▶<手に手をとって>は労働者の正当な権利を守り損害賠償と仮差押のない世の中を作るために行動する市民の会です。ハンギョレは<手に手をとって>との共同企画として、毎週、損害賠償・仮差押の現場を訪ねます。損害賠償と仮差押のため困難な状況にある現場の情報提供をお願いします。<黄色い封筒シーズン2>の後援支援金は、被害者の生計・医療費支援、法・制度改善、白書の発刊、および学術研究などに使用されます。後援口座、新韓銀行100-029-977980 預金主<手に手をとって> handinhand@hani.co.kr
「労組を、従順な労組に変えて差し上げます。 成功報酬を頂ければ、労組をなくすこともできます。既に私どもが作業をした企業では、労組が瓦解したり解散しています」
2011年4月28日、<創造コンサルティング>という会社は自動車部品メーカー柳成(ユソン)企業に“コンサルティング提案書”を送った。プレゼンテーション文書として作成された同文書には、彼らがこれまでの成果として提示した事業場名が並んでいた。
「大林(テリム)自動車では整理解雇関連の戦略樹立を支援した結果、労組が民主労総を脱退し穏健な指導部が取って代わった。 延世(ヨンセ)大・東亜(トンア)大・嶺南(ヨンナム)大の医療院では、組合員数が減り、聖愛(ソンエ)病院とレークサイドカントリークラブでは組合を解散させた。」
<創造コンサルティング>はこの文書で「他の法人に較べてはるかに高い対外機関との関係形成能力をもとに、労働部、警察庁、国家情報院、検察など関連機関との円滑な協力体制の強化、経総や全経連など経済団体に対する支援要求も可能」を自分たちのノウハウとして提示した。 彼らがどのような関係形成能力を披露し、国家情報院、検察、雇用労働部、警察など、公正かつ中立的であるべき政府機関に影響力を行使するというのだろうか。
2012年7月27日、安山(アンサン)のSJM工場に進入して無差別に暴力を振るった警備会社コンテクトスの蛮行が世の中に知られた後、国会は9月24日「産業現場における警備会社の暴力に関する聴聞会」を開いた。この聴聞会で、SJMだけでなくマンドやサンシンブレーキ、バレオマンド、大林自動車、柳成企業、ボッシュ電装、ADTキャプス、トンウファインケム、韓進(ハンジン)重工業等の労組弾圧を企画し主導したのが<創造コンサルティング>であるという事実が明らかになった。 同年10月16日、<創造コンサルティング>は法人認可が取り消され、シム・ジョンドゥ代表とキム・ジュモク専務は労務士資格が停止された。 <創造コンサルティング>の介入した企業の労組弾圧方式は大概同じだった。 賃金や労働条件等の懸案を無視して交渉に応じず、反応がなければ団体協約を一方的に解除する方式で労組を刺激する。 労組が争議に突入すれば、待ってましたとばかりに職場を閉鎖し、警備会社を投入する。 その間に会社の言うことをよく聞く御用労組を設立し、組合員を圧迫して新労組に加入した順に業務に復帰させる。 最後まで応じない既存労組の組合員には解雇や停職などの重い処分が待っていた。 それだけではない。 損害賠償仮差押の苦痛はその時から始まる。処分が不当だとして訴訟を提起しても、判決が出るまでには短くとも3~4年かかり、長引けば5年を優に超える。その間に労働者の生活は疲弊する。
民主労総が国内の損害賠償請求現況を総合した資料を見れば、計17社で損害賠償請求金額が1691億6000万ウォン(約169億円)、仮差押額が182億8000万ウォンだ。 このうち<創造コンサルティング>が介入した事業所は、柳成、バレオマンド、サンシンブレーキ、マンド、ボッシュ電装、コンチネンタル・オートモティブ、韓進重工業の計7か所だ。これら事業場の損害賠償請求額は584億5000万ウォンに上る。ここまでなれば韓国社会の損害賠償仮差押の問題の相当部分が<創造コンサルティング>の遺産といっても過言ではない。<創造コンサルティング>に襲われた事業場の労働者たちは今どうしているだろうか。
労働者が損害賠償仮差押を被った事業所のうち
