本文に移動

労働者に不利な最低賃金法が国会通過…対立深まる労政

登録:2018-05-29 09:08 修正:2018-05-29 09:30
国会、労働界が反発する改正案を強行 
食費・交通費など算入範囲に含める 
韓国労総「違憲審判提請を申立て」 
 
賃金というより福祉性格の食費まで含み 
最低賃金委の審議は空転を予告
民主労総の組合員らが28日午後、国会近くで「最低賃金算入範囲改悪阻止、首都圏全面スト大会」を開き、国会で行進を開始すると、警察が立ち塞がり対峙している=キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

 毎月1回以上支給される定期ボーナスと食事代・交通費・宿泊費など福利厚生費を最低賃金に新たに算入する内容の最低賃金法改正案が28日午後、国会本会議を通過した。これに対して労働界は全ての社会的対話の拒否を宣言するなど強く反発しており、労政関係が相当期間凍りつくものとみられる。

 この日、国会は本会議を開いて、最低賃金法改正案を賛成160、反対24、棄権14票で可決した。これによって、来年1月からは毎年最低賃金の25%(今年基準で月39万3千ウォン(約4万円))を超過する定期ボーナスと最低賃金の7%(月11万ウォン(約1万1千円))を超えた福利厚生費まで最低賃金の算入範囲に含まれる。定期ボーナスと福利厚生費は来年から5年間、段階的に最低賃金に算入され、2024年には全体が最低賃金に入る。

 最低賃金法改正案の処理を主導した与党側では、算入範囲の拡大が不可欠な処置だったという事を強調した。今年の最低賃金を大幅に上げた後、絶えず人件費負担を訴えていた財界の不満を和らげるためには、最低賃金の範囲でも広げなければならなかったという意味だ。国会環境労働委員会に属する共に民主党の議員は、今回の改正案と関連して「年俸が4000万~5000万ウォン(約408万~510万円)なのにもかかわらず、複雑な賃金体系のために基本給が157万ウォン(約16万円)未満の労働者の賃金を上げなければならない中小企業・自営業者の困難さを反映したということを知ってもらいたい」と話した。

 一方、労働界は最低賃金への算入範囲の拡大を「改悪」と規定し、全面ストライキと社会的対話拒否などで対抗した。民主労総はこの日、国会前で5千人余りが参加する首都圏大会など全国14都市で同時多発全面ストライキ大会を開き、「最低賃金改悪議論を中断せよ」と反発した。韓国労総は最低賃金委員会を脱退し、今回の改正案について違憲法律審判提請の申立てをすると明らかにした。

民主労総、14都市で全面ストライキ大会 
第一歩踏み出した社会的対話も支障避けられず 
最低賃金率の大幅引き上げの声は高まる模様 
 
「就業規則不利益変更」毀損で、原則を巡る議論 
1カ月以上の周期で支給する賃金 
労組の過半数の同意なしでも変更可能に 
「無労組企業の労働者らの生存が脅かされる」

 労働界がこのように強く反発する最大の理由は、福利厚生費の最低賃金への算入のためだ。賃金というよりは使用者が提供する「福祉の恩恵」に近い食費と交通費、宿泊費などの福利厚生費まで最低賃金に入れるのは不合理だということだ。

 特に労働界は、与野党が今回の最低賃金の算入範囲の拡大に対し「低賃金労働者を保護するための処置」のように主張するが、宿泊費などが“最低賃金の一部”になったのは、今後の外国人労働者など、劣悪な状況に置かれた労働者に大きな被害として返ってくると指摘する。二大労総は今回の改正案と関連して「食費・交通費など生活保障性格の手当てまで最低賃金に算入するようにし、(与野党が)最低限の生活安定の保障という最低賃金制度の基本趣旨まで毀損した」と主張した。

イ・ジョンミ正義党代表(左)が28日午後、国会本会議で「最低賃金削減反対」のプラカードをコンピューター画面の裏に貼り付けている=カン・チャングァン記者//ハンギョレ新聞社

 また、他の問題は「就業規則不利益変更特例条項」だ。改正案は、毎月1回以上支給される定期ボーナスを最低賃金に算入するようにした。さらに、企業が“労働組合の同意なしに”就業規則を変えて、隔月や四半期ごとに支給されるボーナスを月別の定期ボーナスとして分割できるように道を開いた。カン・フンジュン韓国労総代弁人は「就業規則不利益変更の特例条項は、労使が対等に勤労条件を決定するという原則を毀損している。朴槿恵(パク・クネ)政府が作り文在寅(ムン・ジェイン)政府が廃棄した「両大指針」の幽霊が生き返った」と話した。韓国労働研究院のキム・ギソン研究委員も「国家の政策的判断によって不利益変更ではないと見なすということは問題」だとし、「無労組の企業や労組が弱い企業では、被害が深刻になりかねない」と話した。

 今回の算入範囲の拡大が今後の最低賃金の議論に及ぼす影響についても関心が集まっている。与野党の合意で「最低賃金範囲」を広げた分、来年度の最低賃金引き上げの余力を確保したという分析が出ている。算入範囲の拡大で実質の引き上げ率がそれだけカットされる可能性があり、労働界が大幅引き上げを主張する名分が生まれたからだ。韓国労働研究院のオ・ゲテク研究委員は「ハードランディングをソフトランディングに変えたもの」だとし、「最低賃金の議論の過程で財界の譲歩を引き出すための事前の布石という性格がある。最低賃金の審議過程で『財界も誠意を見せよ』と言う根拠になり得る」とした。

 ただ、来年度の最低賃金引き上げ幅と関係なく、今回の最低賃金法の改正をきっかけに労働界と政府の不都合な関係は相当期間続くものとみられる。1カ月後に迫った最低賃金委員会の来年度の最低賃金審議過程はもちろん、いままさに第一歩を踏み出した社会的対話も支障をきたすことが不可避となった。算入範囲の拡大に反発して労働界が社会的対話拒否を宣言し、最低賃金委員会からも辞退することにしたためだ。

 これに対し、与党は最低賃金の算入問題が国会に渡された現状で今回の改正案処理を先送りすることが難しかったため、今後は労働界と対話を通じて溝を埋めていくという雰囲気だ。共に民主党のホン・ヨンピョ院内代表はハンギョレとの通話で「今回の最低賃金法改正案は、最低賃金線上にいる低賃金労働者の所得を高めるという政策目標を明確にしようとしたもの」だとし、「労働界で誤解している部分を理解してもらうよう努める」と話した。

 キム・ヨンジュ雇用労働部長官もこの日午前、国会法制司法委員会で「昨年9月以来、最低賃金委員会が算入範囲に対する結論を出せない上、労使間の利害関係があまりにも違い、これを再び委員会に戻すことはできないという与野党の環境労働委員たちの判断があった」と説明した。

パク・キヨン、イ・ジヘ、ソ・ヨンジ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/846646.html韓国語原文入力:2018-05-28 23:26
訳M.C