイから16ベイまでできました。 その時、設備エンジニアと一緒にセットアップ業務を何か月かしました。 新設ベイができて老朽設備にはより多くの有害物質が蔓延したでしょう」
新規設備を本格稼動する前に色々な化学物質を使って生産工程を最適化するセットアップ作業は、集中的に各種の有害物質に露出しうるので危険な作業に挙げられる。
1992年から1999年まで主に4ベイのエッチング工程で仕事をしたイ・ジヨンさん(仮名・40)は「業務量を圧迫されるために、隣のベイのオペレーターが非番や有給を使えばその工程の業務まで務めるのが常だった」として「隔壁構造だとは言うものの、ペイ毎にみなドアを開けて仕事をしていたし、内部の空気が循環する“クリーンルーム”の特性上、他のベイで露出した有害物質を皆が同じく吸っていただろう」と話した。
彼女たちが露出した有害化学物質は、母親になりたかった彼女たちのからだの中で生殖毒性を現わし、半導体2世の涙を産んだ。 4年間の不妊、一度の人工流産の末にようやく子供を産んだパク氏は、現在乳癌の坑癌治療を受けているし、イ・ジヨンさんは4度の流産の末に息子を産んだが、その子は現在後頭葉性てんかんという中枢神経系疾患を病んでいる。 幻想が見える珍しい脳疾患だ。 イ氏もまた頭蓋腔内低血圧と不整脈を患っている。 実家の家族の中で流産をしたり似た病気を病んだ人はいないと彼女は話す。
パク・ジョンスクさんとともに仕事をしたチャン・ミソンさん(仮名・41)さんは7年間不妊を病んだ。 彼女は今で数か月に一度の生理をするほど月経異常症状がひどい。
「当時も生理が非常に不規則でした。 3か月に一度生理をした時期もありました。生理痛も激しかったです。とても痛くて腹を握りしめてのたうち回るほどだったんです。 寮生活をしていたのでよく知っています。 ところが、その時はそうなんだと思っていました」
チャン・ミスンさんと同じ寮で生活したイ・ジヨンさんの証言だ。
悲劇の大きさから見る時、3ラインのエンドファブは米国IBMの「ビルディング13」とそっくり重なる。 カリフォルニア州サンノゼにあったIBM半導体研究所であるビルディング13の研究員は、クリーンルームで使われる物質と同じ物質を扱った。 1985年から2003年までそちらの研究員10人のうち8人が癌に罹った。 6人が死亡した。 4人が脳腫瘍だった。 当時、癌全体の概略1%に過ぎなかった脳腫瘍は、以後米国で代表的な半導体職業病になった。 ビルディング13は結局閉鎖された。
「半導体労働者の健康と人権を守るパンオルリム」のイ・ジョンラン労務士は「エンドファブの労働者が扱ったというイソプロフィルアルコール、アセトンなどの生殖毒性物質は、現在も半導体工場で多様に使われている物質」とし「過去に露出したことが今になって病気として現れ、今露出したことが未来の2世疾患を産むので、生殖毒性物質をきちんと管理しなければ、今後も第2、第3のエンドファブの悲劇は繰り返されることになる」と強調した。
パク・ジョンスクさんはこう言った。
「実際、私が知っているのは自分たちの班で10人だけです。 エンドファブで一緒に仕事をした他の班の人々が病んでいないことを望むだけです」