3分の1が<創造コンサルティング>の労組破壊企画による
労組破壊行為の不法性が明らかになっても
労働者たちの苦痛は変わらない
職場閉鎖、警備員の暴力、損害賠償仮差押
労組を圧迫する武器三点セット
創造コンサルティング代表は、法の網をかいくぐり労務士資格を回復
職員らは再び会社を立ち上げた
2度の冬を空中で過ごした理由
23日朝7時30分、忠清南道牙山市屯浦面(チュンチョンナムド・アサンシ・トゥンポミョン)にある柳成企業牙山工場の正門前では、ホン・ジョンイン金属労組柳成支部長やヤン・ヒヨル副支部長が「労働者を殺してやると言うユソン資本、どっちが負けるかやってみよう」と書かれた横断幕を広げ、出勤してくる仲間たちを迎えていた。解雇者の境遇でもあるホン支部長は、<創造コンサルティング>の労組破壊工作が世間に明らかになった2012年以降、2度の冬を空中で迎えた。2012年10月、会社の正門前にある高さ6mの橋の上に上がり、151日間の高空籠城を行なったホン支部長は、翌年10月にも忠清北道沃川(オクチョン)にある高さ22mの鉄塔に上がり、129日を過ごした。 両方とも生命をかけた闘争だった。何が彼をその高みに登らせたのだろうか。
「労組を破壊した主犯を処罰し、御用労組の設立を取り消せというのが要求事項でした」 柳成企業労組の当初の要求は、簡単に言えば「睡眠時間の確保」だった。当時、国内自動車業界の労働者たちは、慢性的な徹夜労働に苦しめられていた。柳成企業の場合は昼間組が朝8時に出勤して夜の8時まで働き、夜間組が夜の8時から翌朝8時まで勤務していた。 一日8時間勤務が基本だが、残業や特勤が日常化し、1日10時間以上の労働が日常茶飯事だった。ユソン企業の労使は2010年1月13日「2011年1月1日付けで、昼間連続2交替制の導入を目標に推進する」という内容の合意書を取り交わし、労組はその合意書を根拠に特別交渉を要求し、2011年1月から5月まで11回にわたり会社側と交渉を進めた。 交渉が決裂すると労組は5月3日、忠清南道地方労働委員会に調停申請を出し、5月17日に組合員の賛否投票を経て争議行為を決議した。 翌日会社側は待っていたかのように職場を閉鎖し、外注警備員を投入した。5月19日未明、会社が雇用した外注警備員は車で労働者たちを襲った。 正門前の歩道を侵犯した車は数人をはねても停まろうとはしなかった。この事故で頚椎を骨折した3人をはじめ計13人が重軽傷を負った。 警察はこれを運転ミスによる単純ひき逃げ事故として処理した。
「その時は知りませんでした。会社がすでに推進を約束した昼間連続2交替に消極的な理由、攻撃的にロックアウトを断行する理由が、全く分かりませんでした。後になって分かってみれば、<創造コンサルティング>が書いたシナリオ通りに進めたことでした。」
90日を超える職場閉鎖の間、会社が作った御用労組に加入せずに頑張った労働者たちを待っていたのは、解雇と停職などの懲戒と数十億ウォン規模の損害賠償請求だった。職場閉鎖が続いた3か月間、給料を受け取れなかった労働者たちにとって、懲戒処分と損害賠償の圧迫は想像以上に強力なものだった。600人あまりの労組員は270人ほどに減った。会社側は解雇27人、停職69人、けん責176人、注意20人という大規模な懲戒処分を断行した。会社側はさらに、組合幹部13人に57億ウォンの損害賠償を請求した。大韓民国政府も労働者たちに1億272万ウォンの損害賠償を請求した。 2011年6月22日の警察との衝突のためだった。
「私たちが集会届けを出した場所に移動しようとすると、警察が道を塞いで迂回して行けと脅しをかけました。 法に根拠の要求をしたのです。その時ちょっと小競り合いがあったのですが、警察は直ちに警棒と盾で攻撃してきました。偶発的な衝突でした。しかし、警察の労働者たちに対する姿勢に問題がありました。 後で分かったことですが、警察の内部文書にも労組側のストが適法であるということが明示されていて、会社側が労働者を損害賠償請求で圧迫すれば、警察は労組指導部に対する逮捕状で一緒に圧迫すると書いてありました。」
