北朝鮮が、平昌(ピョンチャン)冬季五輪閉幕式に金英哲(キム・ヨンチョル)労働党中央委員会副委員長など高位級代表団を派遣すると22日通知してきた。金与正(キム・ヨジョン)労働党第1副部長などの開幕式出席に続き、閉幕式にも高位級代表団を送るのは、北朝鮮が平昌五輪で用意された南北関係改善の機会を一回きりのイベントとは考えず、持続させていこうという意志の表現と見られる。
金副委員長は、対南政策を総括する党の統一戦線部長を受け持っている。したがって、韓国政府に対し、南北首脳会談提案の背景および朝米接触の可能性に関して深い話をし、韓国側の説明も十分に聞くことになると見られる。金副委員長が、イバンカ・トランプ米ホワイトハウス先任顧問と閉幕式で遭遇する可能性もある。別途の朝米接触の可能性はさほど高くないものの、イバンカと金英哲が形式的に握手を交わすことだけでも、ペンス副大統領が見せたトランプ行政府の強硬イメージを和らげることができる。
また、北朝鮮代表団には李善権(リ・ソングォン)祖国平和統一委員会委員長らが含まれていて、イバンカに随行する米国務省や中央情報局(CIA)実務陣との間で朝米接触がある可能性も排除しがたい。
朝鮮半島問題は、南北関係改善と朝米対話が連動して作動しなければならない。片方を抜きにして、残りの一方だけが前に進むことは難しい。したがって、朝米は前回不発に終わった接触努力を経験として活かし、新たに始めなければならない。韓国政府もそのために外交的仲裁努力を傾け続けなければならないだろう。
金英哲副委員長は、天安(チョナン)艦襲撃事件を主導した人物として知られているうえに、国際社会の対北朝鮮金融制裁対象なので、一部では彼の訪韓を“対北朝鮮制裁無力化”を狙ったものだと非難している。だが「平昌五輪」に限っては、すでに対北朝鮮制裁の例外適用がなされた。したがって現時点でこれを過度に問題視するのは「朝鮮半島の平和と緊張緩和」という大きな流れを曇らせる過ちだ。実現しなかったとは言え、平昌の開幕式で北朝鮮が米国側に会うことを提案し、米国もこれを受諾したということ自体が、数カ月前には想像すら難しかった状況変化と言える。せっかく芽吹いた南北間、そして朝米間の接触ムードを最大限に生かすために、賢く柔軟に対応するのがいつにもまして求められる時点だ。