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[社説]最低賃金論争より死角補完策が重要だ

登録:2018-06-04 23:49 修正:2018-06-05 06:32
ホン・ジャンピョ大統領府経済首席が今月3日、大統領府で家計所得動向に関する記者懇談会を開いている=大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社

 大統領府の度重なる説明にもかかわらず、最低賃金引き上げの影響をめぐる議論がだんだん収まらなくなっている。大統領府とマスコミの反論、さらにその反論が続き、ややもすると「低所得層の所得増大を通じた格差解消」という重要目標が後回しにされまいかと心配にまでなる。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は5月31日、国家財政戦略会議で、最低賃金引き上げの効果に関して「統計によると労働者の賃金は軒並み増えている。特に低賃金労働者の賃金は大きく伸びている」として「肯定的効果が90%」と明らかにした。文大統領が引用した統計の根拠をめぐって論議が起こり、大統領府のホン・ジャンピョ経済首席は3日「統計庁の家計動向調査の元データによって国策研究機関が綿密な分析をした結果」だとして「所得下位の10%だけは今年1分期の増加率が8・9%で昨年同期(10・8%)より低かった。残りの90%は全て今年の増加幅は高く表れている」と説明した。

 これに対してマスコミからは再び「自営業者に及ぼした影響が欠けた統計で限界がある」という批判が出て、大統領府のキム・ウィギョム報道官が4日「文大統領は初めから労働者世帯と非労働者世帯を明確に分けて話している」として「死角地帯にある非労働者世帯や零細自営業者、高齢者の社会安全網拡充のために努力している」と明らかにした。

 最低賃金引き上げの否定的側面だけ取りざたして「所得主導成長の失敗」と決めつけるのは過度な批判だ。しかし、政策樹立と執行の責任を負っている政府としては、最低賃金引き上げの影響をめぐる論議にいちいち対応するよりは、キム報道官の話のように死角地帯の社会安全網を拡充することに政策力を集中させることが必要だ。

 最低賃金引き上げの副作用がどの程度なのか統計的に確認するのはまだ大変なのが事実だ。しかし、最低賃金引き上げの負担に耐えられなかった零細企業や小商工人が職員を減らしたり、アルバイトに変えている点もまた否定するのは難しい。韓国開発研究院は4日に発表した報告書「最低賃金引き上げが雇用に及ぼす影響」で「4月までは、最低賃金引き上げによる雇用減少効果ははっきりしていない」としつつも、「しかし、来年とその後も最低賃金を15%以上上げれば、雇用減少の規模はそれぞれ9万6千人と14万4千人に膨らむと予想される」と明らかにした。事実上「速度調節論」を提案したのだ。

 すべての政策には期待した効果の他に副作用があるはずだ。100%完ぺきな政策というものはない。最低賃金の引き上げもまた正しい方向だが、副作用が存在するしかなく、補完策を用意するのは政府がすべきだ。今は最低賃金引き上げの恩恵から疎外されている階層に焦点を合わせるのが緊要だ。低所得層の生活の質を実質的に改善することができるよう、勤労所得税制の拡大や基礎年金の引き上げなど、最低賃金以上に政策選択の幅を広げなければならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/847681.html韓国語原文入力:2018/06/04 20:46
訳T.W

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