ホン支部長が言及した文書は、牙山(アサン)警察署情報課が作成した「牙山柳成企業労組スト関連情報判断及び対策」という文書で、2012年9月の国会聴聞会当時、ハン・ミョンスク民主党議員が公開した文書だ。 国家は損害賠償だけでなく、仮差押によっても労働者を圧迫した。給料と不動産に対する仮差押が同時に行われた。マンションを仮差押されたオム・ギハン氏は「家族の安息の場である自宅まで仮差押するのを見て、政府のあくどさを感じた」と話した。
ホン支部長は、法の二重定規についてもどかしさを吐露した。昨年2月、大田(テジョン)地裁天安(チョナン)支部は、労組が組合員投票をする前に執行した“残業、特別勤務の拒否”が「労組員の同意を経ていない不法な争議」であると判断し、会社側の57億ウォンにのぼる賠償請求金額のうち12億1850万ウォンを認定した。 一方、会社経営陣は免罪符を受け取った。昨年12月30日、大田地検天安支部(担当検事 キム・テギョン)は「創造コンサルティングと共謀して労組を弾圧した不法労動行為事件」に対し、“証拠不十分”を理由に不起訴処分にした。ホン支部長は柳成支部闘争の意義について、次のように説明した。
「柳成支部の闘争は社会にあまり知られていないけれども、2つの重要な意義があります。一つは、夜間労働の問題点を世の中に知らせ、ヒュンダイ(現代)・キア(起亜)自動車、及び多くの部品会社の昼間連続2交替制施行に大きな影響を与えたということ。 もう一つは、職場閉鎖と複数労組制の悪用により破壊された労組を再建し、再び多数組合の地位を回復したという点です。 その柳成企業が依然として深夜労働をしているというのはアイロニーです。」
621名の組合員がゼロになるまで
<創造コンサルティング>が介入した事業場のうち、ユソン企業を除けば労組を再建したケースはない。かつて労組員数が2250人を超え金属労組の代表事業場と言われたマンドは、解雇者3人を含め90人だけが既存労組に残った。 シム・ソンモク首席副支部長は「辛うじて労組に残った人たちに対してさえ、会社側は結局30億ウォンの損害賠償を請求した。 御用労組とは賃金にも差があるため、労組を再組織することは難しい」と明らかにした。
バレオ電装システム・コリアでは、損害賠償請求が労組を瓦解させるのに十二分に機能した。フランスの企業バレオが1999年、マンド機械の慶州(キョンジュ)工場を買収して作ったバレオ電装システムは、2008年まで労使葛藤がなかった。 1990年代末の金融危機当時、外国系企業に与えられた税制上の特典を10年間享受したバレオは、2000年代末から警備と食堂業務を外注化し、職員の福祉を縮小した。これを団体協約違反だとして労組が2010年2月に争議を開始すると、バレオは待っていたかのように98日間の職場閉鎖を断行した。 チョン・ヨンジェ金属労組バレオマンド支部長は「621人の組合員がその98日間に離れていって、58人だけが残った。さらに会社が損害賠償26億ウォンで脅迫すると、30人が離脱し、残った28人は解雇された」と語った。 職員身分の労組員が一人も残らなかったバレオ事業場で、最近になって金属労組加入者が急激に増えている。 チョン支部長は「会社が通常賃金を払わないようにするため成果賞与制を作り、御用労組がそれを受け入れたので、労働者たちが再び金属労組に加入している。今回のことは民主労組がなくなれば労働者が被害を被るということをよく示す事例だ」と伝えた。
大邱(テグ)のサンシンブレーキは2010年、58日間の職場閉鎖の末に労組が瓦解し、解雇者5人を含む大量懲戒を受けた。会社側は残った解雇者5人に損害賠償10億ウォンを請求したが、裁判所は2012年1月、損害賠償請求を認めなかった。 また、翌年4月に裁判所は会社側の職場閉鎖は不当だとして、その間の賃金を支給せよと宣告した。 ところが、会社側の精神的苦痛に対する慰謝料500万ウォンを支払えという判決も一緒に出された。 チョン・ジュンヒョ支部長は「損失が具体的に出ていないのに、精神的苦痛を認める判決が出たということには納得が行かない。 精神的苦痛を受けたのはむしろ労働者たちだ。また、解雇者たちはそれでも不当解雇取消訴訟を行なっているが、停職処分を受けた20人余りは、会社側の損害賠償による脅迫で不当な懲戒を取り消せという要求すらできずにいる」と明らかにした。 サンシンブレーキは、裁判所の判決にもかかわらず前職労組幹部たちの給与のうち4億1000万ウォンを仮差押した。チョン支部長は「仮差押は労組活動に対する会社の態度を示す良い定規だ」と話した。
