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「賃金労働者だけを見ている?」大統領府の中途半端な最低賃金分析

登録:2018-06-04 08:57 修正:2018-06-04 09:33
大統領府「肯定的効果90%」の根拠資料を提示 
 
「家計動向」の中の勤労所得を分析したところ  
下位10%だけが増加率が前年より下がる 
 
自営業者・失業者などは所得分析から抜け落ち  
最低賃金引き上げ効果が最も大きくあらわれる  
最下層の所得が急減した理由を究明すべき
ホン・ジャンピョ大統領府経済首席が今月3日、大統領府で家計所得動向に関する記者懇談会を開いている=大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社

 先月31日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「最低賃金引き上げの肯定的効果が90%」と述べた発言の根拠をめぐって議論が起きると、大統領府は3日、関連統計の根拠を直接提示し、火消しに乗り出した。統計庁の家計動向調査を基に個人別の勤労所得増加率を計算した資料を根拠にしたものだが、最低賃金の影響を大きく受ける零細自営業者に及ぼした影響は抜けており、限界があると指摘されている。

 この日、ホン・ジャンピョ大統領府経済首席は記者団に、「(文大統領が国家財政戦略会議で発言した)最低賃金の肯定的効果90%の根拠が何なのかについて、さまざまな疑問が提起されたものと聞いている」とし、統計庁の「家計動向調査」の発表内容の根拠となるローデータ(raw data)を用いて関連国策研究機関がより綿密な分析を行った結果を(大統領府に)伝えてきた」と説明した。今回の分析は、韓国労働研究院と韓国保健社会研究院が担当した。

 大統領府が根拠にした統計の核心は、世帯主や配偶者、その他世帯員(複数でも1人の所得とみなす)を抽出し、彼らの今年の第1四半期の勤労所得増加率(前年同期比)を2017年の第1四半期と比較したものだ。このような方法で分析した「個人基準分位別勤労所得増加率」によると、所得下位10%(月の勤労所得48万3千ウォン=約4万9千円)だけが今年の第1四半期の増加率が8.9%で、昨年同期(10.8%)より低かった。残りの所得区間では、すべて今年の増加幅が前年より高く表れた。特に下位20%(月100万ウォン=約10万2千円)と30%(月147万ウォン=約14万9千円)の勤労所得増加率は13.4%、10.8%と高く現れ、前年(5.8%、5.2%)よりはるかに高かった。上位10%(月557万2千ウォン=約56万6千円)も増加率が5.1%で、一年前の増加幅(0.7%)を大きく上回った。文大統領が言及した「肯定的効果が90%」という部分は、このような分析を根拠にしたという話だ。ホン首席は「この分析は学界で使用されている方法だ。家計動向調査に含まれた勤労所得が現時点で個人別勤労所得を確認する唯一の資料だった」と明らかにし、今回の統計分析が信頼度のあるものだという点を強調した。

 だが、専門家らは最低賃金引き上げの効果を賃金労働者に絞って解釈することは限界があると指摘する。実際、今年第1四半期に所得下位20%(2人以上の全体「世帯」基準)の家計所得が急減したことには、非労働者世帯の所得の減少(-13.8%)の影響が大きかった。パク・ボギョン慶煕大学国際大学院教授(経済学)は「家計所得の階層別格差がなぜ大きく開いたのか、綿密に調べなければならないが、勤労所得の増減だけを見て(また他の最低賃金の影響圏にいる)職を失った失業者や零細自営業者などが含まれていない問題がある」と話した。

 ウ・ソッチン明智大学教授(経済学)は「勤労所得最下位階層は、高齢者などもおり、事実上最低賃金政策の直接的影響圏にいる人々ではないのに、彼らの所得増加が低迷した原因をしっかり把握しなければならない」と話した。さらにウ教授は「今年の最低賃金引き上げの影響を受けたと推定される月所得157万ウォン水準のグループを「最低賃金処理群」とし、昨年基準157万ウォンのグループを「統制群」として比較すると、最低賃金処理群の所得増加率が9.41%で、統制群(7.56%)に比べて1.85%ポイント高かった。最低賃金の引き上げ率が16.4%だったことを考慮すると、処理群の賃金引き上げ率が低く、最低賃金の影響が大きいと見ることはできない」と指摘した。

チョン・ウンジュ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/847510.html韓国語原文入力:2018-06-03 21:57
訳M.C

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