平昌(ピョンチャン)冬季五輪開幕式に参加したマイク・ペンス米副大統領と金与正(キム・ヨジョン)北朝鮮労働党第1副部長、金永南(キム・ヨンナム)北朝鮮最高人民会議常任委員長が10日、大統領府で会う予定だったが、北朝鮮側の取り消しで不発になったという。ワシントンポストの20日付(現地時間)報道に対して米国務省は「北朝鮮がこういう機会をつかむことができなくて残念」と、事実上報道内容を確認した。報道によれば、北朝鮮が先に会合を提案し、ペンス副大統領の訪韓2週間前から議論が始まった。しかし、北朝鮮はペンス副大統領の脱北者面談と新たな対北朝鮮制裁宣言に不満を示し、2時間前に会合を取り消したという。
当時の状況を顧みれば、ペンス副大統領が北朝鮮との会合を前に普段以上に強く北朝鮮を刺激した点は、容易に理解し難い。北朝鮮の立場からすれば「このような形なら、いっそ会わない方が良い」という判断もし得る。だが、仮にそうだとしても会合の2時間前に会合を取り消すのは外交的行動ではない。それでなくとも信じにくい北朝鮮に対する不信をさらに高めかねず、会合失敗の責任を北朝鮮に押しつける直接的口実を提供した側面もある。たとえ互いに罵り合うことになっても、朝米がテーブルに向かい合って座るだけでも意味が十分にあっただろうと思われる。平昌五輪のような自然な機会を再び用意することは容易でないが、北朝鮮がもう少し戦略的なアプローチをしたら良かったという物足りなさが大きい。
こうした内容が一歩遅れて米国のマスコミに公開されたのは、韓国での超強硬対応で批判を受けているペンス副大統領側が、接触不発の責任を北朝鮮に押しつけるための“マスコミ利用”の側面がなくはない。成功もしなかった“秘密接触”の過程を、このようにマスコミに公開すれば、北朝鮮は今後米国との接触の試みまで敬遠するかもしれない。トランプ行政府の人々の相当数が“国内政治目的”のために“外交状況”を利用するケースが多い。朝米関係の潜在的不安要素と言える。
とにかく、今回の事例を通じて、米国が対北朝鮮予備接触の可能性を開けておいたという点だけは確認することができる。あとは開始するだけだ。北朝鮮も米国も共にもう少し開かれた心で再び接触に踏み出すことを願う。そのためには特に平昌五輪以後に再開される韓米合同軍事演習の規模や方式を賢く処理する柔軟さが必要だ。また、朝米関係が大きく広がった現状況では、今回の事例のように韓国政府が朝米接触の架け橋の役割をすることが緊要だろう。政府は緻密な戦略と忍耐心をもって、朝米を同じ場に座らせる外交折衝戦に臨み続けなければならない。