忠清北道清原(チュンブク・チョンウォン)の自動車部品メーカー、ボッシュ電装では「損害賠償仮差押を撤回せよ」という裁判所の仲裁案まで会社側が拒否した。 ボッシュ電装支部は2011年、残業と特別勤務を拒否して闘争に立ち上がり、損害賠償請求を受けた。イ・ファウン支部長は「当時、成果給関連の協議が進行中で、残業・特別勤務拒否は労組の例年の闘争方式だった。<創造コンサルティング>が介入してからは、組合員投票を経ていない残業・特別勤務拒否を不法行為に追い込み、損害賠償請求を振りかざすので労組が萎縮してしまい、懲戒処分が乱発された」と伝えた。ボッシュ電装では、職場閉鎖をせずに懲戒と損害賠償による圧迫だけで労組員が400人余りから70人にまで減少した。
<創造コンサルティング>と労務法人<春>
7月21日、ソウル高裁は不当労働行為に加担して労務士資格を取り消されたシム・ジョンドゥ<創造コンサルティング>前代表に勝訴判決を下した。この判決でシム前代表は労務士資格を回復した。 公認労務士法は、労務士懲戒委員会は7人で構成されなければならないと定めているが、シム前代表を懲戒する時には6人だけで委員会を構成したというのが判決の理由だった。経総で法制チーム長などを務め13年間勤務したシム・ジョンドゥ前代表は、法的瑕疵を見つけ出し勝訴を引き出した。 彼の法律活用法は、韓国社会に対し監視と対策について一層深刻に考えることを要求している。 2011年7月に施行された複数労組の許容について、労働界は宿願事業だとして歓迎の意を表し、企業側は「労働争議が増え人件費が急増する」として絶対反対の立場だった。 しかし、シム前代表の目には“複数労組の許容”という新しい法制度は、御用労組を作って民主労組を破壊する絶好の手段に映った。 複数労組許容から3年目にして法制度の改善が要求される所以だ。<創造コンサルティング>は2010年1月から2年8ヵ月間に、23の企業と病院から82億4500万ウォンの諮問料と成功報酬を受け取った。そして584億ウォンの損害賠償仮差押を労働者たちに残した。 一方、そのような<創造コンサルティング>が受けた処罰は法人認可の取り消しだけで、その会社で主要役職を務めたイ・ジュヒョン、チョン・ジヨン、ジャン・ユギョン労務士は2012年10月、労務法人<春>を設立し、それぞれ代表、副代表、労使革新チーム長となった。
牙山 /ユン・ヒョンジュン記者 hjyoon@hani.co.kr
再び“黄色い封筒”を集めてください
<手に手をとって>は「損害賠償仮差押をなくそう、手に手をとって」を縮めた言葉です。労働者たちの正当な権利を守り、損害賠償と仮差押のない世の中を作るために行動する市民の会です。
<手に手をとって>は、<美しい財団><時事IN>が行った<黄色い封筒>キャンペーンの後続事業を行なっています。<黄色い封筒シーズン1>は市民4万7547人が参加し、計14億6874万1745ウォンの募金が集められました。<黄色い封筒>に寄せられた貴重な希望のうち、5億2000万ウォンあまりを損害賠償仮差押の被害者137世帯の緊急生計医療費として先ず支援しました。今後<手に手をとって>は、2次緊急生計医療費支援を通じて損害賠償仮差押の被害世帯に市民たちの黄色い封筒を伝達する予定です。また、憲法に保障されている“労働争議”を理由に労働者が損害賠償仮差押の被害を受けることのないように、法・制度の改善活動を続けて行きます。損害賠償仮差押の事例や現場に関する情報提供先は handinhand@hani.co.kr です。